第145話 【姉との時間・1】
姉さんは泣き止んだ後、この後は予定があるから食事は明日お昼なら行けると言って部屋から出て行った。
「……色々と驚く内容だったな、ヘレナの過去は大体察していた内容だったけど、まさかあんな幼少期から家との対立を決めていたなんてな」
その後、話の内容が濃すぎて頭を使い過ぎた俺は頭痛がしたので横になる事にした。
それから数時間後、夕食の時間になり食堂に行くと、出掛けていたクロエ達が戻って来ていた。
「クロエ達、戻って来てたんだな」
「うん、本当はジン君に帰ったよ言いに行ったんだけど、丁度ジン君寝てたみたいだから」
「ああ、ちょっと色々あって寝てたんだよ。それと、皆の装備受け取って来たから、後で渡すよ」
そう俺は言って、皆と同じ席に座り夕食を食べた。
それから、皆と部屋に戻って来て装備を渡して、特に話す事も無いのでそのまま直ぐに解散となり、俺はシャワーを浴びて明日は予定もあるので早くに寝る事にした。
「……ジン、朝から出掛けてたけどそんな気合入れた恰好してどうしたんだ?」
待ち合わせは宿の前だから、下の階で姉さんを待っていると、リカルドから不思議そうな顔で見られながらそう声を掛けられた。
「ちょっとな、用事で人と会うから綺麗な格好してるだけだ」
「もしかして、昨日来た女性ってジンの彼女だったりするのか?」
「何で、そうなるんだよ。別にそういう関係じゃない」
一日考えた結果、血は繋がってないけど姉と弟だと改めて思う事にした。
まあ、昨日の時点で大分、その気持ちは固まってはいた。
「でも、ジンがそんなおめかししてる姿なんて見た事が無いぞ? やっぱり、彼女だろ?」
「違うっての、ったく……リカルド。ここだけの話だが、昨日来たのは俺の姉だ」
色々と誤解してるリカルドに俺は、姉さんとの関係を話した。
「あっ、そうだったのか……すまん。ちょっと調子に乗った。ジンがそんな恰好して、人と待ち合わせてるって聞いて茶化したい気持ちが少し出てた」
「良いよ。そこまで気にして無いから」
そうリカルドに言った後、宿に近づく人の気配がして入口の方を見ると姉さんが居た。
宿まで走って来たのか、姉さんは少しだけ息が荒い様子だった。
姉さんの服装は昨日の様な姿を隠す為のローブではなく、俺と同じで少し着飾った感じの服装だった。
「遅くなって、ごめんね。ジン、ちょっと色々と準備に時間掛かっちゃったの」
「大丈夫だよ。行こうか、姉さん」
「うん」
その後、俺は姉さんと一緒に宿を出て、王都の街中を歩いて目的の食堂へと向かった。
その向かう道中、姉さんは王都の街並みを見て「2年振りだから色々変わってる」と言った。
「2年振りって、そんなに長い間旅をしてたの?」
「うん、ラージニア家の被害者は色んな所に行ってたから、王都に戻る事無く転々と旅してたのよ」
「へ~、俺もかなり色んな所を旅してたから、姉さんの旅の話も聞かせてよ。俺の旅の話もするから」
「良いわよ。まあ、でも面白い話はあまりないわよ? 私の旅は謝罪の為の旅だったから」
そう姉さんは言うと、少しだけ気分が落ち込んだ。
そんな姉さんの手を俺は握ると、姉さんは驚いた顔をした。
「姉さん、今日は暗い話は無しだよ。折角のはじめての姉弟の時間なんだから、楽しもうよ」
「ッ! う、うん。今日は色んな事を忘れて、楽しむよ」
姉さんは俺の言葉にハッとして、笑顔を浮かべてそう言った。
それから俺は姉さんに王都を案内しながら、予約した食堂へと到着した。
「って、何でこっちにロブが居るんだ? いつもは屋台で客の呼び込みしてるだろ?」
「いや~、ジンが食べに来るって聞いたから、今日はこっちに出たいって頼んだんだよ。それにしても、ジン。お前、こんな美人な彼女が居たんだな、知らなかったぞ!」
ウリウリと、肘で俺をつついてくるロブに俺は溜息を吐いた。
なんでこうもオッサンは、直ぐに色恋沙汰にしたがるんだ……。
「じ、ジンと私は別に付き合ってはないです!」
俺の彼女に間違われた姉さんは、顔を赤くしてそう否定した。
それから俺はロブの頭を叩き、誤解されたままだと面倒なので姉さんの関係を話して予約した個室に案内してもらった。
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