第140話 【ルバドと迷宮へ・2】
その後も順調に進み、予定時間よりも早く中層へと俺達は到着した。
ここからはいつもの陣形に戻り、ルバドは後衛へと入り、いつでも採取が出来る陣形にした。
そうして目的地である採取場所に到着した俺達は、ルバドの採取が終わるまで魔物の対処を行い、採取が終わるのを待った。
「ルバドさん、どうですか?」
「んっ、もう少しで採れそうじゃ!」
今回、ルバドが欲しがっていた物はこのダンジョンで採れる水晶。
採掘系の中では少し難しい、水晶の採取でルバドは苦戦しているようだ。
俺が採ろうか? と聞いたが、自分で採るために俺達に頼んだと言って、かれこれ数十分作業を続けている。
「そう言えば、レンは直ぐに戻って来たけど、何を取りに行ってたんだ?」
「んっ? ああ、この中層には湖があってそこの水は回復薬の素材としていいって噂を聞いて、採ってみたいってずっと思ってたんだよ」
「えっ? そんなのがあったのか? なら、俺のスキルにもっと入れておこうか? 直ぐに来れる場所じゃないし」
「あ~……そうだな。試してみて、良かったら依頼して取らせようと思ったけど、ジンの収納スキルはほぼ無限に入るからな」
俺の持つ【異空間ボックス】は、その名の通り異空間に収納できるスキル。
このスキルはこの転生してから一番使っているスキルだが、未だに限界を知らない。
容量とかどのくらいあるんだろうと試した事があって、土砂を何千キロと楽々と収納出来てしまった。
ゲームでは制限があったが、この世界ではその制限がないようだった。
以前、収納した物が先の方に入れたのが消えてるんじゃないか? と考えたが、頭の中で【異空間ボックス】の事を考えると、入ってる全ての物を確認出来た。
それ以来、ああこのスキルはほぼ無限に何でも入れられるんだなと考えるようにした。
「……それにしても、ルバドさん苦戦してるみたいだな」
「ああ、あの筋力を抑えながらしてるからだろうな……後は多分、そもそも採掘に慣れてないんだと思う」
現にルバドは、少しピッケルの動作が不安定だった。
「取り敢えず、俺達はルバドさんの採掘が終わるまで守り切るぞ、その後はレンが取りに行ったっていう水を採取だな」
「了解」
その後、30分程が経ちようやくルバドは目的の水晶を掘り出し、疲れた様子で戻って来た。
「ふ~、初めて採掘したから中々苦戦したの~」
「……はじめてって、今までした事が無かったんですか?」
「うむ、鉱石は頼んだ方が良い物が手に入るからの、ただ今回のだけは自分で手に入れたかったんじゃ」
そうルバドは言いながら、手に入れた水晶を大切にバッグに入れた。
「そんな今までは頼んで手に入れてたのに態々自分で採りに来たいって、なにか特別な思いで採りに来たのか?」
「うむ……もう直ぐ、儂と妻の結婚40周年記念日なんじゃよ。記念日には毎回特別な物を用意してるんじゃ、それで今回はこの水晶で作った物をプレゼントしようと計画していたんじゃよ」
そう嬉しそうに話すルバドを見て、クロエ達は笑顔を浮かべ、今回の依頼を受けて良かったといった。
その後、採取中に予定していた通り、ダンジョンの中の湖の水を大量に【異空間ボックス】に入れて、俺達はダンジョンを出る事にした。
行きは時間がかかったが帰りは、安全地帯の転移で10分もかからず戻って来た。
そして帰りも俺が馬車を動かし、陽が完全に沈む少し前に俺達は王都へと帰還した
「ジン、クロエ、レイ、レン。今日は本当に助かった。それに楽しかったぞ」
「俺達も楽しかったですよ。またいつか、一緒にダンジョン探索や依頼を受けましょう」
「うむ、またの」
ルバドはそう言って、馬車から降りて自宅へと歩いて行った。
それから俺達も宿に戻り、夕食を食べてシャワーを浴び、久しぶりに体を動かして疲れていた俺は直ぐに眠りについた。
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