第118話 【旅へ向けて・2】


 そうして、次は俺の装備の説明に入った。

 装備の見た目的に革製の装備だが、鑑定して直ぐにその革が竜種の素材と言う事が分かった。


「ジンの方は、もう全て竜種の素材で作ってるよ。魔法も使うけど、基本前衛って言ってたから、なら防御力特化にしておこうと思ってね。竜種の素材は少し重たいから、試しに着てみてどんな物か試してみな」


「分かりました」


 リーザからそう言われ、俺は更衣室で装備を着て少し歩いたりジャンプしてみたりした。

 うん、確かに今まで着ていた装備よりか重たい気がするけど、動けないという程では無いな。


「重たいけど、動きにくいって程ではないな」


「そうそれなら、良かったよ。それで説明の続きだが、ジンの装備に使ってる竜の種族名は〝アース・ドラゴン〟と言って土竜と呼ばれてる奴等で特に防御に特化した竜の種族だ」


「アース・ドラゴンって言えば、砂漠地帯や偶に山岳地帯に住んでる上位竜の一匹だな……よく、そんな奴の素材が手に入ったな」


「前もってジンから装備を作って欲しいって言われて、沢山準備期間があったからね。この位なら、あたしの伝手を使えば揃う事は可能だよ」


 流石、ガフカの工房だな……。

 普通、王都の他の鍛冶屋だとこんな装備を作る事は不可能だ。

 マジで〝特大サイズの金塊〟を見つけて、リーザとの縁が出来たのは早々に王都を離れず、準備期間として残った成果の一つだ。

 その後、装備は一旦、【異空間ボックス】に入れて俺達は店を出た。

 店を出た俺達はその足で、とある所へと向かった。

 向かった場所は馴染みの冒険者が泊ってる宿で、その宿の食堂に会いに来た冒険者が居た。


「あっ、クロエちゃんにジン君。久しぶり~」


「久しぶり~、レイちゃん!」


「久しぶり、レイ。レンは今日はいないのか?」


「レン君なら、まだ寝てるよ。昨日夜遅くまで、勉強してたみたいで寝不足だったから寝かせてるの」


 レイとレン、この二人は双子の兄妹でクロエの友人達だ。

 以前、俺がクロエと知り合った時に紹介すると言われ、知り合った仲で歳は俺の二つ上で唯一の同世代冒険者の知り合い。

 兄のレンは物覚えが良く、以前俺が手に入れた薬学についての本を渡したら直ぐに覚え、今では薬学についてならその辺の薬師よりも詳しい。

 そして妹のレイは元気娘で、特殊なスキルを持っていて大の大人でも負けてしまう程の怪力の持ち主だ。


「レンの奴、偶に頑張り過ぎるからな……最近も新しい薬が出来そうって、俺の所に見せに来てたよ。あいつ偶に変な所あるよな」


「そうなの? 前までレン君って落ち着いたイメージがあったけど……」


「レン君、一つの事に集中すると物凄く変になるよ。ジン君達と会う前、魔物の生態について調べてた時があったんだけど、もう依頼に行く時間なのにずっと本読んでて大変だったんだよ」


 あの時は気絶させて依頼の場所まで連れて行ってたと、レイは溜息を吐きながらそう言った。

 それから俺達はレイに、もう直ぐ旅に出る事を伝えた。


「あっ、そっかもう大分暖かくなってきたもんね……ジン君達と離れるの、なんだか寂しいな」


「俺も唯一の同世代の冒険者だからな、寂しさはあるけど、それが冒険者だしな」


「出会いと別れが沢山あるのも冒険者だからね~」


 その場の雰囲気が少し落ち込むと、誰かが食堂に来ると「あれ、ジンとクロエ。どうしたんだ?」と俺達の名を呼ぶ声がして振り返ると、レンが居た。


「あれ、レン。お前、寝てたんじゃないのか?」


「うん、仮眠してスッキリしたから起きて来た。それで、なんか雰囲気が暗いけど、なんかあったのか?」


「ああ、旅に出る話をしにきたんだよ。もう直ぐ、出発するからな」


 そう俺が言うと、レンが「えっ、旅に出る話って本気だったのか!?」と驚いた顔をして言った。


「いや、前から暖かくなったら行くって言ってただろ?」


「そ、そうだけど中々いかないから、その話は無くなったのかと……え~、マジか。それは寂しくなるな」


 レンもまた俺達か旅に出ると聞いて、シュンッと気分が落ちてしまった。

 正直、この二人を仲間にするかどうするか、クロエと何度か話したことがある。

 二人の事はこの数ヵ月関わって、信頼もある程度あるし、実力も俺は二人の事を認めている。

 それなのに何故、二人を仲間にしないのか? それは単純に誘うタイミングを失っていた。

 レイ達と知り合った当時、俺とクロエは長期の護衛依頼を受けていて、二人と一緒に依頼を行くタイミングが無かった。

 そして護衛任務が終わって戻ってくると、今度は二人が少し長い依頼をしていた為、お互いに仲間になるタイミングが無くなってしまっていた。

 そしてここが最後のチャンスだよな……。


「……そこまで、寂しいって言うんならレイ達も一緒に旅に来るか?」


「えっ!? ……仲間って、ジン君達って二人で仲間を増やさないんじゃないの? そう思ってたから、私達も仲間になりたいけど、言わなかったんだけど……」


「正直、そこまで仲間を欲しいと強く思ってる訳じゃない。俺とクロエでも、ある程度の依頼はこなせるし、なんなら二人の方が取り分も多いから、仲間を増やすつもりは殆ど無かった。ただレイ達を見ていて、この二人が居ればもっと他の事も出来るなって考える時があったんだ」


「レイちゃんとレン君、二人共私達が持ってない長所を持ってるから仲間になってくれると嬉しいなって、ずっと思ってたんだ。ただ誘うタイミングが無くて、ずっと言えなかったの……」


 そう俺達が言うと、レイは涙を流し「なる! 仲間になる!」と叫んだ。

 そしてレンも、レイ同様に「俺も仲間になりたい」と言い、俺達は一気に二人の仲間が増えた。

 旅に行く、この一ヵ月前というタイミングで仲間が増えるという事は、一から連携を考え直さないといけないが、それはまた後で考えればいいだろう。

 取り敢えず、今はレイ達と仲間になれた事を喜ぼう。

 その後、一部始終を見ていた食堂のおばちゃん達から「よかったね~」と泣かれなが祝され、食堂に居た他の冒険者からも祝され少し恥ずかしい気持ちになった。

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