第114話 【やり残し・1】


 ギルドを出た俺達はリーザに店へと着き、扉を開けて中に入った。

 そして店頭にリーザの姿が無かったから、名前を呼ぶと奥から作業服姿のリーザが出て来た。


「今回はクロエも一緒でどうした?」


「ちょっと、リーザに見てもらいたい物があってな、今少し時間あるか?」


「ん? ああ、丁度今さっき作業が一段落した所だから良いけど、なんだい? もしかして、また〝特大サイズの金塊〟でも見つけた何て言わないよね?」


 そんなまさかなといった風に言うリーザに、俺は無言でカウンターの上に〝特大サイズの金塊〟を置いた。

 それを見たリーザは無言でその金塊を見つめると、天井を見上げ自分の頬を何度か叩き、もう一度カウンターの上に置いてある金塊を見た。


「あたしの目が悪くなったわけじゃないよね?」


「本物の〝特大サイズの金塊〟だ。俺達も出て来て、驚いたよ」


「金塊ゴーレム自体珍しいのに、こんなに大きいサイズをまた見る事になって自分達の運が怖くなりました……」


 俺達の言葉を聞いたリーザは溜息を吐き、ドスッと椅子に座って金塊を見つめた。


「何年も探していた物がこうも短期間で二個も見つかると、なんだか変な気分になるね……」


「狙ってやったわけじゃないぞ? 偶々だからな」


「分かってるよ。これを狙ってやるなんて、それこそダンジョンを作ってる神くらいしか出来ないよ……」


 リーザはそう言うと再び溜息を吐き、俺達の方を見て「で、これは売ってくれるのか?」と聞いて来た。

 その問いに対して、リーザが欲しいなら売るし、要らないなら保管すると伝えた。

 それを聞いたリーザは暫く考え込むと、金塊を買い取ると言い俺は金塊をリーザに渡した。


「それで買い取ったという事は、二個目の特大サイズの金塊は何か使う予定でもあるのか?」


「まだ構想段階だけど、二つ目が見つかったらやってみたい事があったんだ。ジン達が旅に行った後、ゆっくりと手を付けるつもりだよ」


「そうか、なら旅から帰って来た時が楽しみだな」


 そう話した後、俺達は金塊を売りに来ただけなので店を出て、そこで解散した。

 それから俺は宿に戻り、部屋で魔力の訓練をしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「ルークさんでしたか、どうしました?」


「いや、ジンが帰って来たって聞いてよ。ちょっと、一緒に訓練しないか聞きに来たんだ」


「訓練ですか……分かりました。訓練ご一緒させてください」


 よしっ! ルークさんから訓練を誘ってもらったぞ!

 自分から訓練を付けてくれと頼む事も出来たが、ルークさんはこれまで多くの者に教えを請われ、それを全て断っている。

 自分が気に入った者や認めた相手じゃないと、訓練を一緒にしないというルークさんの性格を知っていた俺は誘われるのを待っていた。


「おっ、ジンが来たって事は振られなかったんだな、良かったなルーク」


 ルークさんと共に裏庭に出てくると、ドルクさんがそうルークさんを茶化した。

 そのドルクさんの言葉にルークさんは「なんだと~」と笑いながら、ルークさん達のじゃれ合いが始まった。


「またはじまったのね……折角、ジンが一緒に訓練をするって言うのに」


「仕方ないよ二人共、最近レベルアップして今までより動けるのが楽しいんだと思う」


 確か3年後の世界でのルークさん達のレベルは、50台だった筈だけど3年前のこの世界ではいくつくらいなんだろうな……。

 気になるけど、流石にレベルを聞くのは失礼だし我慢だな。

 その後、ルークさん達の戦いは置いて、俺はエリスさん達と訓練を始めた。


「ジン君って剣と魔法、どっちが得意なの? 見た感じ、体は相当鍛えているようだから剣の方が得意なのかしら?」


「一応両方学んではいますが、自分が好きなのは剣ですね。魔法は元々才能があって、最初からなんでも出来たんですが、剣の方は才能はあっても中々自分の物には出来なかったんです。それで少しずつ剣にのめり込んで、最近は魔法より剣術の方をよく鍛えています」


「へ~、両方の才能があるのね。羨ましいわ、その一度見せて貰ってもいいかしら?」


 そうエリスさんに言われた俺は、まず最初に魔法の腕を見せる事にした。

 流石に宿屋の裏庭で大規模な魔法を使うのは迷惑になるだろうし、小さな魔法で魔法の腕を見せるのが良いだろう。

 そう考えた俺は訓練をちゃんと積まないと出来ない魔法の技、属性を合わせた〝複合魔法〟をエリスさん達に見せた。

 これなら威力や派手さがなくても、俺がどれだけの魔法の力があると知れる。


「凄いわね。ここまで完璧な複合魔法の使い手、中々いないわ。ジン君、凄い魔法の力ね」


「褒めてくれて、ありがとうございます。ですが俺の力はこれだけじゃないですよ」


 そう言って、俺は刀を取り出して【刀術】を披露する事にした。

 俺の太刀筋にじゃれ合っていたルークさん達も手を止めて、俺の刀術をジッと見ていた。

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