第105話 【訓練の成果・1】
アンジュとユリウスの戦いを見てから、俺は魔法の訓練に集中していた所、剣術の訓練も時間をちゃんと取る様にした。
「ジン、今日も剣の訓練かの~?」
「そうですね。今日も剣の訓練をします。というか、魔法の訓練は明日とこの間、決めたじゃないですか」
「少し前まではこの曜日もしていたじゃろ~」
「だから、それは言ったじゃないですか。剣の訓練を疎かにしない為に、剣術の時間を以前と同じに戻しますって」
レーヴィンの魔法訓練を受ける前と同じ時間、剣の訓練をするようにした俺は魔法の訓練時間を削る事にした。
それに対してレーヴィンはいつまでも、時間は削らないで欲しいと言葉には言わず、そういう風に聞き取れる言葉で付きまとってきていた。
「……レーヴィン様、これ以上訓練の邪魔をするのでしたら、残り期間の魔法の訓練はリオンさんのしか受けないようにしますよ?」
「それは良い提案ですジン。さあ、もっと邪魔して訓練の権利を剥奪されてください」
転移魔法で突如現れたリオンは、俺の言葉に賛同してそう言った。
そしてリオンが煽ると、レーヴィンは「うぐっ」と悔しそうな顔をして諦めて何処かに行った。
「リオんさん、もしかして俺に監視かなにかつけてますか?」
「ただ偶々、廊下を歩いていたら父上がジンの邪魔をしていたから寄っただけだよ。今は仕事中だよ」
そう言ってリオンは、サッと転移魔法でその場から消えた。
……くう! 転移魔法やっぱり良いな!
【空間魔法】の才能は俺もあるから、訓練さえすれば手に入れる事は可能だけど、その訓練が難しいんだよな……。
「収納スキルがあるから、それで何とか感覚を掴んでるけど一向に習得出来そうな雰囲気じゃないしな……」
希少属性は他の属性とは違い、才能と努力によって得られる魔法。
どちらかが無かったら手に入れる事は出来ない魔法、と設定資料に書かれていた。
転移を簡単に出来るようになるにも、あのリオンでさえ何年もかかったと書かれていたし、手に入れるのに運も必要なんだろうな……。
「まあ、いい取り敢えず今俺が頑張る事は剣だ……」
ブンブンと頭を振り、頭の中を剣の事しか考えないようにして俺は訓練を始めた。
片手剣から刀に変えて、俺の剣術はそれまで迷走していたのが嘘のように成長している。
やはり理想としているキャラ達が、刀を使ってるからそっちの方が俺も合ったんだろう。
「ジン君、今良いかな?」
「クロエか、どうした?」
訓練を初めて三時間程、集中してやっていると俺に近づく気配がして訓練を止めるとクロエから声をかけられた。
クロエの様子から、なにか大事な話だろうと思った俺はクロエの方へ体を向けた。
「ジン君にお願いがあるの」
「お願い? クロエの頼みなら、出来る事なら叶えるぞ」
「その、私と戦ってほしいの」
クロエは真剣な表情をしてそう言った。
「クロエと、戦う?」
「うん、どれくらい成長したのか確認したいの、それでジン君なら前の私もよく知ってるから相手になって欲しいと思って」
「成程、分かったよ。それでいつ戦うんだ?」
「今度のお休みの日にどうかな? 予定があるなら、別の日でも良いけど」
今度の休みの日か、その日はまだ予定は入れてないから大丈夫だな。
頭の中で予定を思い出しながら、俺はクロエに「その日で大丈夫だよ」と言った。
それからクロエは「ありがとうジン君」と言って、嬉しそうな顔をして去って行った。
そしてクロエと入れ違うようにして、ユリウスが俺の所にやって来た。
「先程、クロエさんとすれ違いましたけどなんだか嬉しそうな顔をしてましたね。なにかあったんですか?」
「ああ、今度の休みの日にクロエと戦う事にしたんですよ。ほらっ、俺達が訓練をはじめて大分たつじゃないですか? クロエの力を良く知ってる俺が、対戦相手になって欲しいってお願いされて了承したんです」
「成程、ジンさんとクロエさんが戦うんですか……それは面白そうですね。でしたら、審判役は私にやらせてくれませんか?」
「やってくれるなら助かりますけど、仕事の方は大丈夫なんですか?」
アンジュと会う為、冒険者としても動くようになったユリウスは時間はかなりない筈だろう。
それなのに俺達の試合の審判なんてしてる暇、本当にあるのか?
「大丈夫ですよ。それにジンさん達がどれだけ強くなったのか、私も気になりますから」
「ユリウスさんが大丈夫ならいいですけど、一応姫様に確認をしてから決めてもいいですか? 姫様が無理と言ったら、他の人に頼みますから」
そう言って丁度、陽も沈みかけて来たので訓練は終わりにして、汗を流して姫様に確認を取りに行った。
「良いわよ。その日、私も暇だからジンさん達の試合見させてもらうわね」
ユリウスの予定を確認すると、姫様は自分も見ると言って何時頃に試合をするのか聞いて来た。
流石にそこまでちゃんとまだ決めてなかった俺は一度姫様の部屋から出て、クロエを連れて戻って来て、模擬戦闘の予定をちゃんと決める事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます