第83話 【新たな装備・2】


 その後、俺は汗を流してユリウスの所へと向かった。

 この数日の間、ユリウスは目を覚ました。

 しかし、未だ体調が戻っていない為、療養を続けている。


「ユリウスさん、体調どうですか?」


「うん、大分良くなって来たよ。手の感覚のようやく戻って来て、一人で食事も出来るようになったよ」


 ユリウスは手を握って開いてを繰り返し、笑顔を浮かべながらそう言った。

 目を覚ましたユリウスだったが、手も思うように動かせない程、体に負担が溜まっていた。

 一時は剣聖としての力を失ったのかって城で騒がれていたが、医師の診断によれば数日もすれば徐々に回復すると言われ、騒ぎは落ち着いた。

 医師の診断通り徐々に回復してるんだな、それは良かった。


「それは良い傾向ですね。……でも、良いんですか? あの薬だったら、一瞬で体調が戻りますよ」


「この体は私の馬鹿な行動によって起こしてしまった事ですから、そんなのに貴重な薬は使えませんよ。それに、ずっとこのままという訳でもないですからね。体が動かせないのは罰だと思い、真剣に向き合うつもりです」


「……そうですか。もし体調が戻り切らなかった時の事を考えて、薬は残しておきますからいつでも言ってくださいね」


 俺がそう言うと、ユリウスは「ありがとうございます」とお礼を口にした。

 その後、俺はユリウスの容態も良い方向に向かってる事を確認出来たので部屋を出た。

 ユリウスは今回自分がしでかした事の大きさに後になって理解して、今は随分と反省している。

 姫様にも動かない体を無理に動かそうとして謝罪をしたり、如何に自分が愚かな行動をしたのか悔いていた。


「ジン君、ユリウスさんの容態どうだった?」


 部屋を出て廊下を歩いていると、前からクロエが来てそう聞かれた。


「大分回復して来てたよ。鑑定で確認した感じ、手足の感覚も戻って来てるみたいだから、数日もすれば普通に体を動かす事は出来るようになるんじゃないかな」


「良かった~、姫様も心配してて最近は元気ないもんね」


「まあな……というか、俺としては早くミスリルを受け取って欲しいんだけどな」


 目を覚ましたユリウスに俺は、ユリウスが見つけたミスリルは回収して保管してると伝えている。

 だから早く受け取って欲しいと言ったのだが、ユリウスは自分の罪を償うまでは預かっていて欲しいと頼まれた。

 別に預かる分には良いのだが、期間が分からないからもし護衛の仕事が終わっても預かる事になったら、遠くに移動は出来ないだろう。


「あっ、そうそう。さっきメイドさんに貰ったんだけど、私達の武器が出来たってリーザさんから手紙が届いてたよ」


 クロエは思いだしたかのようにそう言うと、手紙を取り出しそれを受け取った俺は中を確認した。

 そこには武器が出来たから取りに来いと、短い文が書かれていた。


「おお、武器が出来たのか。明日は丁度休みだし、取りに行くか」


「うん、そうだね。早く新しい武器使いたいもん」


 それから俺達はそれぞれの部屋に入り、寝る準備をしてベッドに横になった。

 そして翌日、朝早くから城を出た俺達は、リーザに店へとやって来た。


「リーザ、武器を受け取りに来た」


「ジン達だね。そこで待ってな、今持っていく」


 奥の作業場に居たリーザは俺の声にそう反応すると、少しして3本の剣を持ってやってきた。

 そしてその中の一つをカウンターの上に置いて「これがクロエの剣」と言って、クロエに渡した。


「わ~、凄い綺麗です。ありがとうございます!」


 クロエは剣を渡されると、嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振りながらそうお礼を言った。

 そして次にリーザは残った二つの剣を置いて、「こっちがジンの剣」と渡してくれた。


「注文通り、一つは刀という剣よ。どう握った感じは?」


「……ああ、凄く良いよ。ありがとう」


 片手剣は置いたまま、俺は刀を手に取りそうお礼を口にした。

 普通の片手剣より軽く、握りやすい。

 最近、段々と良くなってきている俺の剣術に凄く合いそうだなと俺は感じた。

 それにもう一つの片手剣の方も作りが凄く良く、流石リーザが作った剣だなと俺は感心した。


「リーザ、本当にありがとな凄く良い武器を作ってくれて」


「ありがとうございます。リーザさん」


「あたしも気に入った相手の武器を作れてよかったよ。また何か必要な物があったら来な」


 そうリーザから言われた俺達は、「はい!」と返事をして店を出た。

 その後、俺達は新しい武器を早く試したいという思い、王都の外に出て魔物を探す事にした。

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