第78話 【消えた剣聖・3】


 ゴーレムは先程の場所から、移動しておらず佇んでいた。

 よし、俺達にはまだ気づいていないな。


「クロエ、ここから核の場所は分かるか?」


「……もう少し近くに行かないと分かんない。普通のゴーレムより、ゴツゴツしてて分かりにくいから」


「だよな……って事は作戦通りに行くしかないか」


 そう言って俺はまず自身に【身体強化】を施し、息を整えてゴーレムの所へと向かって走った。

 口の中には飴、腕にはミスリルの腕輪をしてる今の状態なら近くから魔法を撃てば、相当な大打撃になる。

 そう考えた俺は、ゴーレムの背後に回り魔法を放った。


「ちッ、硬すぎだろ……」


 最大火力ではないが、それでも普通の魔物なら消し去る程の威力の魔法。

 その魔法をゴーレムは頑丈な体で受け止め、少し鉱石が削れただけだった。


「ゴゴゴゴ!」


「ガハッ」


 ゴーレムは俺の存在に気付くと、魔力を高め大きな手で攻撃をしてきた。

 普通のゴーレムより早いその動きに逃げれず、剣で受け止めるを選択した俺はゴーレムの力によって壁まで吹き飛ばされてしまった。


「ジン君、大丈夫!?」


「大丈夫だ! クロエは、クロエの仕事に集中してくれ!」


 俺が吹き飛ばされクロエは、心配して駆け寄ろうとした。

 そんなクロエに俺はそう叫び、再びゴーレムに向かって攻撃を仕掛けた。

 この戦い油断したら負ける。

 そう俺は思い、更に集中してゴーレムとの戦闘を続けた。


「ジン君、見つけたよ! 後ろの首から斜め下の所に核があるよ!」


 数分、戦いに耐えた俺にクロエのその言葉が聞こえた。

 首元から斜め下……あった! あそこか! 流石、クロエだ戦いながら俺も探していたが、全く気付けなかった。


「場所さえ分かれば、こっちのもんだ! 貫け!」


 核の位置を確認した俺は魔法を放った。

 ゴーレムは自分の核が狙われていると、気付き守ろうとした。

 しかし、守る前に俺の魔法が核に当たり、〝捨てられた鉱石のゴーレム〟の討伐に成功した。


「ふぅ~、今回の戦いはハラハラしたな……」


「ジン君が吹き飛ばされた時、本当に驚いたよ……本当に大丈夫なの?」


「ああ、壁に激突する瞬間、背中をより硬くして衝撃に耐えたから、怪我とかはしてないよ。たださっきの戦いで剣がな……」


 そう言って俺は、クロエに折れた剣を見せた。

 冒険者を始めた時からずっと使っていて、結構愛着があったんだけどな……。

 物には寿命があるのは分かってるし、剣や防具は大抵いつか壊れる日が来る事も分かってる。

 けど、分かっていても、こうして別れてしまう事になると少し切なく感じる。


「帰ったらリーザに新しい剣でも頼もうかな……」


 そう落ち込む気持ちを騙す様に、俺はリーザの店でどんな剣を買おうかなと思い浮かべながら捜索を再開した。

 流石に丸腰だとキツイと思った俺は、城でもう使わないからと貰った剣を装備して先へと進んだ。


「〝捨てられた鉱石のゴーレム〟があいつ一体だけとは思えないから、警戒して進もう。さっきは偶然気付かれる前に距離をとれたけど、同じように距離をとれるとは限らないからな」


「確かにさっきは偶然距離とれたから良かったけど、同じように距離をとれるとは限らないもんね……うん、もっと集中して回りを見ながら進む様にするね」


「ああ、俺よりクロエのが適任だから任せるよ。何か変な魔物が居たら、直ぐに教えてくれ」


 そう話し合いをしながら先へと進む俺達、それから何体か〝捨てられた鉱石のゴーレム〟と戦い。

 初戦程苦戦はせず、確実に倒して先へと進んで行った。

 そうしてやってきたのは、ダンジョンの最奥地から一つ上の29層。

 ここに居ないとなると、ボス部屋か20層より上の所に居ると言うことになるな……。


「ジン君! 向こうの方に、ユリウスさんの魔力を感じるよ!」


「なに、本当か!?」


 ユリウスさんが居なかったらと考えていた俺に、クロエのそんな言葉が耳に入り、俺達は急いでユリウスさんの魔力がする方へと向かった。

 数分後、ユリウスさんの魔力を感じ取った場所にくると、そこには鉱石の山の上で倒れているユリウスさんの姿がそこにはあった。


「ユリウスさん!」


「ユリウスさん、大丈夫ですか!?」


 倒れているユリウスさんを見つけた俺達は、そう叫び駆け寄りユリウスさんの容態を確認した。

 近づいた時、微かに息をする音は聞こえていたので生きてる事は分かった。

 しかし、魔力が底をついた状態な上、手足はボロボロの状態で意識は無かった。


「ユリウスさん、どうしてこんなになるまで……」


「……ジン君、もしかしてあれのせいじゃない?」


「えっ?」


 ユリウスさんの体を確認していた俺は、クロエが指をさした方向を見た。

 するとそこには、先週俺達が奇跡的に見つけたミスリルが壁に埋まっていた。


「嘘だろ? この間、見つけたばかりだぞ? そんな頻繁に見つかる筈は……」


 そこで俺は、ダンジョンの造りのある設定を思いだした。

 ダンジョンの採掘ポイントは掘れば掘る程、レア度の高い鉱石が現れる。


「だからなのか、ここに来るまで採掘場所の近くに鉱石が山積みにされてたの……ユリウスさん、20層から30層までの区間を何度も周回して、ミスリルを粘り続けていたんだ」


 設定をこの世界で聞いた噂とクロエに説明して、俺はそう言った。

 それから俺は半分掘られているミスリルを最後まで掘り、気絶しているユリウスさんを背中に乗せて30層へと向かった。

 そして30層にある安全地帯へと入り、そこの転移陣で1階へと転移した。


「ジンさん、クロエさん!」


 1階から外に出ると、そこには大勢の兵士が居て、その中の俺達の事を知ってる兵士が駆け寄って来た。

 そして俺が背中に乗せてるユリウスさんに気付き「ユリウス様!」と叫ぶと、大勢の兵士達が集まって来た。

 その後、ユリウスを発見した俺達は兵士達に感謝され、共に王都に帰還した。

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