第58話 【これから・2】
それから俺とユリウスは模擬戦闘を行い、その後一緒に汗を流しにシャワー室へと向かった。
「……ジンさんって、本当に12歳ですか?」
「えっ? どうしてですか?」
シャワーを浴び終え、タオルで体を拭いていると不意にユリウスからそんな事を言われた。
「精神的にも成熟している所はあるのですが、それよりも肉体が普通の12歳のそれとは全く別物なので……単純に筋肉だけの体ではなく、戦う為の体つきをしているんですよ」
「そ、そんなジロジロ見ないでくださいよッ」
ジロジロとユリウスから見られ、俺は咄嗟にタオルで全身を隠した。
ユリウスにそんな趣味があるとは思えんが、男にジロジロ見られるのは抵抗がある。
「あっ、すみません」
俺の言葉にユリウスは直ぐに気づき、バッと俺から数歩離れた。
まあ、でもユリウスの気持ちも分からんでもない。
俺の体は普通の12歳の子供とは違い、体つきはシッカリとしている。
この良い体格を手に入れられたのは、ジンというキャラの能力のおかげだと俺は知っている。
「筋トレとか戦いをして鍛えていましたけど、なんとなくこの体格の良さは生まれ持った何かだと思ってます」
「そうですね。ジンさんの様に幼い頃から鍛えている子供もいますけど、ジンさんの様な体つきはしてませんからね……ジンさんって本当に才能の塊ですね」
そうユリウスは、しみじみと思いながら言った。
その後、シャワー室の前でユリウスと別れ、俺は部屋に戻って来た。
部屋に戻ってきた俺は夕食までのちょっとした時間も無駄にしない為、瞑想を鍛える為にベッドの上に座り【瞑想】を始めた。
「んっ、誰か来たか?」
瞑想によって集中力が上がっていた俺は、部屋に近づく音が聞こえ瞑想を止めた。
すると俺の思っていた通り、その数秒後に部屋の扉をノックする音が聞こえた。
そしてノックした人物がクロエだと、その後の声で直ぐに分かった。
「ジン君、今大丈夫?」
「ああ、大丈夫だぞ」
そう俺が言うと扉がガチャッと開いて、外からクロエが部屋の中に入って来た。
「それで、どうしたんだ?」
「明日の仕事が終わったらギルドに行く予定だよね?」
先週、新しいダンジョンに挑戦する為、フィーネさん達にダンジョンの情報を集めておいて欲しいとお願いしている。
その為、明日の仕事が終わったタイミングで俺達はギルドに行き、良さげなダンジョンがあるなら向かう予定でいた。
「その予定だな、それがどうした? 何か予定が入って無理そうなのか?」
「その家族から手紙で、近いうちに顔を見せに帰って来て欲しいって来てて、ダンジョン探索が終わった後で良いんだけど家による時間作れるかな?」
クロエは自分の予定でダンジョンの帰宅時間を早めてしまう事に、申し訳なさそうに縮こまってそう言った。
別にそこまで思い詰めなくても良いんだけどな……。
「その位なら、大丈夫だぞ」
「いいの? 帰ってくる時間少し早まっちゃうけど」
「構わん、折角家族から手紙が届くくらい仲が良いなら、そっちの方が大切だからな。丁度、訓練で飴を舐めすぎて在庫が切れそうだったし、その時間にシンシアの店にでも行ってくるから気にするな」
そう言うとクロエは、「ありがとう、ジン君」と嬉しそうな顔を浮かべてそう言った。
家族から手紙か……ジンには一生来る事のない物だな。
クロエの家族エピソードは、本編ではあまり流れてなかったけど、意外と家族仲は良さそうだな。
そう思いながら俺は、瞑想の訓練の続きを再開させて夕食まで時間を潰す事にした。
夕食後、風呂には入っていたが習慣として風呂に入り、部屋に戻った俺はベッドに横になると直ぐに眠りについた。
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