第26話 【王家の判断・1】
俺のラージニア家での生活を聞いた後、食事会は終わり王様達とは別れ元の部屋に戻って来た。
クロエは俺の話があまりにも衝撃的だったのか、緊張感は無くなったが逆に姫様が少し元気をなくしていた。
「……ごめんなさい。ジンさん、貴方の事を調べたいがためにあのような事をしてしまって」
「ああ、やっぱり王様達とあったのは姫様が仕組んだ事だったんですね」
「えっ、そうなの!?」
姫様は部屋に戻ると、先程の事について謝罪を口にした。
それに対して俺はやっぱりと思い、クロエは驚いた顔をした。
「貴方は秘密主義だと調査段階で分かっていたから、お父様に協力してもらったの」
「そうだろうとは思ってましたよ。あんな場所で王様と偶然出会う何て、どういう確率なんだってあの時から思ってましたから」
「……やっぱり、貴方には気付かれていたのね。何となく、そんな気はしていたわ」
申し訳なさそうな顔をしていた姫様は、少しだけ笑みを浮かべてそう言った。
「それにしても、何故そこまで俺の事を調べようとしたんですか? 元貴族って、俺以外にも居ますよね?」
「ええ、でも貴方程、謎に包まれた状態の人はいなかったのよ。一月前にお父様のお仕事を見学してた時に、偶々貴方の事を見つけて少し気になって独自に調べていたのよ」
「それで気になって、あんな事をしたと」
そう俺が聞くと、姫様は「ええ」と頷きながら肯定した。
ふむ、まあ確かにこの姫様の性格から、俺みたいな謎に包まれた人物が現れた面白半分で追及はするだろうな……。
それ程、姫様は今の生活に退屈をしていて、自分の生活を楽しくする事を目的に色んな事を画策していたと設定資料にも書いてあった。
「まあ、分かりましたよ。今回の事については俺は何も言いませんが、これからはこんな事しないでくださいよ? 態々、王様を使う何て今の俺は平民何ですから」
「そこは考えておくわ。貴方、秘密主義でいつ私に隠し事をするか分からないもの」
「……別に隠していいじゃないですか、そんなに関わりないんですから」
「あら? 酷い事を言うわね。これからジンさんとクロエさんには、偶にここに来てもらうつもりなんだから」
「えっ、そんな話してたの? 私、記憶にないよ……」
姫様の言葉にクロエは、震えながら俺にそう言って来た。
まあ、クロエはほぼ会話に参加出来ていなかったからな、記憶に入ってなかったんだろう。
「別に依頼を俺達が断ったら良いだけでは?」
「ふふっ、だったら私の方からジンさん達に会いに行こうかしら? 勿論、私ひとりじゃ出歩けないから兵士達も一緒に、もしかしたらお父様は心配性だから一緒に来るかもしれないわね?」
ああ! 何で、俺はこうも面倒な人に目を付けられるんだよ!
そんなに脱出が遅いわけじゃなかっただろ! ちょっと、金が溜まったら物語と関係ない国に行く予定だったのに!
「分かりましたよ。来るのは、もう良いです。ただこっちも冒険者としてうまく行き始めた頃何で、あまり呼び出しが多いとそっちに支障がくるのでやめてくださいね」
「ええ、それは分かってるわよ。それに毎日呼んでも新しい話は聞けないだろうし、ジンさん達が活躍した時に呼ぶか、私が暇な時に呼ぶ事にするわよ」
そう姫様から言われた俺は、ガクッと首を下に向けて溜息を吐いた。
そんな俺と姫様のやり取りを見ていたクロエは、オドオドした様子で俺に「わ、私もなの?」と尋ねて来た。
「今日は俺の事が中心だったが、クロエの事も姫様は気になってるみたいだからな……次回はクロエが追及される番だと思うぞ」
「ッ! わ、私普通の女の子だよ……」
俺からの報告にクロエは涙を浮かべながらそう言うが、そんなクロエに姫様は「ふふっ」と笑みを浮かべて視線を送った。
その視線は俺に向けていた獲物を見つけたような視線で、ああクロエも完全に狙われていたんだなと理解した。
「クロエさんの事は次回に取っておくことにするわ、今日は色々と私が思っていた以上な事が聞けて満足したから」
「良かったなクロエ、俺のおかげで今日は免れたぞ」
俺の後ろに小さくなってるクロエにそう言うと、クロエは「でも今度来るんでしょ……」と泣きそうな声がそう言った。
その後、流石に姫様は自分のやった事に罪悪感があったのか、本来であればまだ話す予定だったが今日はここで良いと帰された。
王城から出た俺達はお互いに顔を見合わせ溜息を吐き、姫様が用意してくれた馬車に乗りギルドへと帰還した。
「ジンさん、クロエさん、物凄く疲れた顔をしていますが。お話をしにいっただけですよね?」
「ええ、まあ話をしただけなんですけどね……その色々と疲れる事がありまして……」
そう俺が言うとクロエも同じような事を言って、フィーネさんとリコラさんは首を傾げ不思議そうな顔で俺達の顔を見た。
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