第24話 【フィアリス姫・2】
「色々と納得したくない点もありますが、今回はこれ以上は聞かない事にするわ」
ジト目でフィアリス姫は、俺を見ながらそう言った。
この眼、多分俺はまたヤバイ人に目を付けられてしまったな……。
「……はあ、普通の人だったら私の前に居たらあんな風に緊張して何でも喋ってくれるのに」
「緊張はしてますよ?」
「普通の緊張でしょ? 私の前に最初に来る人は大体、ああなるのよ?」
姫様はクロエをチラリとみて、俺にそう言って来た。
いやまあ、緊張はするけど流石にああは普通はならないんじゃないか?
「まあ、良いわよ。貴方とは今後も会う事になりそうだし、その時にジックリ聞く事にするわ」
「えっ!? 今後も会うんですか?」
「嫌そうね?」
「イエ、ソンナコトハアリマセンヨ」
姫様の言葉に驚き発言すると、睨まれてしまいカタコトで俺はそう言葉を返した。
「言っておくけど、依頼書にはちゃんと書いていたわよ。私が気に入ったら、その後も継続で話を聞かせて欲しいって」
そう言えば、そんな文面が最後の方にあったような……。
「で、ですがそれは気に入った場合じゃ……」
「ええ、だからあなたの事をもっと知りたいと気になったから、今後も話を聞かせて欲しいのよ。それに今もずっと緊張で固まってそこの女の子の事も今後は色々と聞きたいもの」
「俺なんてそこらの冒険者と変わりませんよ。だからこれから来るのは、クロエだけでも良いんじゃないですか?」
サラッと俺はクロエを見捨て、自分だけでも助かる方へと話を向けた。
俺の言葉に緊張で固まってクロエは、一瞬反応したがまだ発言は出来ないみたいだ。
「あなたを逃がすわけないじゃない。貴方程、私を楽しませてくれそうな逸材はそうそう現れないものジックリ楽しむつもりよ」
ニコニコと笑みを浮かべる姫様に対して、俺は心の中で盛大に溜息を吐いた。
くそう! なんでストーリーから離れようとしてるのに、ヤバイキャラに目を付けられるんだよ!
アスカだけでも十分だってのに何で……。
「ふふっ、困ってる顔ね。なんだか、貴方の困り顔は見てて気持ちいいわね」
「変な考えは止めてください寒気がします……」
獲物を見つけたかのような視線を向けてくる姫様に、ブルリと体を震わせ俺はそう言った。
その後、ようやく緊張が少し解け始めたクロエは改めて姫様に挨拶をして、会話に参加した。
「ジンさんとクロエさんは、冒険者になってから知り合ったって報告書に書かれていたのだけど、どうやってあなた達は知り合ったのかしら?」
「私が魔物に襲われてる時に、ジン君が助けてくれたんです」
姫様の質問にクロエはそう語りだし、俺との出会いを姫様に話した。
その話を聞いた姫様は「物語みたいな出会い方ね」とキラキラとした瞳でそう言った。
その様子は子供が玩具で遊ぶかのように、楽しそうな顔をしてクロエの話を聞きこんでいた。
「……あの、姫様ってマジで冒険の話を聞きたくて俺達を呼んだんですか?」
「そうよ? 何、他の事で呼び出しと思ってたの?」
「正直、冒険の話なんて他の冒険者にも聞けるので、何かしら裏があるのかと……」
「まあ、無いとは言い切れないけど、冒険の話が聞きたくて呼んだのは間違いないわよ。普通に外で生活出来ない身だから、経験した話を聞くだけでも楽しいんだもの」
姫様は真顔でそう言って、クロエとの会話を再開した。
……設定通りと言えば、設定通りだな。
外の世界に憧れてる姫様、それがゲームでの姫様の設定。
勇者が現れ、魔王退治が本格的になった頃、聖女として魔王討伐に参加した姫様。
その時、それまで見せた事のない笑みを浮かべたと、従者目線で語られていた。
その後、昼過ぎまで夢中になって話をしていた姫様は、外で待機していた従者から昼の時間だと教えられて話を一旦止めた。
そして俺達は姫様から昼をご馳走させてあげると言われ、姫様と共に王城の食堂へと向かった。
「おや、フィアリス? その方達は誰なんだい?」
長い廊下を歩いていると、前方の曲がり角から190㎝程の威厳のある男性と秘書官のある男性が現れ、威厳のある男性が姫様にそう声を掛けた。
「あら、お父様。こちらは私が呼んだ冒険者の二人です。先程まで話しに夢中になっていまして、今から食事をしようと食堂に向かっていた途中なんです」
姫様がそう言うと、威厳のある男性は俺とクロエを一瞥した。
「ハヒッ……」
姫様がお父様と呼んだという時点でクロエはガッチガチに固まっていたのだが、男性から見られたクロエは悲鳴のような声を出し気絶してしまった。
ルフォンドルス・フォン・デュルド、デュルド王国の現国王。
この国の最高権力者が今、俺の前に居る。
「あら、お父様の威圧でクロエさんが気を失ったようですね。だから、いつも言ってるじゃないですか、そんな圧をバラまいてたら怖がられると」
「わ、儂。そんなに圧は出して居らんぞ?」
娘のフィアリス姫から駄目だしをされた王様は、慌てた様子で姫様にそう弁明した。
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