第12話 【獣人の冒険者・4】
「ジン君、別に悪い事してないんだからそんな不安そうに考えなくても良いんじゃないの?」
俺の顔を見てクロエは、そう声を掛けた。
いや別に、悪い悪くないとかそう言うのじゃないんだよな……。
「呼び出しって事自体が嫌なんだよな……」
前世の時、別に悪い事をしてないけど職員室に呼ばれた時なんかに似た感じを俺は感じていた。
そんな感覚が分からないクロエは首を傾げ「ジン君が不安になってるし、話もどそっか」と話題を元に戻してくれた。
「ジン君の場合、前衛も後衛も出来るなら私と組む場合は後衛をしてもらっても良いかな?」
「って事は、クロエは前衛向きのスキルを持ってるって事か? 聞いて良いなら、それだけでも教えて欲しいな」
「うん、良いよ。【身体強化魔法】と【剣術:3】だよ。この二つがあるから、今まで前衛でやってきてたの」
【剣術:3】と聞いた俺は、クロエは天才の部類の人間かも知れないと考えた。
武器術系や魔法系のスキルレベルは、所持者の才能によって上昇するまでの経験値が変わって来る。
それこそゲームの主人公はその辺の設定は緩くされていて、基本的に終盤になると均等して最大レベル付近まで上がっていた。
「剣の才能があるんだな」
「うん、一つでも才能が有ったら冒険者は有利って聞いてたけど本当にその通りだったよ」
才能があると言うと、クロエは笑みを浮かべてそう言った。
そんなクロエを横目でチラリと見たリコラさんは、クロエのもう一つ優れた点について教えてくれた。
「クロエさんは剣術の腕もそうですが、何より一番優れているのは斥候技術だとギルド側は評価してます」
「へぇ、それは良いな。俺はそういった技術はないから、クロエが居たらダンジョン攻略も早い内から挑戦出来そうだな」
「良いね! 私が罠とか見破るから、ジン君の魔法で蹴散らせば簡単にダンジョン攻略も出来そうだね!」
ダンジョン攻略。
そう俺が言うと、クロエは目に見えてワクワクとした雰囲気でそう言った。
ダンジョン、それは神々が人に対し試練を与える場所。
そう言った設定でこの世界には、いくつものダンジョンが存在する。
形状は様々でよくあるのが、洞窟型のダンジョン。
王都の近くにもいくつかダンジョンが存在していて、多くの冒険者が挑戦している。
「ジンさんとクロエさんでしたら、油断さえしなければ良い稼ぎにはなりそうですね。一応、こちらでジンさん達に合いそうなダンジョンを探しておきましょうか?」
「そうですね。一応探しておいてください。行くかどうかは、今の所分かりませんけど」
「分かりました。ジンさん達に勧められるダンジョンを探しておきます」
そうフィーネさんが言うと、クロエは「楽しみだね!」と言った。
その後も脱線しつつも、お互いの事を何となく知り明日一緒に依頼を受ける約束をしてから解散となった。
クロエと別れた後、既に外は陽が落ち始めていたので宿に帰宅した。
帰宅後、既に夕食の時間だったので食事をして、シャワーを浴びて部屋に入った。
「……って、待てよ。クロエってゲームに同じ名前のキャラいなかったか!?」
ベッドに横になった俺は、ハッと思いそう叫びながら飛び起きた。
ゲームのキャラに獣人族の冒険者で、クロエという名の冒険者が居た。
いや、でも〝ゲームのクロエ〟と〝今日会ったクロエ〟は全く別人に見えた。
ゲームのクロエは暗い雰囲気を纏った少し怖い系のキャラで、俺も初見は〝敵キャラ〟だと誤認する程だった。
ただ実際は〝重度の人間不信〟で信じた者以外は、たとえ相手が善人であろうと心を開かないというキャラだった。
「そう言えば、クロエのエピソードに今日の出来事に似た出来事があったな……もしかしなくても、あのクロエが今日会ったクロエなのか?」
未だ信じ切れない俺は頭の中を整理しきれず、一時間近く悩み続けた。
結果的にゲームのクロエと同一人物と決定付ける事で、今回の事は片付ける事にした。
「自分からストーリーから脱却しようとしてるのに、何で重要キャラの一人の〝クロエ〟と仲間になってるんだよ」
溜息を吐きながら俺はそう呟くと、もう考えるのが嫌になり嫌な事から目を背ける様に眠りについた。
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