第4話 魔女は愛さない
「…愛さない…」
これで確定した。僕が魔女の子ではないということを。魔女本人から聞いたことなんだから間違っていないはずだ。…嘘をついているという事もあるがこんな状況で嘘を付くメリットなんてあるのだろうか。…僕には思いつかない。だけど多分…これで証明にはなった。
「そもそも、わたし、にんげんきらい。だから、あいすわけない」
…人間嫌い…こりゃあ…かなり人間に対して不満を持っていると言ってもいいかもしれない。魔女は人類を滅ぼすとされている種族…人間嫌いだから滅ぼそうとしているのかも。でもどうしてそこまで人間嫌いなのだろうか。相当な人間嫌いではないと滅ぼそうなんて思考に至らない。人間嫌いでも普通は人間と関わらない、人間を避けるのに滅ぼすなんて…普通は考えない。人間の虐殺…なんて…。
「どうして、まじょであるわたしに、そういったの?」
「…さっきも言ったような気がするけど…僕は魔女の子だと疑われているんだ」
「だから、その「まじょのこ」ってなに?」
「あぁ…魔女が愛している人間のこと。僕は村の人達に勘違いされているんだよ」
魔女本人なのに魔女の子という意味合いと知らなかったのか…なんだか意外だな。当事者が知らないなんて…人間を愛したことなんてないのだろうか。まぁ、人間嫌いなら普通に有り得る話だけどね。
「…めんどう」
ため息混じりで彼女は言った。人間は殺害の対象でもあり、面倒な種族であるのか。彼女にとっては。…でも魔女なら人間を普通に殺せると思う。だって魔女はありとあらゆる人間が敵わない。一人だけでも世界征服が出来るぐらいの魔力を持つ種族であるのに…そして彼女は人間嫌い…それなら世界征服を思いついても…人間虐殺を今すぐに実行しても問題なく実行出来ると思うんだけど…。
そもそも魔女はなんで人間なんて敵でもないぐらいの魔力を持ち合わせているのに世界征服とか人間虐殺とかそういう大きな悪事をしないのだろうか。一瞬で終わるのにどうして…?魔女の目的って何なんだろう…。
目の前にいる彼女は動かない。魔女の子ではないということは証明出来たけど…一応この遺跡の中も探索してみようかな…。
「ちょっとそこ…どいてくれてもいいかな…偉そうだけど…」
「…あなたがわたしをどかして。わたし、うごきたくない」
…怠惰だ。何もかも面倒なのだろうか。まぁ、本人が動かしてもいいというのなら動かしてもいいんだろうね。…文句言われて魔法で死ぬとかやめてよ…。魔女と僕が戦って勝てるわけがないよ。
「ん…」
なんだろう、魔女ってこんなにも軽いんだ。というかこの子が子供だからだろうか。明らかに身長とか口調とか子供だ。言葉の発音がさっきから幼稚…言葉をあんまり学んでいない感じの雰囲気がする。…ということはこの子…見た目や中身は本当にただの女の子…みたい。
「…よいしょ…」
魔女を石碑からずらした。引きずるわけにはいかないので抱いて移動した。擦り傷とか出来たら逆鱗に触れるかもしれないから…魔女の怒りを買わないようにしないと。魔女の怒りで村が滅ぶなんてあってはいけないことなのだから。
「…にんげんにはこばれるなんて。…ま、わたしがきょかしたから…いいけどね」
文句を言うのも面倒なのだろうか。怒りをぶつける…というより怒りを持つことさえも面倒なのだろうか。本当に何もかも面倒だと決めつける子ではないかと思い始めてきた…。
「とりあえず石碑を…」
忌み子を閉じ込める、牢、入る事を禁ずる。
…そう石碑に書かれていた。
石碑に書かれていた内容を読んで僕に村の伝承を知りたいという欲望が湧いてしまった。…でもそれが村のためになるのなら…欲望でも…叶える。
ー自分の手でー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます