第21話 タイミング良し?

 初級魔術の攻撃魔術は、


 火 【火球ひとだま

 水 【水球よーよー

 風 【風弾びーびーだん

 土 【石礫みずきり

 光 【光弾まめきゅう

 闇 【吸精さきゅばす


 の六つ。それと補助用の魔術もあったりする。


 聖 【消毒あかちん

   【塞傷ばんそうこう

   【治癒おくすり

 力 【腕力強化じょうわんにとうきん

   【脚力強化だいたいこつ

   【体力強化まらそん


 この六つがそうなる。試しにミレーお姉様にこの世界の強化魔術をかけて試して貰った後に、腕力強化じょうわんにとうきん魔術をかけてみたところ、この世界の強化魔術では持ち上げられなかった百二十キロの石を、片手で軽々かるがると持ち上げてた…… うん、強化されるのは良い事だよね。多分。


 そして、結果として


 祖母おばあ様が聖の初級魔術を全て。

 母上は光と力全て。

 ミランダ様は闇のみ。(何か怖い) 

 マアヤが水と土と聖の消毒を。

 マキヤは聖の塞傷と力の体力強化を。

 マラヤは風と光を。

 兄上が火と風と光、それに力の脚力強化を。

 ミレーお姉様は力の全てを出来る様になった。


 皆が新しい魔術に夢中になっていたら、地下室に祖父おじい様と父上が入ってきた。


『あら、マルコ。随分と早いじゃない?』


 曾祖母ひいおばあ様が入ってきた祖父おじい様に声をかける。


「母上、それが少し困った事になりまして。それでヴァンと一緒に急いで帰ってきました。そしたら皆が地下室に居ると言うので」


「あら、あなた。何が困ったの?」


 祖母おばあ様がそう聞くと、父上が返事をした。


「母上、モリノミのヤツらが決闘を申し込んで来ましてね。それも、アソコの嫡男のハラードとウチのボトルとの対戦を陛下に具申しやがったんですよ。最近、モリノミのヤツらは隣の大陸から魔法師とやらを呼んで向こうの魔法を学んでるらしくてね。それがどうもこの国の魔術よりも強力らしいから、ヤツら良い気になってそんな事を言ってやがるんです」


 父上の返事を聞いて、母上が兄上に声をかけた。


「ボトル、ご指名だしキッチリと締めて差し上げなさいね。大丈夫よ、消してもヴァンがどうにかしてくれるから」


 とニッコリ笑って言う。こんな母上を初めて見た僕はビックリした。

 ソコに祖母おばあ様が待ったをかけた。


「こら、ヴァン。ここにはミランダ様もいらっしゃるんだから言葉を選びなさい。それにリーン、昔に戻ってますよ。貴女はもう淑女なんですからボトちゃんを焚き付けないの!」


 二人はシュンとしてゴメンナサイと言う。しかし、黙ってなかったのが、ミランダ様とミレーお姉様だった。


「ボトル、ハラードなんかグシャグシャにやっつけてね」


「ふふふ、公爵様、陛下は了承なさったんですね…… 私の可愛い娘の婚約者を危険に晒そうとするなんて。陛下にはお仕置きが必要ですね……」


 怖い、怖いよ。ミランダ様。加減を間違えて吸精を使わない様に後でちゃんと注意しなきゃ。 

 

 それからは祖父おじい様と父上が兄上の魔術を見たけど、この漢字魔術は込める魔力で威力を変化させる事が分かるとホッとした顔をしていた。

 そして兄上にくれぐれも加減を間違えない様に、確りと練習する事を義務付けた。それから僕の方を見て、


「「コルク、勿論私達にも教えてくれるんだろう?」」


 と少し悪い顔で言ってきた。さすが、親子だと僕は感心しちゃったよ。だって、ニヤリと笑った時の顔がソックリだったから。

 翌日、父上は陛下に了承の返事をして、兄上とハラードの対戦が十日後に決まったと教えてくれた。それからは兄上に取っては辛い日々だったと思う。

 僕と魔力の制御訓練を二時間して、ミレーお姉様との模擬戦が一時間。昼食を挟んで父上か祖父おじい様との模擬戦が一時間。そして、また魔力の制御訓練を一人で二時間。

 それが対戦の前日まで兄上に課せられた。正直に言おう。同い年どころか、大人でも今の兄上に勝てる人は少ないと思う。ハラードに少し同情する僕だった。


 あっ、因みに陛下はとある日にルンルン気分でミランダ様の家に来たけど、翌朝は息も絶え絶えだったそうです。何があったかはご想像にお任せします。



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