第25話 高知大学探検部地底湖行方不明事件

 単純な殺人事件ならばこのようなもやもやを感じないのだろうが……事件性の認定というのは難しいのだろう。

 平成20年1月5日、岡山県新見市にある鍾乳洞「日?坂鐘乳穴(ひめさかたちあな)」に入っていた高知大学3年で学術探検部所属の名倉祐樹さん(当時21歳)が、洞窟内の地底湖を遊泳中に行方不明になった。

 名倉さんは中国・四国地方の大学探検サークルのコミュニティーで企画された合宿に、高知大学学術探検部員3名(計4名)と共に参加。合宿には他大学や社会人を合わせて計13名参加していた。

 日?坂鐘乳穴には5名(構成不明)のグループで入る(必要な市教育委員会への入洞届は出されていなかった)。

 腹ばいになる狭い箇所やザイルを使って降りる場所を通って、約3時間後に入り口から1.6キロほど奥にある地底湖(直径約25m・水深約30m)へ到着した。

 到着後、名倉さんが一人で着衣のまま命綱などもつけずに調査の為に地底湖に入ったらしい。

 当然のことながら一人で、安全対策もせずに調査名目で地底湖に入ったことに疑問が示されている。

 合宿の恒例イベントとして地底湖で泳ぐというものがあったとの情報もあるが、確認はとれていない

 メンバーは当初声を掛けながら岸壁などを調査していたが、突如名倉さんの声が途絶え行方がわからなくなった。

 行方が分からなくなるまでの間、叫び声などは聞こえなかったという。

 残りのメンバーは洞慌てて窟を出て救助を要請した。


 

 しかし調査が始まるとたちまち胡散臭さが漂い始める。

 登山部などでは部長が隊長格として事故の記者会見に応じるのが常識だが、探検部長の白米美帆は記者会見などから逃げ回り一切の責任を放棄する行動を見せた。

 さらに探検部のホームページから部長白米美帆と副部長の伊藤智子の名が真っ先に削除される。

 極めつけはまだ捜査中にもかかわらず名倉さんのmixiが何者かによって削除されてしまう。

 結局名倉さんの遺体は見つからず捜査は打ち切られたが、もちろん削除したのは本人ではなくパスワードを知る知人の仕業であろう。


 地底湖は入口から片道3時間もかかる奥地にあり、洞窟の幅も人1人がやっと通れる狭さで途中には首まで水につかる難所もあったようだ。

 そのため捜査は難航を極め、地元消防も早々に捜査を断念した。

 しかもこの地底湖は水面にもやがかかっていて水も白濁しており、潜るとほとんど視界が利かない状態であった。

 そんな場所でなぜ名倉さんは泳がなければならなかったのか。

 まして季節は1月であり、地底湖の水温が多少高いとしても泳ぐという発想そのものが考えにくい環境である。


 名倉さんとともに入洞した人間の数も5名から4名、13名と報道のたびに訂正され、さらに探検に必要な装備は整えていたという発表がなされたにもかかわらず

 命綱はあったのかという簡単な質問にも全容の解明のためお応えできないという回答であった。


 

 2chで盛り上がりを見せるまさにその時、名倉さんのmixiが改ざんされ全公開から友人までの公開に変更、そして名倉さんの日記が全削除された。

 おそらく日記になかに洞窟のなかで酒宴をひらいたり、ケーキを食べたなどの記述を消したかったのだろう。

 このため2chでの関心が一気に加速。さらに高知大学探検部OBを名乗る者が、遊泳は探検部の伝統だった。酒にからんだ様々な危険な伝統が以前から存在したなどの暴露が行われる。

 炎上に伴い探検部員と見られる書き込みが相次ぎ内部抗争、というか痴話げんかのようなやりとりも見られる。詳しくはhimesaka@wikiを参照していただきたい。

 この暴露により探検部の部長副部長が女性であるなど、男女関係の確執により殺されたのではないかという疑惑が浮上した。

 しかし事故として捜査が断念された今、すでに事件は確定しており今後真実が明らかになることはあるまい。



 捜査にあたった機動隊の警部補が新聞のインタビューにこう答えている。

 「部員が遊泳中に行方不明になったという連絡を受け出動した」

 その後学術目的であった、探検に必要な装備は整っていた、不幸な事故だったと言いわけをしたいがために情報が錯綜し謎をよんでしまったのではないだろうか。

 管理人は大学生が悪乗りで酔った部員を死なせてしまい、就職や風評を怖れ隠蔽を図り追求から逃げ続けただけの事件ではないかと思う。

 しかし無責任な大学生の無謀な試みが1人の命を失わせたという事実は、追求されてしかるべきであろう。

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