第48話 呼吸
布団の中に入った部下とボスはお互いに背を向けて、寝る態勢に入っている。
流石に、女主人に2回も交わりを見られそうになったため、寝室でイチャイチャし出すような失態は犯さない。
ボスは、ぼーっとしながら寝室の畳の隙間をじっと見つめていた。
カチッカチッという時計の音だけが聞こえる。ボスは思わず大きなあくびをした。
思えば、ボスも部下もこの日は様々な事があり大変に疲れていた。そして、このおもてなしを受けている。
眠ってしまうのも時間の問題だった。まだボスの目は空いているが、ボスの隣で寝ている部下から既に寝息が聞こえてきている。
ボスは、自分の頭に手をやりながら、じっと窓の外の月を見る。ぼんやりとした夜空に煌々と輝く月の前を何かが横切ったような気がした。
その何かをじっと見つめるボス。しばらくしてその何かは消えてしまった。天井に視線を戻すボス。
そして静かに目を瞑っていると、扉の開く音がした。女主人が洗濯を終え戻ってきたのだ。
女主人は、そっと足跡を立てないように自分の布団までたどり着く。
そして、あーすべっちゃったー。と小声で言ったかと思うと、即座に部下の布団へ潜り込んだ。
ボスの隣からは、鬼のように呼吸をする音と寝苦しそうにうめく部下の声が聞こえた。
様々な呼吸の音が聞こえる。最初は激しかった呼吸の間隔はだんだん長くなっていき、とうとう息を吸う音しか聞こえなくなった。
2,3分が過ぎ去ろうとしていた時、ピタリと音が止んだ。ボスは少し心配になり部下の布団へ目を向けた。
そこには、すやすやと寝息を立てている部下と満足そうな顔で眠っている女主人がいた。ひとまず安心するボス。
しかし、なぜこうもあっさり女主人が寝てしまったのか疑問が残る。彼女の部下への愛情具合を鑑みれば、一晩中でも匂いを嗅いでいられるはずなのに。
そう思いながら、また天井に目を向けるボス。すると、目の前に自分を眺めている見知らぬ女がいる。
あまりの光景に、思わず大声をあげそうになるボス。しかし、すんでの所で目の前の女はボスの口元に手を当てた。
ボスは助けを求めようと必死にもがく、しかしくぐもった声は誰にも届かない。
ボスの目に映る女は、妖しく笑っている。
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