第25話:最強無敵の吸血鬼なのだ
「おはようございます、先輩!」
玄関の扉を開けるとやたらとテンションの高い山田がビシッと敬礼していた。
なんでこいつは朝からこんなに元気なのだろう。
何か嬉しいことでもあったのだろうか。
「とりあえず上がれよ。クーラの奴がまだ寝ぼけてるから」
「あ、はい」
まさか2日連続で会社の後輩を家に上げることになるとは思ってもいなかったな。
というか、よく考えたら他人を家に招くこと自体が初めてじゃないか?
勝手に転がり込んできたクーラは別として。
リビングでは誇り高き(笑)吸血鬼がぼーっとしながらテレビを見ていた。
こいつ本当朝弱いな。
吸血鬼だからか?
それとも単なる本人の性質か?
「クーラちゃんは寝起きでも可愛いですねえ~」
「お前も寝ぼけてるのか?」
ぼけっとしながらテレビを見ているだけのアレのどこが可愛いんだ。
山田は手に持っていたバッグから小物入れのようなポーチを取り出し、そこから更に櫛を出すと勝手にクーラの髪を梳かし始めた。
櫛持ち歩いてるのか。
外で髪型乱れた時とかに確かに便利かもしれないな。
「うわ、先輩見てくださいよ! 髪めっちゃさらっさらなんですけど! うわー……いいなあ、私もこれくらい癖のない髪とクーラちゃんくらい綺麗な顔だったらなんでも似合うんですけどねー」
「ふふん、なにせ我だからな。我は最強無敵の吸血鬼なのだ」
寝ぼけながらもどうやら褒められていることを察知したらしいクーラが反応する。
というかこいつ異世界では敵だらけみたいなこと言っていた割に山田に背後をあっさり取られているが気にしていないのだろうか。
もしあいつがハサミでも持ってたらぐっさりやられるぞ。
美容院に行く度に思うようなことを考えつつ、女子二人が仲睦まじい様子にしているのを眺める。
クーラが来るまではこうして俺以外の誰かが部屋の中で動いていることなんて想像もできなかった。
こういう日常も悪くないかもな。
なんてふと考える。
「昼飯食ってくか? それとも外で食べるか?」
それを聞いた山田はクーラの髪をいじりながらうーんと首を傾げる。
「先輩の手料理も捨てがたいですけど、最近できた美味しそうなお店があるんですよね。クーラちゃんは食べられないものとかありますか?」
「にんにくは好かん」
「あ~なるほど。じゃあ多分大丈夫ですね」
「なんて店だ?」
「確か…………」
店名を聞いてスマホで検索してみる。
……カード対応してるな。
基本的にあまり現金を持ち歩かない主義なのでもしカードが使えない店だと先にATMへ寄らないといけないのだ。
三人分だから、高くても1万ちょいくらいで収まるとは思うが。
「評判でも調べてるんですか?」
「……いや、車での経路を調べてた。今日は色々買うからな」
できればベッドも買いたい。
もちろん俺用のだ。
あと、割れた玄関を直すツールも。
業者を呼んでもいいが、なるべく家に部外者は入れたくないのだ。
玄関から先に入ってくることはないとは思うが、念の為。
カーテンの隙間とかから偶然見えたりすることが絶対ないとは言い切れないからな。
山田はもう仕方がない。
例外だ。
後気をつけるべきは買い物中に同僚に見つからないことくらいか。
色々と面倒なことになることが目に見えているからな。
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