四十一 第八発見者
「……きゃああああああ!!」
アパートのドアを開けた瞬間、私は腰を抜かし悲鳴を上げていた。玄関に広がっていたのは、見たこともないほど大量の真っ赤な鮮血。並べられたハイヒールにべっとりと着いたそれは、鼻が曲がりそうになるくらい強烈な匂いを放っていた。
「大丈夫ですか!?」
私の悲鳴を聞きつけて、通りを歩いていた人が慌てて駆けつけてくれた。男は四十代くらいの、疲れた顔をしたサラリーマンだった。すでに日付は変わり、辺りはシンと静まり返っていたものだから、余計私の声は響いていたのだろう。「あ…あ…」言葉にならない音を喉から搾り出しながら、私は自宅の扉の向こうを指差した。彼はゴクリと唾を飲み込むと、ゆっくりとこちらに近づき、恐る恐る開いたままの扉を覗き込んだ。
「うわっ!?」
目の前の無防備な後頭部目掛けて、私は隠し持っていた金属バットを振り下ろした。先ほどの鮮血の上に、真新しい真紅の模様が上から降り注ぐ。何が起こったのか理解できず、男は目を白黒させるばかりだった。私は笑って顔の前で手を合わせた。
「すみません。貴方の死体ができる前に……悲鳴が先に上がっちゃいました」
もう二、三発殴ってやると、彼は叫びたくなるほどグロテスクな顔に変形して、そのまま絶命した。新しく出来上がった八つ目の死体を、私は部屋の奥へとずるずると引きずっていった。
夜が明けるまでに、このやり方で後二、三人イケるかもしれないな。アパートの住民達の上に新しい入居者を重ね、次の獲物を探すため私は再び玄関に戻った。
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