第58話 採掘場

「そっか……やっぱり、そうなったか」

「ええ、盗賊達は全員がこの街の屯所で預かる事になりましたが、ハジメノの冒険者ギルドに所属していた3人は更迭されました」

「現役冒険者でありながら盗賊に加担していたとなると、ハジメノの冒険者ギルドの評判に関わるからな……」

「はっ、あんな奴等全員処刑すればいいんだよ!!」



ゴウケン、カマセ、ゴズの3名はハジメノに送り返され、その後に処罰が下される事になる事を他の仲間からイチは教えてもらう。ゴズは既に冒険者ではないが、他の二人は現役の冒険者であり、しかもゴウケンに至っては銀級冒険者の中でもかなり知名度が通っていた。


冒険者ギルドからすれば現役の冒険者が盗賊と繋がっていたと知られるとギルドの評判に関わるため、この3人は即座にハジメノに送り返される。処分を下すのはギルドマスターとハジメノを管理する領主であり、重い罰を受けるのは間違いない。


ガウナは相棒と信じていたゴウケンに裏切られた事に非常に腹を立て、彼女はゴウケンの悪態を吐きながら酒を飲む。相棒として一緒に行動していた分、今回の裏切りが相当にショックだったらしく、彼女は荒れていた。



「ちっ……報告が済んだのならもう出ていきな!!酒がまずくなる!!」

「ここは相部屋ですが……」

「うるさいね、私に喧嘩を売ってるのか?」

「リル、ここは一人にさせよう」



ガウナが泊まった部屋はリルと相部屋であり、彼女は宿に泊まる金もなかったので仕方なくリルが相部屋を用意した。これまで彼女はゴウケンと行動を共にしており、金の管理も任せていた。だが、ゴウケンが裏切ったせいで彼女は手持ちの金の殆どを酒代に費やし、宿に泊まる金もなかった。


ゴウケンの裏切りはガウナが一番傷ついており、そんな彼女の気持ちを察してブランはリルとイチに部屋から出る様に促す。リルも気持ちは分かるが誰のお陰で宿に泊まれるのかと不満だったが、信用していた人間に裏切られた時の悲しみは理解できるため、仕方なく二人と共に部屋を出ていく。



「俺達はこれからどうなるんだ?」

「私達も一緒にあの3人とハジメノまで戻る事になるでしょう。ですけど、盗賊の事情聴取なので時間は掛かりそうですから、しばらくの間はここに残る事になります。まあ、明日か明後日にはハジメノへ戻る事になるらしいですが……」

「だろうね」



イチ達はこの街の警備兵に色々と事情を聞かれ、捕まえた盗賊から聞き出した話と照らし合わせる必要があり、もうしばらくの間はここへ残る事になった。ちなみに警備兵に捕まった盗賊達は往生際が悪く、自分は悪くないと他の仲間に責任を押し付け合っているらしい。


被害者であるイチ達は盗賊達が自分達を捕まえ、殺そうとしていた事は警備兵に伝えている。リルとガウナに至っては身体を狙われた事も話しており、彼等はそれ相応の処罰を受ける事は間違いない。イチ達の方は事情聴取を終えたのでしばらくの間はこの街で休む事になる。



「二人はこれからどうする?俺は修行をするつもりだが……」

「修行?」

「ああ、俺はあまり役に立てなかったからな……だから、今一度自分を鍛え直す事に決めた」

「私も……しばらくの間は魔物狩りを行います。何となくですが、もう少しで新しい能力が覚えられる気がするんです。今度こそ……イチさんの足手まといにならないように強くなって見せます」

「別にそこまで気負わなくてもいいのに……」



ブランとリルは今回の襲撃で自分達が対して役に立てなかった事を恥じて修行を積むらしく、ガウナもあの調子のため、各自しばらくの間は別々で行動する事が決まった。


ナイとしても他の人間と別行動するのは都合が良く、新しく覚えた異空間転移の件も有り、彼はドルトンから教わった魔法鉱石が発掘できる採掘場の話を思い出す。



(採掘場、か……ちょっと、行ってみようかな?)



ドルトンには注意されたが、やはり希少な魔法金属の素材となる鉱石が採れるという話は気にかかり、新しく覚えた異空間転移を生かしてイチは鉱山へ向かう事にした――




※これでやっと冒頭の話に繋がります(;´・ω・)ココマデナガカッタ……

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