第87話 歌舞伎町の戦い(2)

【357日目 10月31日 午後10時半頃 歌舞伎町高層ビル屋上】



「私は火魔法で倒れた機動隊員を助ける! 死んでるかもしれない、一刻を争うから! 御子柴君たちは火魔法を使った魔法使いを制圧して! 頼んだよ勇者様!」



 私はエマ園長と茜ちゃん達に言うが早いか「反応速度」を発動、「飛行」を使って高層ビル屋上から空中に飛び出した!



 私のいた高層ビル屋上から目的の雑居ビル前まではおよそ150mくらい。


 3秒ほどで現場に到着すると着地、すぐさま雑居ビル入り口から要救助者を防御できるように時空間操作「障壁」を使って円盤状の透明防護障壁を作り出す。

 時間が無いから地面に下半分の半円が地面の下に潜り込む形で一気に生成する。直径5mくらいの透明障壁は完全に透明なので視認することもできないだろう。外縁部は危害防止のために直径2cmほどにRをつけて丸めて巻き込んでおく。こうしないと触れただけであらゆる物体を切り裂いてしまうから危険なんだ。


 火魔法使いが居ると思われる方向をチラ見すると勇者御子柴君と女盗賊茜ちゃんが対応しているのが分かる。一般の通行人が多数いるので厄介だけど、異世界で一年間も戦闘行動をしてきた二人だからたぶん大丈夫、任せよう。



 火魔法の直撃を受けた警察官たちを改めて観察する……


 ……これは酷い。全身の体表が炭化していて、衣服の半分くらいは焼け溶けて張り付いている。どう見ても亡くなっている。いちおう、ステータスを確認してみよう。


 ステータスを閲覧するーーステータス!



名前 大宮一郎

種族 人(男性) 

年齢 42歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

称号 警視庁警備部第一課係長 警部

   すでに死んでいる



名前 山田○○

種族 人(男性) 

年齢 37歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

称号 警視庁第五機動隊 巡査部長

   すでに死んでいる



名前 佐藤△△

種族 人(男性) 

年齢 29歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

称号 警視庁新宿警察署 警部補

   すでに死んでいる



 ……三人とも警察官、一人目の大宮警部は私服警察官か……


 こんな酷い状態の御遺体を生命体干渉「治癒」で治療したことは無いけど、「治癒」で治るか治らないかは死後経過時間がポイントであるはす! 

 直近の健康体だった時の状態に強制的に戻す神技「治癒」は人体の修復材を周囲の飛散物から回収するんだけど、炭化して消し炭になっている御遺体みたいに修復材が飛散物として周囲に存在しない場合は「物質創造」で補うことになる。

 だから、「治癒」にはかなりの神力を使うと思うけどーー 損傷状況が一番ひどい大宮警部からーー


 生命体干渉ーー「治癒」!



 黒く炭化した体表面が時間を巻き戻すように修復されていく。炭化して消滅していた手の指、耳、髪の毛が再生していく。

 炭化焼死体だった大宮警部は健康体の身体になって復活した!

 おまけで虫歯と過去の治療跡も治しておいてあげる。

 最大神力のおよそ20パーセントを消費したみたい。


 引き続き、第五機動隊の山田巡査部長、新宿警察署の佐藤警部補も生命体干渉「治癒」で復活させることが出来た。良かった。この三人の治癒で消費した神力は私の最大魔力の50パーセントに達した。


 もう、いちいち私の能力を秘匿するのも面倒なので復活させた三人には「睡眠」とかかけなかったから大宮警部から順次意識を取り戻した。

 彼らには「心配いりませんよ、たいした怪我じゃなかったから私が治しておきました。生憎と服は火炎で溶けてしまってますけど命が助かったのですからよかったですね?」と言っておいた。


 大宮警部は最初に意識を取り戻して山田警部、佐藤警部補を私が復活させるところを目の当たりにしているため驚きの余り声がでなくてアウアウ言ってる。



 改めてエマ園長を見ると三人の男の手足を消し飛ばして達磨にした後は三人を蹴り飛ばして一か所に集めて、人質になっていた女性三人を少し離れた場所にいる機動隊員に預けていた。



「エマ園長、人質だった女性、怪我してるでしょ? 簡単に治しておくよ」



 私は女性のところに駆け寄るとササっと「治癒」を施す。大した怪我じゃなかったから神力の消費は三人で3パーセントくらい。木更津で消費した神力が回復しきってなかったところで大量の神力を消費したため私の残り神力は最大神力の5パーセントを切ってしまった。



「エマ園長、その三人の男、ステータス確認した?」


「ああ、確認したよ。それがね、死霊使いじゃなかった……ゾンビだってさ」


「そうなの? そこの地面に転がってる男三人のステータスを閲覧!」



名前 ー 

種族 ゾンビ(男性) 

年齢 28歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

死霊スキル ゾンビ化C ゾンビ修復C

   ゾンビ再生C ゾンビ強化C 

称号 ゾンビ 死霊使いの眷属

   早蕎麦大学大学院生 中国留学生



名前 ー 

種族 ゾンビ(男性) 

年齢 26歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

死霊スキル ゾンビ化C ゾンビ修復C

   ゾンビ再生C ゾンビ強化C 

称号 ゾンビ 死霊使いの眷属

   早蕎麦大学大学院生 中国留学生



名前 ー 

種族 ゾンビ(男性) 

年齢 25歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル ー

死霊スキル ゾンビ化C ゾンビ修復C

   ゾンビ再生C ゾンビ強化C 

称号 ゾンビ 死霊使いの眷属

   早蕎麦大学大学院生 中国留学生



「……ホントだ……そういや、リーナさんのSNSメッセージの中にゾンビ、出てきてたわ。異世界側にいるという話だったけど地球にも来てたのね? ゾンビって死霊使いの眷属というか、下僕らしいよ」


「……そうなんだ。ステータスの表記はゾンビってなってるけど見た目人間そのものなんですけど? ウオーキング○○○のゾンビとはエラク違った感じなんだね?」


「そうね。色々と調べたいけど神力がギリギリだから後回しだね。エマ園長、あっちの火魔法使いを調べようよ」


「でも、こいつ等死霊スキルっていうヤバそうなスキル持ってるよ? 手足を消し飛ばしたとはいえ、ここに転がしておいて大丈夫かな?」


「そう言えばそうか。じゃあ亜空間ルームに放り込んでおこうか。後で尋問するなり、人間に戻せるか確認するなりしよう。今は神力が無くて精神構造干渉をする余裕ないから」



 私は彼ら三人の直下に亜空間ルーム開口部を順々に展開して彼らを亜空間ルームに落とし込んだ。

 次いで火魔法使いの死体の方に移動する。火魔法使いの死体は御子柴君が見張ってて茜ちゃんが周辺に居た通行人をこの現場から離れるよう誘導していた。



「御子柴君、火魔法使いのステータス鑑定した?」


「うん。いちおう鑑定したけど、なかなか凄い奴ですよ。異世界から来た吸血鬼ですね……」



 雑居ビルのエントランスの床に転がっている火魔法使いの死体は頭部と胸のど真ん中が崩壊して消滅している。「浄化」を頭と胸に撃ち込んだのか。では、ステータス!



名前 ー 

種族 ゾンビ 吸血鬼(男性) 

年齢 0歳(吸血鬼1881歳)

体力 G

魔力 D

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法B 土魔法B 火魔法B 

   精神操作B 噛みつきB 飛行B 

   変身B 血液操作B 霧化B 

   怪力B 再生B 鑑定B 種まきB

死霊スキル ゾンビ化C ゾンビ修復C

   ゾンビ再生C ゾンビ強化C 

   ゾンビ支配C 

称号 女真族貴族

   吸血鬼伯爵 ゾンビ 元死霊使い

   すでに死んでいる



 ……なんか、称号が山盛り、スキル多数。吸血鬼伯爵でゾンビ、死霊使い?

 コイツが2体いた死霊使いのうちの一人? だとしたらあと一人どこ行った?



「御子柴君、『エネミーサーチ:死霊使い』試してくれる? 死霊使いが少なくとも1体足りない。この周辺に死霊使いは二体いたはずなんだよ。だからーー」


「わかった。今直ぐにやるよ」



 御子柴君は手に持った聖剣を頭上に掲げるとエネミーサーチを発動した。聖剣は仄かに輝いて北西方向を示す。



「北西方向に1体……多分移動して遠ざかってます。これは武道館から遠ざかりつつある死霊使いの反応ですね。現在は北西の方向、北西に向かって遠ざかっています。

でも、ここに突入する前に感知した非常に強い2体の死霊使いの反応はありませんね。死んだのかな?」


「死霊使い2体のうちの1体はこの『火魔法使い』だとしても、あと1体足りないな。いつの間にかどこかで死んだのかな?」


「アリスちゃん、とりあえずその『火魔法使いの死体』は亜空間ルームに格納しておこうよ。後で何かわかるかもしれないよ? 称号に吸血鬼ってあるからゲートを通って地球に侵入した元吸血鬼だろうから警察が死体を持ってても役にはたたないと思うし?」



 茜ちゃん、普通の女子高生なのに……この「火魔法使い」を討伐して息の根を止めているのに完全に平常運転だね? さすが異世界での魔王討伐パーティの一員だけあるわ~。



「そうだね、亜空間ルーム開口部展開! よし、格納した」



 火魔法使いの遺体を格納して後片付けが終わったところでーー



「やっほー! アリスちゃん、派手に戦闘したんだね!  武道館の方はいちおう片付いたよ!」



 後ろからミラ副園長の声がしたので振り返るとミラ副園長、伊集院君、コリンズ特任公使の三人がが立っていた。


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