第51話 見つけた

【9月23日 午後1時頃 市ヶ谷 防衛省】


 千葉県の自宅に一時帰宅してから6日間が経過した。



 私は相変わらず防衛省の隣のホテルを定宿にして市ヶ谷の海上幕僚監部に毎朝かよって異世界の事情についての聴取と「魔法」「スキル」のデモンストレーションを繰り返す日々を過ごしている。


 舞鶴航空基地から私についてきてくれた航空隊の隊司令さんと幕僚室長さんは私が両親と再会するのを見届けてから舞鶴に帰っていった。


 幕僚室長さんは「リーナちゃん元気でね~」って手を振って帰っていったけど親切で良い人だったなあ。





 ところで、2日前から拳銃を携帯した私服の警務官って人たちと、なぜか警視庁の私服警察官の人たちが私の周りを固めるようになった。


 常に二人ずつ、四人は居るという徹底ぶりで、防衛省とホテルの行き来はもちろん、私がホテルの部屋に入った後も部屋の前の廊下とロビーで待機してくれているし防衛省の外に買い物に行く時だって大型マイクロバスに全員で乗り込んで付いてこられる。




 まあ、私って人がそばに居てくれるって嫌いじゃないっていうか、むしろ好きだし。


 警務官さんとか警察官さんとお喋りしたらかなり砕けた感じでお話してくれるからこの人たちって結構好きだよ。



 こういう気持ちって相手にも伝わるから警務官さんと警視庁の警察官さんも私に対して凄く好意的。私のことをお姫様みたいにあれこれと世話を焼いてくれるから快適だよ。


 私って、いちおう異世界のエルトリア王国では公爵家の令嬢だからね。エルトリア王国の国民の皆さんにとっては相当に偉い人なんだよ。手前味噌ながら客観的に見ても、特にフィオーレ公爵領の領民の皆さんにとっては私は雲の上のお嬢様だった。


 警視庁の警察官さんが教えてくれたけど、外国の公爵家令嬢って日本でいえば宮家のお嬢様ってことで警察官が警護するのは当然なんだって。

 つまり私が公爵家令嬢として正式に日本を訪問することがあれば準国賓として扱ってくれるって事だよね。


 死霊使いを討伐して根絶やしにできて、将来エルトリア王国と日本が国交を結ぶ日が来ると良いんだけどなあ……









 さて。午前中のお仕事が終わってお昼休みになったのでお昼ご飯でも、と防衛省の外に出ることにする。



 ちなみに私はお金を一円も持っていなかったんだけど、防衛省でお世話になるにあたって1日あたり1万円のお給料を貰えることになった。

 昨日までの分として10万円と採用時の一時金として20万円も貰ったので、30万円も貰ってしまっている! すごい!


 しかも私のホテルの宿泊代金とか朝夕の食事代などの代金は全て防衛省が払ってくれていて私は一銭も払ってない。


 今日みたいに昼食を食べる時も警護の警務官さんが支払ってくれるからお金を払う場面が無いんだよね。


 こんなに貰って良いんですか〜って聞いたんだけど、問題ないんだって。


 更に、もし私が病気や怪我で病院のお医者さんにかかっても治療費は防衛省が全額支払ってくれることになってるんだって。私は神聖魔法「治癒」が使えるからお医者さんの治療を受けることはたぶん無いんだけどね。





 お昼ご飯を防衛省の外に食べに行くとなると、防衛省の正面ゲートを出て四ツ谷または市ヶ谷方面に歩いて行けば色々とお店があるんだ。

 今日まで何回もお昼ご飯を食べに行ってるから周辺に何があるのかなんとなく分かってきたよ。


 だけど今日は警視庁の警察官さんに「防衛省の北側にある商店街にランチが美味しいおすすめの店があるから行きましょう」と提案されたのよ。



 この警察官さんは防衛省北側にある警視庁第5機動隊に勤務していたことがあってこの辺のお店に詳しいんだって。


 護衛の警務官、警察官のおじさん全員が賛成したので機動隊側の西側ゲートから出ることにする。





 5人でぞろぞろと防衛省の敷地内道路を歩いていると正面から若い航空自衛官が歩いてくるのが見える。すれ違う時にいつものように鑑定をかけると!ー-ちょっと待って!!



「すいません、ちょっと待ってください!」



 私に声を掛けられた若い航空自衛官は自分の事とは思わなかったのかそのまま歩き続ける。



 警視庁の警察官さんが尋常ではない私の様子を察して歩き続ける航空自衛官さんに声をかけてくれた。


 若い航空自衛官さんは立ち止まって対応してくれるみたい。


 改めて彼のステータスを確認する。




名前 有朱宏冶

種族 人(男性) 

年齢 26歳  体力G  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

称号 航空自衛隊2等空尉

   亜神(時空)の魂の複写元となった人物。




 ……見つけた! 「亜神(時空)の魂の複写元となった人物」!



 この航空自衛官の有朱宏冶さん、彼のステータスには、彼が「亜神(時空)の魂の複写元となった人物」であることが表示されている。


 この「亜神(時空)」という存在が、どんな神様かは分かんないけど、神様であることには違いない。



 たしかあの女神さまは「地球にいる時空神」を探せって言ってたはずだ。


 この人のステータスには「亜神(時空)の魂の複写元」って書いてあるから「亜神(時空)」と関係があるってことだよね? ……関係があって欲しい、切実に。ステータスに神様のことが書いてある人初めて見たし。

 だいたい地球の人でステータスになんらかの表示があるほうが珍しいというか全然居ないんだ。




 この人と関係しているであろう「亜神(時空)」が、女神さまが言っていた「地球にいる時空神」とは別の存在としても、ごく近しい存在、または同類の神様である可能性はあるのではないだろうか! 


 だけど「魂の複写元」だからこの有朱宏冶さんは「亜神(時空)」自身ではない。だったら、どうすれば良いのかーー。分かんない!




 私はあれこれテンパっていろいろと考えていたため一言も発せずに突っ立っているとー。



 私がテンパっているのを察した警視庁の警察官さんが若い航空自衛官の有朱宏治さん(時空神と関係があるはずの人物)に私とお話しする時間を割いてくれるようにお願いをしてくれていた!




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