第38話 司 祭
【268日目 東京時間9月1日(木)2030時頃 韓国ソウル時間 9月1日(木)1930時頃 在韓国アメリカ大使館】
私たちが在韓国アメリカ大使館に戻った時には伊集院君は泣いていた……念話で茜ちゃん、御子柴君と伊集院君の三人は話し合ってなんで韓国の高級ホテルの4階で吸血鬼たちにとらわれることになったのか最初のきっかけから話していたようだ……
在韓アメリカ大使館に借りていた会議室に入った私たちは御子柴君と伊集院君の事情を聞いた。
なるほど、伊集院君は使徒になりたかったのか。
使徒……それは、いずれ神に至る亜神の側近。そして使徒、巫女、聖女を含めて一つの宇宙に10名を超えない人数で任命できる……地球においてはコリンズ特任公使、エマ米空軍少尉、ミラ米海兵隊軍曹、如月茜ちゃん、水無瀬美咲ちゃんの5名を任命している。残り5人。
しかーし……私の計画では有朱遥香ちゃんと場合によっては旦那の有朱宏冶君、そして子供の颯太君の三名はほぼ当確というか、任命する予定者なのだ。本人たちに拒否られる可能性はあるけどその時はその時。そして彼らの子供はあと二人くらいは増えるかもしれない……だから、あと5枠は押さえておく必要がある。ゆえに残り枠はゼロなのです。
というわけで伊集院君を使徒にすることは出来ない。
伊集院君はさっきまで事情を泣きながら今までの経緯を語っていたが今はテーブルに突っ伏している。御子柴君は伊集院君の手前、神妙な顔で何も言わずにジッとしている。
……ではアレでいこうかな。
「伊集院君、貴方の気持ちは良く分かりました。しかし使徒の枠は既に使い切っているため使徒として任命することはできないのです。
その代わり御子柴君も含めてですが亜神アリスを信仰面で補佐する『司祭』という役職があります。これになってみませんか」
伊集院君はムクりと上体を起こすと涙と鼻水で汚れた顔をティッシュで拭きながら私を真っすぐに見詰めた。うーむ。伊集院君は真剣だ。
「司祭という役職は亜神アリスの教会や神殿組織の責任者になって将来的には司祭長、更に神殿長になるという非常に重要な役割なのです。
いかがですか。私亜神アリスの司祭になってもらえますか?」
「はは、はい、はい! 伊集院平助は亜神アリス様の司祭となります! ありがとうございます! いずれ女神アリス教の教皇になるってことですよね? 頑張ります! 伊集院教皇を目指します!」
「……ま、まあ教会組織とか神殿組織については使徒の皆さんと巫女や聖女となる方たちの意見も聞いて必要ならば考慮いたしましょう……御子柴君はどうします? 司祭になりますか?」
「はい、俺も司祭にしてください。お願いします」
「分かりました。では伊集院君と御子柴君は私アリスの司祭となりました。よろしくね。
あと、ついでに各種耐性含めて魔術をコリンズさんベースで強化しておきましょう。吸血鬼の精神操作攻撃は厄介ですからね」
名前 御子柴平次
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9
闇弾9回復5睡眠5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5結界5
探知5魔法防御5念話5飛行8
神託5動物調教5魔獣調教1
身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6
睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6
恐怖耐性9嘔吐耐性9
反応速度5防御7老化緩和6
スキル 火魔法5水魔法5光魔法5
神聖魔法5
身体強化5毒耐性5麻痺耐性5
剣術5聖剣術5槍術5神槍術5
アイテムボックス5鑑定5
異世界言語(万能)
称号 帰ってきた勇者
亜神アリス軍団軍曹
亜神(時空)アリスの司祭
名前 伊集院平助
種族 人(男性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9
闇弾9回復5睡眠5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5結界5
探知5魔法防御5念話5飛行8
神託5動物調教5魔獣調教1
身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6
睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6
恐怖耐性9嘔吐耐性9
反応速度5防御7老化緩和6
称号 異世界から帰ってきた男
魔王
亜神アリス軍団軍曹
亜神(時空)アリスの司祭
よし。これで伊集院君が使徒になりたい件は収まったかな?
「アリス様、あの吸血鬼たちの事ですが……あの場は闇空間を開放する条件で見逃しましたが奴らが何を目的としてどんな勢力を持っていているのか早急に調査をしないと安心できません。
今のところは強化カモメに追跡・監視させているので良いのですが北朝鮮に帰還されると遠距離通信ができませんので監視が困難になります。どうしましょうか?」
「そうなんだよね、とりあえずエネルギー密度の高い神器は遠距離からでも感知できるんだったかな、茜ちゃん?」
「……どうだろう? 物を見てみないとーって、アリスちゃん。今気づいたけど、アリスちゃんの亜空間ルームの中に何か入ってる? ちょっと微かに感じる。何なの?エネルギー密度の高いっていう神器が入ってるの?」
「うん、いま出すよ。 はい、出しました。これです!」
私は直径5cmくらいの漆黒の球体を一個取り出してテーブルの上に置いた。コロコロ転がらないように物質創造で厚さ5mmくらいのゴム製台座を作り出して載せてある。
「うん……これ多分、御子柴君の「聖剣」と同じくらいの存在感があるよ。これだったら外部に露出していたら東京からでもギリギリ「お宝感知」できるかも?」
「じゃあ、このタイプの神器をエネルギー量はそのままで直径1cmに圧縮して作り直して強化カモメに持たせておこう。そうすればカモメの位置は把握出きるね?」
「うん、できれば2~3倍強くしてくれると更にありがたいです。できる?」
「大丈夫。これよりエネルギー40倍のがあるからそれを縮小すればOK。これで強化カモメの場所は把握できると。あとは? うーん……」
「アリス様、おそらく国家指導者の側近として吸血鬼が居るくらいですし国家中枢に浸透して国家規模に影響力を持っているはずです。となるとアメリカにとっての安全保障上の重大関心事となります。もちろん日本にとっても。この情報をアメリカ政府に提供しても良いかどうかなんですがー」
「コリンズさんの気持ちわかるよ。国家指導者の側近が吸血鬼であることをアメリカ政府に教えてもいいけど信じてくれるかな?」
「もちろん信じるでしょう。アリス・コーディと私、コリンズ海兵隊大将が証言するのです。吸血鬼のことを信じてもらえればアメリカの情報組織を活用して監視できますので多少は役に立つかなと。何ができるかは日本の大使館に戻ってから協議しますよ。奴らの電話番号やメールアドレスがありますし吸血鬼から色々と聞き出します。私に任せてください」
「分かった、コリンズさんにお任せします。なにか必要なものとか、こんなもの欲しいとかあったら言ってくださいね?」
私たちが吸血鬼について話している間に茜ちゃんと伊集院君、御子柴君は自宅のご両親にどんな説明をしようか相談していた。警察に「捜索願」が出されているらしいけど、御子柴君がWEBで調べたところ事件性が無ければ警察は行方不明者を積極的には探さないらしい。
だから、あくまで「九州旅行を勝手に延長していました」ということで言い張るって結論になったみたい……頑張って。
「それで僕達って仁川国際空港から韓国に入国したんだけど出国も仁川国際からのほうがいいかな?」
「どうせ韓国に行ってたことは言わないしパスポートも見せないで隠すんでしょ? だったら私たちと一緒に在韓米空軍烏山基地から横田に飛べばいいと思うよ。ちゃんと出国と入国の手続きはしてもらえるだろうからね。コリンズさん、大丈夫ですよね?」
「ええ、問題ないですよ」
「分かった。じゃ一緒に帰国させてください。お願いします」
コリンズさんは烏山基地にいる在韓米空軍司令部の担当者に電話して今からソウルを出て烏山基地に戻ること。
そしてできるだけ早く日本に帰国するからヨロシクって話してる。
結局東京時間2200にアメリカ空軍烏山基地に到着。2400に米軍横田基地に到着。東京時間9月2日(金)0100時頃に大使館別館に到着した。
深夜突然の出国と帰国だったから御子柴君と伊集院君のパスポートは横田基地に預けてきた。後で綺麗に処理してくれるんだって。よろしくお願いします。
御子柴君と伊集院君はそのまま大使館の車で東京駅まで送ってもらってネットカフェで待機。始発電車で自宅最寄り駅に向かって家に帰ることにしたんだって。気を付けてね。茜ちゃんは自宅が目の前だから直ぐに帰っちゃった。
こうして御子柴君と伊集院君の行方不明事件は解決した。
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