第36話 強 襲

【268日目 東京時間9月1日(木)1800時頃 韓国ソウル時間 9月1日(木)1700時頃】



 アリスが在韓国アメリカ大使館で強化カモメの記憶サルベージを行っているころ……


 北の国の首都の政府ビルの一室で吸血鬼たちが議論していた……





「例の少年二人は闇空間から未だに出てないんだな?」


「その通りです公爵閣下。〇〇◎ホテル4階の現場には完全武装の吸血鬼伯爵の指導の元で男爵5人を配置して監視に当たらせています。一日に一回の頻度で極わずかに闇空間を開放して中を観察していますが今は二人ともぐったりとしていて殆ど動かないそうです}


「そうか、10日も経つのに死んでいないとは……なぜか水は持っているようだな? しかし流石に食料は尽きてきたかな?」


「あと2~3日もすれば死ぬのではないでしょうか。死んでしまえば活用できません。そろそろ襲撃して吸血鬼の種を植え付けるタイミングかと」


「そいつらのステータスをもう一回目せてみろ。再確認したい」



名前??御子柴平次

種族???人??男性?????

年齢????6?????体力??????魔力??

魔法???水弾????弾??土弾??風弾??火弾?

????????????回復??睡????ス???タス?

??????暗視5遠視5隠??????????結界?

??????探知??魔法防御??念話??飛行?

??????神託5動物調教?

身体強化???筋力??持??????衝撃耐????

??????睡??耐?????麻痺耐?????毒???????

??????反応???度??防御?????化緩和?

スキル??火魔法5水魔法5??魔法?

??????神聖魔法?

??????身体強化5毒????????麻痺耐????

??????剣術5聖剣術5槍術5神槍術?

??????アイ????ボックス??鑑定?

??????異世界???????)

称号??帰ってきた???

??????亜神アリス軍団軍曹



名前??伊集院平助

種族???人??男性?????

年齢????6?????体力??????魔力??

魔法???水弾????弾??土弾??風弾??火弾?

????????????回復??睡????ス???タス?

??????暗視5遠視5隠??????????結界?

??????探知??魔法防御??念話??飛行?

??????魔物調教5神託5動物調教?

身体強化???筋力??持??????衝撃耐????

??????睡??耐?????麻痺耐?????毒???????

??????反応???度??防御?????化緩和?

称号??異世界から帰ってきた男

??????魔王

??????亜神アリス軍団軍曹



「ふーむ。御子柴平次と伊集院平助か。ソフィアがアメリカフロリダ州タンパで鑑定した亜神のステータス同様に文字化けして詳細は分からんがとんでもない数のスキル。

しかし我々とは異なるステータスのタイプだ……ところどころ読める部分から解釈すると、こいつ等はどう見ても亜神アリス・コーディの仲間だな」


「そうですね。しかも恐らくは我々も知らないスキルの数々……まともにやりあえば勝てないのではないでしょうか? 不意打ちで闇空間に落とし込めたのは僥倖でしたね」


「この二人が闇空間に囚われて外部にも助けを呼べないとなると亜神アリスの一味が救援に来ると思うがその兆候はないのか」


「この二人の名前からして日本人です。要するに日本にアリス一味の根拠地もしくは拠点の一つがあると思われますが、どこにあるかは分からないのです。しかし闇空間に捉えて10日も経つのにアリス一味がホテルに現れないということは〇〇◎ホテル4階の現場の場所を把握していないのではないかと思うんですよ」


「そうだなあ。ではそろそろ闇空間に吸血鬼たちを送り込んで『吸血鬼の種』の埋め込みを試みさせるか」



「ブルルー!!ブルルルー!!」おやあ。音声着信だ。



「はい公爵だ。なんだ伯爵じゃないか。どうした? 

……なにぃ? 捕まってしまっただと?」








【266日目 東京時間9月1日(木)1800時頃 韓国ソウル時間 9月1日(木)1800時頃】



『御子柴君たちが落ちたのは私たちがワシントンの住居で襲撃を受けた時に吸血鬼たちが逃走に使った異空間だと思う。

あの時も時空間操作で異空間を探ったんだけど知識にない異空間は発見できないんだよね……通常空間に重なるように存在する異空間って原理的には無限に存在しうるから特定できない。

さて、どうやって発見して救出するか。

とりあえずホテルの4階の該当するスイートルームを制圧してから考えるか。彼らの命が危険かもしれないからね』


『アリス様、まず強化カモメに先行させて急襲させましょう。睡眠5は効くみたいなので窓の外から強化カモメで一気に窓を破壊して侵入。睡眠で全員を無力化。

我々も強化カモメに先導させながら隠密を使いつつホテル4階に急行。スイートルームに突入しましょう』



『よし、それでいきましょう。強化カモメたち聞いてたね。強化カモメの御子柴、伊集院グループはスイートルーム窓側から侵入して敵を無力化せよ!』


『じゃあミラ軍曹が「隠密」と「飛行」を使って窓からの侵入に同行するよ、強化カモメだけじゃ対応できないことあるかもだし。この不真面目なカモメの前科もあるしね、アタシがキッチリと督戦してあげる』


『では外からはミラ軍曹の督戦でカモメ6羽。私とコリンズさんと茜ちゃんの三人でホテル内部から突入ね。じゃ急いで向かおう』







 コリンズさんと私そして茜ちゃんは「隠密1」と「暗視1」「筋力1」「持久力1」「衝撃耐性1」を多重発動してホテルの中を駆け抜けていく。手にはM4カービン型個人携行神器。先頭のコリンズさんは隠蔽用障壁を展開している。私たちの前方と後方には強化カモメが隠密しながら三羽づつ飛行している。




 階段を駆け上がって4階に到達する。考えてみるとこの三人の中では私がぶっちぎりに体力が無くてひ弱だね。


 この私の身体つまり「依り代」は異世界イースのアレキサンドライト帝国皇女マルチナさんの身体を複製したものだからね。マルチナさんがひ弱だからしょうがないのです。何しろ風弾4の爆発音で気を失うくらいだからね。でもメチャクチャ可愛いから良いのです。







 4階のスイートルーム前に到着。コリンズさんがミラ軍曹と念話をしている。どうやら窓にはカーテンが掛かっていて窓の外からは部屋の中が見えないらしい。

 茜ちゃんがドアをジッと観察する。



『アリスちゃん、このドアの鍵アタシのスキル「鍵開け」で開けられると思うよ。鍵開け終わったらドアノブを下に下げながら内側に押せばドアが開くから』



 茜ちゃんの「鍵開け」スキルは茜ちゃんが対象物を見ただけで「開けられるか開けられないか」「鍵の構造、安全な解除方法」が分かるらしい。凄く便利で優秀なスキルだ!



『ではミラ軍曹に窓の外から陽動してもらいましょう。光弾3を連発して注意を引きつけてその間に茜さんが『鍵開け』、鍵が開き次第に部屋に突入。ミラ軍曹、聞いてた?』


『聞いてたよ! ミラ軍曹了解!』


『ではー陽動開始! 全員「反応速度5」起動! 茜さん、鍵開けしてください!』



「反応速度5」の効果によって私の主観時間が32倍に引き伸ばされ周りの風景の動きが静止した様にゆっくりになると同時に周囲は一気に暗くなり音が全く聴こえなくなる。私以外の人たちも反応速度を起動させている。



『では、鍵開け! よし開いた!』



 コリンズさんがドアノブをグイッと引き下げて一気に内側に開放、「飛行」を併用しながら部屋の中に飛び込んでいった。反応速度を使っているときの移動は「飛行」を併用しないと上手く移動できない。続いて私、殿に茜ちゃんが飛び込んでいく!




 部屋の中に突入すると、部屋の中には男が一人倒れているだけで他には誰もいない。とりあえず倒れている男が誰なのか確認しよう。ステータス!



名前 ジョセフ・ゲオルゲ  

種族 吸血鬼(男性) 

年齢 1221  体力 G  魔力D

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法C 土魔法C 火魔法C 

   精神操作C 噛みつきC 飛行C 

   変身C 血液操作C 霧化C 

   怪力C 再生C 鑑定C 種まきC

称号 吸血鬼男爵



 コイツは……この吸血鬼は吸血鬼男爵ーワシントンで逃げられた吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲだね……さすがは吸血鬼男爵、右足を吹き飛ばしてやったはずなのにちゃんと生えてるし。恐るべし。



『アリスさんコリンズさん! 御子柴です!』



 うおっ! びっくりした! 



『御子柴君なの? どこにいるの? 吸血鬼のスキルによる異空間に囚われているんじゃなかったの? あなた無事なの?』



『はい、アリスさん俺は無事です。伊集院君と二人で隙をついて異空間から脱出したんですけど伊集院君は姿が見えない正体不明の敵に無力化されて再び異空間に囚われてしまいました。俺は亜空間ルームに立てこもることが出来たんですけど、正体不明の敵がこの部屋に居るんです、気を付けてください!』



 なんと! そんな敵がー「探知」発動!  異空間に居るのだろうか? ーー反応がないね、ではーー「時空間操作」!



 私は「時空間操作」を使ってこの部屋の中に空間の歪みがないか点検していく……ほほう、ありましたね。直径1cmほどの開口部を開けていたのが命取りです。完全に閉鎖されていれば私の時空間操作といえども探知できなかったでしょうに……

 では、久しぶりにアレを食らわせてあげましょうーー「魔術阻害空間」を展開!


 「魔術阻害空間」を展開することで魔術や魔法の発動を阻害することが出来る。「魔法防御」の拡張のようなものだけど私の使える時空間操作の一種で遥かに汎用性が高くて強力。問答無用で魔術・魔法の発動を阻害して発動できなくするのです。吸血鬼の使うスキルは私も良く知らない異世界のスキルとはいえ、魔法類似技術なので阻害するだけなら十分に効果があるでしょう。



 部屋の天井近くに目立たないように開いていた異空間開口部に魔術阻害空間を展開させると一秒ほどして中空に初老の男が出現して床に落下してきた。何が起こったか分からないんだろう、表情が驚愕に染まっている。



「睡眠5!」



 すかさず落下する初老の男に「睡眠5」を直撃させた。注意深く観察してみるーー意識を失っているようだ。

 ふう。なんとか無力化することができたみたい。さて、どんな奴なのか確認してみよう。ステータス!



名前 アレクセイ・スミノフ 

種族 吸血鬼(男性) 

年齢 2331  体力 G  魔力C

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法B 土魔法B 火魔法B 

   精神操作B 噛みつきB 飛行B

   変身B 血液操作B 霧化B

   怪力B 再生B 鑑定B 種まきB

称号 吸血鬼伯爵



『吸血鬼伯爵か……男爵のジョセフ・ゲオルゲよりも強そうだね』 





 御子柴君は立てこもっていた亜空間ルームから出てくると今までの経緯を簡単に話してくれた。なるほど、そういうことだったんだね。とはいえ、伊集院君が異空間に囚われてしまっているので早急に何とかしなければならない。



『では試してみよう……時空間操作で伊集院君のいる異空間を感知できるかな?』





 伊集院君が囚われている異空間を探知しようと試みるものの。異空間というのは原理的には無限に存在しうるので何らかの特徴なりマーカーが無いと探しきれないんだよね……案の定わからん。



『しょうがないなー。そうするとこの吸血鬼伯爵を起こして交渉。異空間を開放させるしかないかな?』


『アリス様、やむを得ないですね……私に吸血鬼との交渉やらせてくれませんか? なんとか聞き出して見せましょう』


『うん分かった。時間をかけてこの吸血鬼に記憶サルベージをしている余裕もないしね、伊集院君ががまさに死にかけているかもだし。コリンズさん交渉をお願いします。でも念話を使って情報共有と相談しながらってことで』



 私は物質創造でケブラー繊維を作り出して吸血鬼伯爵アレクセイ・スミノフをミノムシのようにグルグル巻きにしていく。




 ……このくらいでいいか。ケブラー繊維は高強度・高耐熱性を持つアラミド繊維で同じ重さの鋼鉄の5倍の強度を持つといわれる。普通なら抜け出すことはできないだろう。




『いちおう交渉役のコリンズさん以外は「隠密」と「M4カービン型個人携行神器の隠蔽障壁」で身を隠しておきますか。では起こしますよ生命体干渉ー治癒!』



 吸血鬼伯爵アレクセイ・スミノフはパッチリと目を開けた。


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