第6話 ペンタゴン

【4日目 午前11時半頃 国防総省】



 アンドルーズ空軍基地に着陸した後は国防総省の車でハイウェイに乗って国防総省ペンタゴンへ。




 そして今アリスは国防総省の廊下を歩いている。アリスの右隣には中央軍司令官コリンズ海兵隊大将。左隣にはアンダーソン海兵隊上等兵。

 前には海兵隊大佐と中佐。後ろには海兵隊中佐が固める。

 更に前方には国防総省からのエスコートである陸軍大佐と空軍中佐が先導する。



 ……凄い大名行列である。パッと見るとコリンズ海兵隊大将の一行にも見えるけど、どこから見ても人畜無害な美少女高校生、赤白のチェックシャツにスキニージーンズ、グレーのパーカー、足元は白いスニーカー、普段着でとても公式訪問している重要人物には見えない別宇宙からの訪問者アリスの一行である。


 コリンズ海兵隊大将は何かとアリスを気にかけて大事に丁寧に扱っているので娘を大切に案内している父親に見えるかもしれない。




 いちおうアリスは正体が分からないように、その存在が拡散しないようにとお願いしていたので式典や儀仗は全て省略されて国防長官執務室に直行している訳である。


 国防長官執務室に近づくとスーツを着たおじさんとおばさんが立っている……はて、誰でしょうか?



「国防長官と副長官ですよ、男性の方が長官です。ミズ・コーディのお迎えに部屋の外に出て待ってたようですね?」



 コリンズ海兵隊大将が教えてくれる。なるほど~これは相当丁重に扱ってくれるつもりだね?


 執務室手前まで歩いてきたところで国防長官が声をかけてくる。



「ミズ・コーディ、初めまして。ようこそ国防総省へ、歓迎致します」



 国防長官が私に握手を求めながら歓迎の挨拶をしてくれる。



「異世界イースのアレキサンドライト帝国から来ましたアリス・コーディです。国防総省の皆様、とりわけマクディール空軍基地の皆様にはお世話になりました。ありがとうございます。

合衆国の事よくわかりませんのでご迷惑かもしれませんがよろしくお願いしますね?」



「とんでもございません。我々の出来ること全部させて頂きますから遠慮なされずにお声を掛けてください。それでは執務室にどうぞ。暖かいお茶がございますから早速一息入れましょう」


 私は国防副長官とも握手をしてから長官執務室に入っていく。







 ……さすが大統領から政治任命される閣僚だけあって素晴らしくフレンドリーでしかもポイントを外さない。立派だね〜と思いながら国防長官との懇談を続けている。副長官、統合参謀本部議長、その他の最高幹部の皆さんも同席されている。



「ところでミズ・コーディ、聞くところご希望としては身分証明書の取得と日本への渡航、そして日本で生活することと聞きました。

つきましては我が国防総省からは中央軍司令官コリンズ海兵隊大将、彼の秘書のアンダーソン海兵隊上等兵そしてマクディール空軍基地司令のブラウン空軍大佐とミズ・コーディが中央軍司令部で最初に声をかけられたベーカー空軍少尉。以上の4名が是非ともミズ・コーディと一緒に日本へ行きたいとうるさくてですね……ご迷惑でなければ在日本米国大使館のスタッフとして派遣しようと思っているのですが。いかがでしょうか?」




「えっ、そうなんですか? コリンズさん、アンダーソンさん、本当に?」


「はい、ミズ・コーディ。私も日本勤務がありましてね? 日本は好きな国でもあるのですがミズ・コーディの人柄は大好きですし異世界との繋がり、架け橋となってみたいのです」


「そうなんですよ、ミズ・コーディと一緒に日本に行ってみたいしお手伝いもしたいんです。お願いします」


「この場にはいませんがブラウン空軍大佐とベーカー空軍少尉も同じように申してました。どうですか?」



 ふーん。ちょっとビックリだけど大好きと言われて悪い気は当然しない。私は好意を示されるのが大好物なので幾らでもウエルカムなのだ。



「ええ、皆さんご希望なのであれば私も顔見知りで安心できます、ありがたいです。よろしかったら是非お願いします」





 国防長官はミズ・コーディから最高の言質を取れたことに内心ガッツポーズを決めた。これで在日大使館にコーディ担当として4人を押し込む件、国務省を押し切れる! だって顔見知りで安心できる4人をお願いしますというミズ・コーディのご希望だからね!





♢♢





 国防長官との会談を終えて引き続き昼食をいただく。レストランとかに行くと目立つので会議室に軽食を運んできて立食で摘むスタイルにしたようだ。色んな料理を摘めて楽しい。


 地球じゃ普通で珍しくないけど、異世界イースではこんな飽食の贅沢な食事スタイルはなかなか無かったからね、アレキサンドライト帝国は貧乏で質素だったし。


 食事を摘まみながらコリンズ中央軍司令官に疑問に思ったことを聞いてみる。



「あの~コリンズさん、日本に行くっていっても今の中央軍司令官職って簡単に辞められないでしょう? 大丈夫なんですか?」


「ええ、おっしゃる通りなんです。しかし私が思うに今回、ミズ・コーディに関連して必要なことについては例外的に処理されるのでは? というのが私の予想です。何せ異世界からの使者というか皇女様ですしね……イースでもたった一人しか居ないという超重要人物ですよね?

これならどんな事情も障害も弾き飛ばして万事OKとなると思ってます」


「なるほどー、合衆国の政治的意思決定プロセスには詳しくないから司令官の仰ることの方が正解かもしれませんねー。コリンズさん達が一緒に日本に来てくれるなら心強いですよ。ところで娘さんって置いて行くんですか?」


「本人が希望すれば連れて行っても良いかと思ってます。16歳だからミズ・コーディと同じです。もし日本に行くようなら仲良くしてやってください」


「もちろんですよ、可愛い女性は大好きですからね」


「ははは、ミズ・コーディの可憐さと美しさは並外れていますよ? 目立ちたくないとのことで残念ですけどその気になれば大スターになれるでしょう……異世界からの親善大使ともなれば大騒ぎになりますよ?」


「えへへ……照れちゃいますね。でも、ちょっと考えがありましてね、将来的にはオープンにすることもあるかもしれないけど当分は秘密で行きます。お願いしますね」


「了解です、任せてください。しっかりとガードしますから」





「そうだ! コリンズさん、アンダーソンさん、ちょっと試しで悪いけど実験に付き合ってもらえるかな?」


「良いですよ、命に関わることではないんでしょう? どうぞどうぞ」


「じゃ最初にアンダーソンさんから。えーと。

私からアンダーソンさんに以下のものを知識転写!



 「アース日本 読み書き会話(普及版)」

 「アース日本 一般常識(簡略版)」

 「アース日本 数学知識(簡略版)」

 「アース日本 科学知識(簡略版)」

 「アース日本 軍事知識(簡略版)」



「アンダーソンさん、スマートフォン持ってたら日本語のサイト表示してみてくれる?」


「ええ? うん、分かったー。〇〇ピディアを出して言語日本語を選択っと…… えええー読める!」


「アンダーソンさん静かに!」





 アンダーソンさんは口をチャックしてそれでも日本語サイトに目を走らせる。



「ミズ・コーディ! なんで読めるようになったの? 私日本語は『すし』位しか知らないのに!」


「私の知識転写の能力ですよ。私がイースでも唯一の特別の人間である理由の一つです。これで在日大使館に行ける理由が増えましたね? 読むだけでなく聞くことも喋ることも出来ますよ、母国語のレベルで」


「うへえー凄すぎるよ、そんなの聞いたことない……でもありがとう。これだけの能力、変な話、今すぐ軍を辞めても食べていけると思う。英語と日本語が母国語レベルで使いこなせるなんて、本当にありがとうございます」


「いやー、そんなに気にしないで……私と一緒に日本に来てくれるんでしょ? よろしくねアンダーソンお姉さん?」


「きゃーアリスちゃん大好きー! ずーっとついていくからー! お姉さんに任せて!」




 アンダーソンさんに抱きしめられた。苦しい……



「……このことは、いちおう秘密にしてね……みんなにバレたら結構騒ぎになると思うから。じゃコリンズさんもやっちゃおう。

私からコリンズさんに以下のものを転写!



 「アース日本 読み書き会話(普及版)」

 「アース日本 一般常識(簡略版)」

 「アース日本 数学知識(簡略版)」

 「アース日本 科学知識(簡略版)」

 「アース日本 軍事知識(簡略版)」



 コリンズさんはアンダーソンさんのスマートフォンを借りてサイトを見ている。



「信じられない……! こんなことがあるのだろうか? これではまるで神のーー」



 コリンズさんは私の顔をじっと見つめる。じっと見つめ返すのもおかしいからニッコリ最高の笑顔を発動してあげる。



 コリンズさんは目をに開いて……ハッと何かに気づいたよな表情をして……ゆっくりと跪き手を組んで目を瞑ったまま呟く。



「……異界の神アリス様、私はあなたを信じて帰依致します。私をお導きください……」


「えええ司令官〜? そうなの? 神さまなの? アリスちゃん神様なんだったら信じるよ!」




 ……わー神様って! 正解だけど! だとするといつものアレが来るかもーー来た!!




……コリンズ大将の発言を聞いていて私の心の奥底のさらに奥 神域から心地良い 喜びの波動が湧き出してきた!



……これが神の本能なのか

本能的に求めている 信者を欲する そして崇めて欲しいという根源的な心の渇き

良いでしょう 答えましょう その信心に




「コリンズ海兵隊大将、アンダーソン海兵隊上等兵。


「……あなた達の言うとおり私は神なのです。異界イースの神であると同時にこの世界アースの神でもあるのです。私の望みは広く遍く、幾多に存在する宇宙において人類の守護者としてあること。あなた達はまだ知らないでしょうが宇宙を跨いで害を成す人類の敵が存在するのです。

そして豊かで幸せな人類社会を作り出すことなのです。


「今後、アース人類の守護に任ずる我が使命を共に果たすなら幾ばくかの恩恵と名ばかりですが私の『使徒』を名乗ることを許しましょう」



「……アリス様 オリバー・コリンズはアリス様の使徒でございます……」


「ミラ・アンダーソンもアリスちゃんの使徒になります?」



「その願い聞き届けました。オリバー・コリンズ、そしてミラ・アンダーソン。あなた達をアースの神である亜神アリスの使徒に任じます。よろしくね」


「イエスマム!」


「任せて?」



名前 オリバー・コリンズ  

種族 人 (男性)

年齢 57  体力 F  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 

称号 合衆国中央軍司令官

   合衆国海兵隊大将

   亜神(時空)アリスの第1使徒



名前 ミラ・アンダーソン  

種族 人 (女性)

年齢 20  体力 F  魔力F

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 

称号 合衆国海兵隊上等兵

   亜神(時空)アリスの第2使徒



 早速地球で使徒を二人も任命してしまった! ……まあいいでしょう。この二人は好きだし日本に一緒に来てくれるってことだし。


 ところで……私たち3人は色々と派手に喋ったり妙な動きを見せたりしたせいで注目されていたようだ。元々私がメインゲストだから当たり前なんだけど、3人で盛り上がって居たから他の皆さんは遠慮してくれたみたい。

 国防長官と副長官が近寄って来た。



「ミス・コーディ、コリンズ司令官やミズ・アンダーソンと盛り上がってますね? どんなお話だったんですか?」


「ああ長官さん、この2人と空軍の2人合わせて5人で日本に行くなら心強いし楽しいねって……私たちが一緒に日本に行けるのは決定ですか? 大使館員の人事は国務省と協議なんでしょうか? 大統領さんにお願いすれば大丈夫ですかね?」


「おっしゃるとおり、国務省との協議となります。でもミズ・コーディから大統領にお願いされれば決まったも同然です。是非お願いしてください」


「分かりました、任せてください。必ず大統領にウンと言ってもらいますよ」 



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