第9話
不思議なもので、おばさんと知り合いになってから、少しばかり、学校生活が楽になった。要は、私の刺々しい雰囲気が少しばかり和らいだということらしい。クラスの中で、一匹狼なのだが、クラスメートから話しかけられることもある。
クラブ活動は御免こうむるが、文章を書くのは苦にならないし、家で書くという約束で、生徒会新聞やクラブ紹介のパンフレット作りの手伝いをするくらいならやるようになった。
まねけなことに、私はおばさんに自己紹介もろくにしていなかった。学校の帰りに庭にいるおばさんを見つけると何となく嬉しくなり、声をかけて、一緒に草引きの真似ごとをしたり、ちゃっかりお茶をよばれたりしていた。
ある時、それに気づき、遅ればせながら名乗った。
「あの、今さらなんですが。私、華岡瑠偉(るい)です。王へんに留める、それから偉人の偉。妙な名前で嫌いなんです。なので、名乗るのが遅くなって。」
と言うと、おばさんはにこにこして、
「お名前教えてくれてありがとう。泉澤久美です。」
と言ってくれた。それから、お茶をよばれるのは座敷から台所にかわった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます