第15話 迫る時5
逃げる事は決まった。
コンテナとかぐやが間接的にやばい物である事も分かった。
そしてかぐやが一応敵に与する意思がない事も確認出来た。
なら後残る問題はただ一つ。
「どうやってコンテナに近づこうか」
「それは私も望むところではありますが今は違うでしょう?」
「えぇー!」
「えぇーじゃありませんよ。まったく……」
今俺は格納庫の物陰に隠れながら人が囲むように大勢集まっているコンテナを見ていた。
「どうしてダメなんだよ?あのまま置いといたら勿体ーーじゃなくて敵に奪われるだけだろう?だったら俺が近づいてコンテナを開けられるか試してもいいじゃないか?」
「まぁ、そうですが今はダメです」
「なんでだよ!?」
試すのもダメなんてそんなの生殺しだ!
せっかく俺が乗れるかもしれないSSがあのコンテナの中にあるかもしれないのに!
「仕方ないでしょう?もしも貴方があそこに行けばコンテナは間違いなく開きます。そうなったらーー」
「え!?俺が行ったらコンテナが開くのか!?じゃあーー」
「落ち着いてください。そして話は最後まで聞いてください。この世の中で一番の馬鹿ですか?」
「うっ、きつい事を言うなぁ」
しかし興奮して話を遮ったのは確かだし今のは俺が悪かった……かもしれない。
罪を認めて落ち込みつつも自分の頬を一回強くつねって痛みでコンテナの事を一回忘れる。
「どうぞ」
「では……もし今コンテナが開いたら貴方が端末を持っていた事が此処の人間達にバレて貴方は裏切り者とされるか敵への生贄とされる危険性があります。だから今は近づかない方がいい」
「うーん、確かにそうなったらまずいな」
そうなったら此処を穏便に逃げる事は叶わなくなってしまう。いくら気に入らない連中でも痛めつけたり殺してしまうのは気乗りはしないし。
だから俺は遺憾だがその場を去る。
さよなら未知のSS、機会が合ったらまた会おう。
そして俺が向かった所は格納庫の裏。
「此処に貴方が言った脱出に使う乗り物があるんですか?」
「そうだ、車やバイクより早くてSSに乗れない俺の最大の移動手段だ」
被せてあったシートを引っ剥がす。
するとどうかかぐやは珍しく驚いたように声を発する。
「これは、ポラリスですか?また古い機体を」
「はは、でも機能は全然問題ないぞ?仕事で稼いだ金の殆どを使って古い部品から新しい部品に交換したりアルマやその爺さんに今日まで整備してもらったりしてるからな」
「その様ですね。スキャンしてそれは確認できました……しかしまさかこの機種の現物を見る日が来ようとは思ってもみませんでした」
「この機体の事知ってんの?」
「えぇ、といってもデータ上でですがね。だからこうして見れた事に驚いています。よかったら機体と端末を接続してもらっていいですか?是非ともこの機体の事をもっと知りたい」
驚いたな、かぐやがここまでポラリスに興味を持つなんて、狙ったわけじゃないが嬉しいならまぁ良かったかな。
「ニヤニヤなんかしてどうかしまたか?」
「いいや、なんでもない。少し待ってくれ、ハッチを開けるから」
そうして俺はポラリスにかぐやを接続した。
かぐやは接続されている間は静かだったが終わってみるとAIらしい抑揚のない雰囲気ではなく幼い子供の様に興奮したものになっていた。
何がそんなに楽しいのかと聞いてはみたがかぐやは内緒ですの一点張りだった。
それから俺の準備を整い、ついにかぐやの言った襲撃時間を迎えた。
〜〜〜〜〜
時間は進み現在時刻7時……襲撃まで後1時間。
アニマルハート基地を囲むようにし夜の闇の中を多数の巨大な影、SSが地響きを立てながら近づいていく。
そんな中、通信でSSパイロットは会話をしていた。
「目標漫画到着まであと少しだ。総員武装の最終確認といつでも使えるようにしておけ。時刻になったら直ぐに始めるからな」
「「「了解」」」
「一応言っておくが腐り切ったクズ傭兵でもSSは保有してるんだ油断するなよ」
「「了解」」
「了解……隊長、2つほど質問をしてもいいでしょうか?」
「許す。どうした?」
「今回であれは動くのでしょうか?」
「……どうだろうな、こればっかりは運としか言いようがない。あのかぐやというAIの御眼鏡に敵う人間はこれまでに1人として居なかったのだからな」
「ですよね……ですが思ったのですが、それならあのかぐやというAIが搭載されてる端末を分解、改造、あるいはシステムを乗っ取るなどすれば済む話ではないのですか?」
「確かにそういう案もあるにはあったがリスクが大き過ぎる事からそれはしない事になっているんだ」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「失敗した場合の様々な損失のリスク、例えばかぐや自体のデータが消滅して永遠にあれが開かずの箱になり何も得られない事、そして……あれが、かぐやが我々を完全に敵と認識した場合、おそらくあれは無人でも動き出す。敵である我々を排除するためにな」
「?動き出すと何かまずいんでしょうか?」
「まずいな。お前はまだ階級が低いからあれについての情報を開示されていなから知らんだろうが、あれの性能は今この星に存在するどんなSSよりも強力で恐ろしい。戦えば間違いなく我々はなす術なく死ぬ」
「そ、そこまで……」
「ああ……それでもう一つの質問はなんだ?」
「……へ?あ!はい!その、毎回邪魔してくる例の奴らの事についてなんですが」
「奴等か……それで、それがなんだ?」
「はい、もし今回も標的の処理中に奴等が邪魔してきた場合の殲滅順位を改めて確認をしとこうかと」
「ふっ、確かにそうだな……全隊!よく聞け!もし標的、アニマルハートの処理中に敵である奴等が介入してきた場合早急に……殺せ。分かったか?」
「「「了解!」」」
一切の躊躇などゴミ箱に捨てて来たような冷酷に敵を処理する気のその者達の駆るSSは二つのモノアイは怪しく赤い光を放ちながら獲物が居る場所を見つめる。
早くその力を解放したいと言わんばかりに。
そして丁度そんな彼等とは反対の方向から砂塵を巻き上げながら2台の大型トラックがアニマルハートへ向かって行くのだがその事にまだ誰も気がついていなかった。
片方は敵と所属不明の何かに挟まれたアニマルハート。
しかし時は止まる事を知らず無情にもかぐやの告げた時刻を迎えた。
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