第34話
「ただいま」
僕は超特急で悠真の家に帰ってきた。
「うお!?いきなり現れるなよ……びっくりするだろうが」
いきなりリビングに現れた僕に対して、悠真は驚きの表情を見せる。
「仕方ないでしょ。空間を割って来たんだから」
「その、空間を割って来たというのが一番わからない」
「なんでわからないのさ!」
こう、空間にふん!と気合で亀裂を入れて、亀裂の中に入って行きたいところにむかってぶーんと来るだけなのに!
「それで?本当に小夜が?」
「あぁ。そうだ。風和も来たし、そろそろ開けていいか」
悠真のマンションのインターホンに表示されているのは何やら大きなバッグを手に持った小夜の姿。
うわ!本当に来ている!
ちなみに、悠真の両親は仕事が忙しくて家に帰ってくる時間が遅く、そもそも家に帰ってくる日があまり多くないので、こうして自由にさせてもらえているのだ。
「はい。今開けるよ」
『ありがとうございます』
悠真がインターホンを操作し、マンションの扉を開けた。
しばらく待っていると、小夜がやってくる。
「まったく。お兄様」
家に入ってきた小夜の顔は不満げだった。
「私が作ってあげた夜ご飯を忘れていくとかという用件ですか」
小夜が不満そうに告げ、テーブルに手に持った大きなバッグを置く。
「あっ!」
僕はハイテンションすぎて、何も考えずに家を飛び出してきてしまったのだ。
……そういえばその時僕は何も持っていなかった。
いつも、僕がどこかに出かけるときは小夜が僕のご飯を用意してくれるのだ。
「……ごめん」
「本当ですよ。反省してくださいね?」
「……うん」
「全く。お兄様は私が作ったもの以外食べちゃいけないんですよ?お兄様の細胞一つ、血液一滴。私のもので、私が面倒を見なくてはいけないのですから」
小夜はそう言って、テーブルに料理を並べていく。
わー!美味しいそう!
「お、おう」
なぜかはわからないけど、悠真が少し引いている。
どうしたのだろうか?
「悠真。あなたには特別にお兄様のための料理を食べていいわ。感謝して食べなさい」
「あぁ、わかっているよ。ありがたく食べさせてもらうよ」
僕達は席につく。
「「「いただきます」」」
僕は小夜が作った食器を手に持ち、小夜が作った箸を使って小夜が作った料理を掴んで口に含む。
うーん!美味しい!
やっぱり小夜の料理は絶品だなぁ。
「美味しいですか?お兄様?」
「うん!美味しいよ!」
「ふふふ。それは良かったです」
小夜が嬉しそうに笑う。
小夜が嬉しそうで良かった。
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