第54話 予選

連合戦技大会は3日かけて行われる。


初日は複数の会場を使用しての予選。

二日目は予選を勝ち抜いた出場者に、シードを加えた64名で準々決勝までの本戦が。

そして最終日に、準決勝と決勝が行なわれる形となっている。


今日はその予選日。

俺は会場の一つで、自分の番号を呼ばれるのを待っていた。

イモ兄妹とエンデは別会場なので、今は一人だ。


「おいおい、こんなガキまで参加してんのかよ」


「やれやれ、ここはガキの遊び場じゃねぇんだぞ」


壁際に立って予選開始を待っていると、ゴツイ男の二人組が俺に絡んで来た。

もちろん知り合いでも何でもない。


「俺に何か用か?」


「テメェみたいなガキは、とっとと失せろつってんだよ」


この手の類の輩は、一体どういう思考の元に関係のない人間に絡んで来るんだろうか?

全く理解不能である。


「俺は15だから、大会の参加規定上問題ない」


この世界の成人は16歳だが、大会自体は15から参加する事が出来た。

なので、他人にどうこう言われる筋合いはない。


「用がそれだけなら、もう話しかけるな」


「何だと、このクソガキ!人が折角忠告してやってるってのに!死にてぇのか!!」


男の一人が声を荒げ、背負っていた巨大な斧に手をかける。

一見一触即発に見える状況だが、全く問題はなかった。

何故なら、相手は本気ではないからだ。


その証拠に、スキルの察知が一切反応していない。


「ほぉ、顔色一つ変えねぇか。随分と肝が据わってるじゃねぇか。ま、その様子なら心配なさそうだな」


男が斧から手を離し、厳つい顔を崩してニッと笑う。


「随分と荒々しい忠告だな」


「ガキは直ぐ、お遊び気分で参加しやがるからな。そういうやつは本番でブルって動けず、大怪我をする事も多い。ま、お前さんにはそんな心配無用だったみたいだが」


真剣を使っての大会である以上、最悪命を落とす事もあり得る。

まあそこまで行かなくとも、相手次第じゃ、真面に動けない状態だと大きな怪我を負わされる可能性は確かに高い。


目の前の二人はそうならない様、忠告と圧をかけて、半端な奴を追い出している様だ。

見た目的には完全に悪人面なのだが、人は見かけによらないとは良くいった物である。


「言っておくが……予選で当たったら、たとえ相手が子供だろうと手加減はしねーからな」


「ま、俺達と当たったら運が無かったと諦めな」


それだけ言うと二人は去っていく。

その向かう先には、俺と同世代位の参加者の姿が見えた。

今度はそっちに手荒な忠告をしに行くつもりなのだろう。


――程なくして予選が始まり、俺は特に躓く事なく本選への出場を決めた。


え?

あの二人はどうなったかって?


俺と当たったのが運の尽きだったとだけ言っておこう。

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