第50話 黄金

「ふぅ……流石に2対1はきついか」


イモ兄妹との手合わせ。

エリクシルクラスになってどの程度強くなったのかを試すための物だったが、2人同時に相手にしたら思いっきりやられてしまった。


「ふふ。初めてですね。私達が師匠から一本取ったの」


「だが師匠がブレイブオーラを使ってれば、結果は変わっていたはずだ」


「ははは、そりゃどうかな。お前らだって瞬間強化ブースト系を使ってないだろ?」


2人の扱うスキルよりも、俺のブレイブオーラの方が強力ではある。

何せ勇者のスキルだからな。

だがそれを考慮したとしても、勝てるかどうかは結構キワドイ所だ。


それぐらい二人は強くなっていた。

頼もしい限りである。


「それにしても……エンデさんなかなか戻って来ませんね。もう丸一日以上経ってますけど、大丈夫でしょうか?」


「大丈夫な訳はないだろうけど、俺達がしてやれる事はないからなぁ……」


ダンジョンは既に脱出済みだ。

あのボス部屋の先は深層に繋がっており、俺達はレベル上げより脱出を優先してさっさと外に出ていた。


エンデの事情があったからだ。

仲間達の訃報をその親族へと伝え、遺品を渡すという。

流石にそれは後回しに出来ないからな。


全滅したメンバーの家族なんかは全員この街――パズンに住んでいるそうで、彼女は脱出して直ぐに伝えに向かっていた。

一応俺も付いて行こうかと言ったのだが、自分でケジメを付けなければならない事だからと、エンデには断られている。


「あ、エンデさん!」


噂をすればなんとやら。

エンデが此方へとやって来るのが見えた。

その顔に深い疲労の色が浮かんでいるのが、遠くからでもハッキリと分かる。


「すいません。皆のお葬式にも出てたので……」


「気にしなくていいさ。疲れてるみたいだし、もう2、3日休んでてくれていいよ」


ダンジョンでのレベル上げは、エンデが元気になってからでいいだろう。

さっさとレベル100にまで上げたい所ではあったが、まあ無理をさせる訳にもいかないからな。


因みにレベル100と言うのは、エリクシル・黄金の使用条件の一つとなっている。

効果は転移・召喚・分身の3種類があり、レベル100で使える様になるのは転移だけだ。

召喚と分身はそれぞれ120と150で使えるようになる。


転移は一度でも行った事のある場所、見える範囲ならどこにでも移動する事が出来。仲間も一緒に運べる超便利なスキルだ。

但しディレイが3分ほどあるため、戦闘でバンバン使って相手をする様な使い方は出来ない。


「すいません。それじゃあ、もう1日だけ」


「しっかり休んでくれ」


「はい」


「さて、それじゃあもう一本いくか」


エンデを見送り、俺達は訓練を再開する。


「次はブースト系ありで勝負だ」


「分かりました」


「次は勝たせて貰う」


再戦では、何とか俺が二人に勝利する。

やはりブレイブオーラは強烈だ。

流石勇者のスキルだけはある。

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