第23話 錬成

「筋力10%アップか。まあまあだな」


アイスソードについた2つ目のオプションは筋力アップだった。

これもまた外れではないが、大当たりとも言い難い。


……まあ触媒をケチった訳だから、こんなもんだろう。


「筋力が10%も上がるんですか!?凄いじゃないですか!」


「可もなく不可もなくって所だよ」


精錬は扱う触媒次第で、効果のランクがある程度左右される。

今使ったのは純度の低い魔石だったため、上昇量が今一だ。

強力な物なら、30%以上上がったりするからな。


因みに、武器のステータス上昇効果はマスタリーなどのスキルとは別物扱いだ。

そのため、このアイスソードを装備するとスキル系で補正の付いた筋力ステータスがそこから丸々10%上がる事になる。


「一応付けなおしも出来るけど、どうする?高い触媒は使ってやれないから、これ以上の劇的な効果は難しいと思うが」


精錬は製作と違い、その気になればいくらでも付けなおしが可能だった。

まあ製作も作り直せば効果の付けなおしは出来るんだが、金属以外でそれをやると素材が脆くなってしまうという欠点がある。

いくらいいオプションが付いても、武器自体が脆くなっては意味がないだろう。


「いやいやいや!これで十分ですよ!」


「そうか。じゃ」


俺は袋から既製品の鞘を取り出し、アイスソードをそれに収めてベニイモに渡す。

彼女はそれを両手で仰々しく受け取り、自分の腰のベルトについている留め具に嵌め込んだ。


「師匠。ちょっと振って来てもいいですか」


「おう。俺は他の武器も作るから」


訓練に付き合ってやりたい所だが、俺にはやる事がある。

袋から手に入れたアイスドラゴンの逆鱗を取り出す。

全部で10枚だ。


――これを全て武器にする。


出来れば大当たりが出てくれれば嬉しいんだが、まあダメならタロイモに一本やって残りは全部売り払うだけだ。

特殊な効果の付いているドラゴンの鱗を使った武器なら、かなりの高値で売れるからな。


「金は山ほど必要だ」


強力な効果を付けるための、精錬用の純度の高い魔石。

ミスリル以上の硬度を持つ、稀少な金属であるアダマンタイト。


どちらも超が付くほど高額な物だが、俺にはその両方が必要だった。

強力な武具を揃えるために。


理想は伝説の金属とも言われるオリハルコンを手に入れ、それで装備を作る事だが、まあ流石にそれは難しいだろう。

遥か昔にとれた物が王家の至宝なんかに使われていて、一般には全く流通していないからだ。


「レベルを上げ。金を溜めつつ素材集め。そして魔王を倒すための強力な装備を作る。やる事はいっぱいだ」


目標があるのは良い。

お陰で余計な事を考えずに済むからな。


「さて、気合入れるか」


俺は頭を空っぽにし、引き続きアイスソードの製作に取り掛かかる。

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