第22話 武器オプション
ブラックスミスのスキルである武具製作の最大の利点は、製作した装備にオプションが付く事だった。
通常、職人が鉄の剣を作ってもそれは只の剣にしかならない。
どれ程の技巧を凝らして優れた物を作ったとしても、それはどこまで行っても只の鉄の剣だ。
だが武具製作スキルを習得した者が剣を作れば、例えそれが駄作であったとしても、一定確率で切れ味の向上や耐久力アップ等の特殊効果が付加される。
まあ武具製作のスキルには、製作技術向上のマスタリー的効果もあるので、どうしようもないダメな物を作る心配自体はないが。
一応短期間とは言え、俺は鍛冶の修練も収めてるしな。
「綺麗……」
透き通るような青い剣の刀身を見て、ベニイモが呟く。
何だかんだで彼女も女の子なので、綺麗な物が好きな様だ。
「命名するなら、アイスソードって所か」
アイスドラゴンの逆鱗で作った剣は、魔力や気力を込めると冷気が纏う効果を持っている。
ベニイモが持っている炎の剣と真逆の性質の武器だ。
ただし、これは製作によって付加された効果ではない。
素材が元々持つ特殊な性質だ。
オプションはこれとは別にある。
「ついたオプションは、攻撃スキルのスラッシュだな」
スラッシュは攻撃の威力が1,5倍になる、戦士のスキルだ。
武器に付いた攻撃スキルは、気力を消費せず使えるというメリットがある。
また通常のスキル同様ディレイは存在するが、習得した物とは別扱いなので、同じスキルを2連打する事も可能だった。
なので、攻撃スキル系は全般的に優秀と言えるだろう。
とは言え――
「まあ外れじゃないけど、当たりとも言い難い」
「何言ってるんですか!?装備に攻撃スキルが付くなんて凄すぎますよ!!」
「スキルって言っても、下位クラスだからなぁ。出来れば最上級以上のスキルが欲しい所だ」
ベニイモのクラス、武王の渾身の一撃なら瞬間的に5倍の破壊力が出せる。
まあその分
理想で言うなら、勇者最強のスキルであるギガストライクなんだが……
残念ながら、勇者の攻撃スキルはオプションで付与する事が出来ない。
まあ伝説級はダメって事だ。
「オプションを自由に選べれば最高なんだがな」
付与される効果は基本ランダムだ。
求める水準の物を得ようとしたら、相当数の武具を製作する事になるだろう。
気の遠くなる話である。
まあだがこれでも、通常のブラックスミスに比べればましな方ではあるが……
何故なら、オプションの付与される確率はステータス依存だからだ。
製作系のスキルを取れる以外、ブラックスミスは市民と同等のステータス補正しかない。
そのため、製作時の付与率は30%も行けばいい方だった。
それに比べてスキルマスターである俺は、大量のスキルでステータスを盛る事が出来ている。
お陰で付与率は100%に達していた。
「まあこれはベニイモにやるよ」
「えっ!いいんですか!?」
「ああ、俺は使わねーから」
大量に物を詰める袋があるとは言え、戦闘中にその出し入れは難しい。
そのため、同時に扱えるのは腰に差して装備できる2-3本だけだ。
当然スラッシュ程度ではその候補には入らないので、この剣はベニイモに譲ってやる事にする。
「ありがとうございます!実はSPの都合で、私スラッシュはまだ取れてないんです。大事にしますね」
「ちょっと待ってろ。今オプションをもう一個つけるから」
「へ?もう一個……ですか?」
「ああ。ブラックスミスには、製作とは別にオプションを付ける武具錬成ってスキルがあるのさ」
例の大容量袋から、スキルの触媒となる物を取り出す。
それを台の上に置いた剣の上に置き、俺は手にした槌を叩きつけた。
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