【別府・3】針鼠ではない。針狐?

 なんかとんでもない世界線が出来あがりつつあり、

 大輔チックになりつつあります。

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 地図です

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 ◇ ◇ ◇ ◇


 1559年4月下旬

 武蔵国別府城東方10町(1000m)

 安田長秀

(揚北衆の一人。いいおっさんでしぶとい)



 なんだ? 

 あの陣形。初めて見る。


 別府城までの道を塞ぐには1000の軍勢では無理なのは分かる。通れる箇所の幅が優に半里(2km)はある。


 そこに如何なる陣形を取ってもこちらの6000以上もの軍勢で囲まれれば壊滅しよう。


 その中央に1000の兵が一つの所に固まって菱形?を作っている。

 四辺は50間(100m)というところか。


 驚いたことに槍を一つも持っておらぬ。儂なら長柄で針山のように廻らして騎馬の突撃すら防げる備えを作るであろう。


 それが最も効果がある筈じゃ。

 だがあの大胡の事。

 鉄砲を大量に保有している筈。


 先の忍城北方における対戦でも我が揚北衆の主力が配置されていた左翼を壊乱させた。(中条)藤資の奴が難を逃れていなかったら足軽が逃げ散っていて戦どころではなかったであろう。


 騎馬での中央突破。

 言うのは容易い。

 だが長柄の隊列を突破できる騎馬などいない。


 それを手筒で撃ち崩してからの突進で瞬く間に隊列に穴が開いたという。

 戦というものは陣が崩されれば仕舞。

 それで士気が崩壊する。


 よって備えを工夫し、陣形を敵に合わせて変化させるのだ。


 しかし……

 あの陣形に対してはどの陣形で立ち向かうのか?

 全方位から竹束を抱えて突っ込むしかあるまい。


 陣形などない。

 あるとすればできるだけ陣形の角に攻撃を集中させる事だ。


 まずはそれでいくか。


 儂は先鋒の内、600を選りすぐり二手に分け、こちらから攻撃できる左右の角に向かわせる。


 向こう側は(中条)藤資が火の出るような突き崩しをするであろう。

 御本城さまに顔向けできんと言っていたからな。


 問題はこの時期取れる青竹はまだ若く細いが故、重い。

 どれだけ防げるか、またどれだけ素早く動けるかで被害が変わろう。


 そこだけが心配じゃ。


 まずこちらは弓兵を前へ出し、矢合わせといこう。

 尤も大胡はめったに弓を使わぬというが。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 揚北衆先鋒足軽

 武平



 この若竹は思ったより重い。

 切り取ったばかりの竹は重いのは当たり前だが細いから数を使う。

 益々重い。

 高さ1間の竹束を2人で斜めに抱えて、その後ろに2人の手槍を持った奴が続く。

 物頭の指図だとこの先の大胡の陣、その角の部分に5間(10m)まで近寄り突撃すると。


 5間かぁ。

 長弓なら桶側胴の全面でも突き刺さるな。


 大胡は長柄を持っていないのが救いだが。兎に角、ここならば鉄砲の的になりにくいだろう。


 あと25間か?


 あと少しだ。

 先鋒の殆どは俺たちが突入した後の混乱に乗じて突撃する予定だ。


 竹束は全部で5つ。

 あと5つが囮で左右の辺を進んでいる。


 突然。爆発音!


 それと共に右を進んでいたお味方4名が悲鳴も上げられないまま竹束と一緒に後方へ飛ばされて行った!!


 何が起きた?

 噂に聞く大筒か?

 早く近づかねばこっちもやられる!


 急いだために気づかなかった。


 足に何かが刺さった。

 見ると棘の付いた鉄の線だ。

 あちこちに張り巡らされているらしい。


 動きが止まった所に大胡の鉄砲が襲い掛かる!

 後ろの2人がもがき苦しみながら倒れた。

 これはまずい。


「引け! お味方の所まで走れ! 竹束を捨てよ!」


 物頭の叫びが、仏様のように聞こえる。

 しかし帰り着けるであろうか。

 あの30間もの道のりを鉄砲の的となり走り抜ける事……


 ◇ ◇ ◇ ◇


 安田長秀



 先鋒の竹束3つが大筒で破壊された。

 2つは放棄されて8名が戻ろうとしたが鉄砲で蜂の巣にされた。大筒を野戦で使えるようになったのか?


 このまま攻めあぐねては敵の本隊が来る。

 できることは何でもしよう。

 しかしもうあの大筒への突撃はまずいであろう。


 足元に何かが張り巡らされているらしい。そこへ突撃などもっての外。那和での大虐殺はその大筒によるものだ。

 如何なる精強の兵といえども近寄れぬとなれば一方的に虐殺される。


 北条は竹束を積み上げたというが、その方法で行くか。


 しかしその竹束が足りん。

 飛砲などというものもない。


 それでは一カ所に集中するとしてもなにか一方的に攻撃できるものをそこへ設置せねば。



 儂は御本城様へ、あるものを送っていただくことにした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 本庄実乃さねより



 やはり手ごわいな。

 大胡。


 古今東西の戦を変革していく。あの鉄砲のせいでもあるが、それを支える製鉄産業、そして商業。

 更には技術力も群を抜いている。既にこの世のものとも思えぬ。


 その最たるもの。

 それが竜騎兵だろう。


 その軍勢の作る菱形の陣に竹束だけで突っ込むのは予想していたらしい。


 たとえ宇佐美殿の別動隊へ集中して持たせた鉄砲1000丁があろうとも、多分あの所狭しと並んでいる矢盾に阻まれていたのであろうな。


 先程先鋒の安田長秀殿から申し出があった火炎壺と印地打ち用の紐。

 それを運ぶ猫車を送り届けた。

 そしてこれらすべてが大胡製だ!


 どれだけの差が出来ているのか?

 これをどのように埋めればよい?


 既に大胡とは戦を始めてしまった。今暫し技術や知識を盗み取るべきであった。


 御本城様の短気が災いした。必要な時はいつでも堪えることが出来るお方であるのに、此度はなぜ故?


 そうであった。

 政賢殿が妬ましいのか。


 これ以上、風上において教えを乞う事が出来なんだか。

 自信を通り越して傲慢になられてしまわれた。


 天狗の鼻が折れてしまうという事か。

 我らがお止めせねばならなんだ。


 これから間に合うか?

 とにかく、ここは大損害を被る前にある程度の被害で収め、撤退が宜しかろう。

 御本城様が撤退を望まぬならば儂が詰め腹を切ってでも引かせる!


 取り敢えず、火炎壺と印地打ちの攻撃が効くかを試すのみにしよう。

 それからお諫め致す。




 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸



 針鼠は勿論日本には居ませぬ。


 現在、騎兵用野戦砲は4門だけです。機動力に耐えられるような砲架はまだ作れません。だからよく壊れます。


 日本における方陣の使用例が見つかりませんでした。よってこのような感じとなります。



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