花言葉 夏椿
夏椿の花言葉は『はかない美しさ』『愛らしさ』です。この言葉を知った瞬間、高校生だった頃を思い出しました。
今日は、この花言葉で思い出した、私の不思議な体験を話したいと思います。神話もおまじないもお休みです。
当時、進学校に通っていた私は、その高校恒例行事である『春の勉強合宿』に参加しました。大半の学生は嫌々ながらも、朝から晩まで缶詰状態で勉強する数日間です。
勉強には体力も必要だ!と言われ、早朝にはラジオ体操からのジョギングの流れでした。
走るのが嫌いな私は、後ろから怒られない程度にたらたらついていきました。まぁ、体力有り余る男子は林の中を爆走してましたけどね。
そんなジョギングの折り返し地点は、ある神社でした。
朝日の差し込む参道の入り口に、愛らしい女の子がいました。真っ白な子でした。服装は着物だったような気もしますが、とにかく白くて綺麗な子でした。
その小さな手で、参道に落ちている夏椿の花をいくつもいくつも拾っているんです。
何をしてるんだろうと思いながらも、声をかけずにいた私はクラスメイトに声をかけられました。
何をしてるの、とか、戻るよ、とかそんな感じだったと思います。
参道から目を逸らしたのは、その一瞬です。
再びそちらを見ると、女の子も夏椿の花もなくなっていました。
そこにあるのは青い葉を繁らす植木です。
どうしたのと声をかけられても、何と言っていいか分からずに、私は皆と一緒に合宿所に戻ったんですけどね。
この体験の時期は春先。
夏椿が咲いているはずもないんですよ。しかも、合宿所は山の中の研修会館。コンビニすらないような場所で、近くに民家があった記憶もありません。
女の子は、何だったのか。そう考えると、ちょっとぞっとしますか?
でも、私はその時、欠片も怖くなかったんです。今でも、怖いとは思いません。
女の子は本当に真っ白で綺麗でした。
思い返せば、白いと言うのも感覚的な印象だったのかも。とにかく、朝の清々しい空気と光が差し込む景色の中で、女の子は静かに白い夏椿の花を拾っていただけなんです。
まさに、はかない美しさでした。
その頃は、夏椿の花言葉なんて知らなかったんですけどね。
あの夏以来、その神社には行っていないのですが、白い女の子は今年も夏椿の花を拾ったのでしょうか。もしも、あの子に声をかけたら……と、夏椿を見るとふと思うこともあります。
世の中には、不思議なことがあるものですね。
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