【従兄弟の死】
眠れないまま朝を迎えた私の部屋に祖母の菊江が来た時、時刻は午前7時を過ぎていた。
「今日は
「わかった・・・・でも──」
「恭次郎のこと?」
「そう・・・・本当に? 本当に恭次郎君は──」
「死にましたよ」
「・・・・」
早朝の父からの報告で知らされていたことではあったけれど、万が一、もしかしたら間違いだったという可能性があれば・・・・という気持ちで聞いてはみたものの、やはり答えは無情だった。
もとより父が嘘をつく理由はまったく無い。
それでも確かめてみたかった私は溜め息を
「恭次郎君が無礼を働いたってどういうこと? お父さんから聞いたけど・・・・」
核心に触れる問いが口をついて出る。
顔を上げて祖母を見ると、一瞬、躊躇の表情を見せたあと静かに言った。
「女性をね、連れてきたんですよ」
「えっ?! ここに?」
「そう」
「え、だってここには外の人は──」
「そう、いかなる理由があってもここ
「え、裏鬼門? まさか、あの裏門から外の人を入れたの?」
「まったく・・・・私があれほど言い聞かせたのに・・・・おのろし様に申し訳が立ちません」
そう言うと祖母は怒りの滲む目で空間を睨み、左右に首を降った。
「でも・・・・恭次郎君は何でそんなことを・・・・」
「魔が入り込む隙があったんでしょう。カメラに映る相手の女性からは大層な妖気が出ていましたからね」
「妖気?」
「取り囲まれかかるとはまったく情けない」
「妖気・・・・」
特に北東の表鬼門と南西の裏鬼門の所には
そこに恭次郎と女性が映っているという。
「でも、カメラがあることは皆が知ってることだし恭次郎君もちゃんと知ってたはずなのに何で・・・・」
「隙があったんですよ、隙が。どうしようもない」
肩で溜め息を
ただ、生来の性格の厳しさが怒りとして表に表れた時は、その美しさが恐怖感を増幅させる。
美が怒りに迫力を与えてしまうのだ。
私はそれが子供の頃から怖かった。
そして今、目の前にいる祖母の怒りを滲ませた眼差しはやはり怖い。
「恭次郎君は、その・・・・おのろし様に──」
「そこまで!」
「え?」
「恭次郎の話はもう語りません。それよりも──」
「?」
「これから一族総出でやらなければならないことがあります」
「・・・・何を?」
「おのろし様にお
「お鎮まり・・・・私は? 私も何かするの?」
「夕刻から
「えっ、
敷地の西の位置にある池の中央にある真っ赤な
年に数回、蔵の中の清浄を行う際に〈おのろし様〉に
そこに?
私が入る?
「だってあそこは──」
「地が壊れる」
「え?」
「お
壊れる──それはかつて私が幼少期に祖母の口から出た言葉。
そして今の私をゾッとさせるに十分すぎる響きを放っていた。
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