エピローグ 

「ということがあったのよ」

 アリサはスマホを片手にベッドで寝転んでいる。ここは彼女が一人暮らしをする立川市内のアパート。


 眩い光に包まれた後、気が付くとアリサは立川競輪場のベンチに横たわった状態でいた。そこは彼女が知っている立川競輪場。意識を取り戻したとき、場外発売が行われていたFⅠ・西日本カップの初日特選が始まった直後だった。

 周囲を確認したが、競輪の神様はもういなかった。ボーっとする頭で立ち上がったアリサ。彼女はそのまま帰路へ就いた。


 そして、帰宅後、今日の出来事を妹の見事みことへ電話で話していた。

「不思議な話でしょう?」

『うん、そうだね』

 スマホの向こうから聞こえる妹の声は、正直興味がなさそうな感じだった。というよりアリサの話を信じていない雰囲気であった。

「ちょっと、見事みことちゃん!お姉ちゃんは嘘なんて吐いてないわよ!本当に、異世界へ行っていたんだもん!」

『昼間からビールを飲んで場外発売に行ってたから、そんなことになったんじゃないの?もう、わかったから。私、宿題しないといけないから、続きはウェブでいい?』

 妹から適当にあしらわれてしまうアリサ。

「もう!見事みことちゃんのおバカ!そんなことを言うなら、もう知らない!」

 半ば逆切れ状態で電話を切ったアリサ。


 電話を切り溜息を吐くアリサ。不思議で、恐い体験であったが、これだけは言える。並行世界でも、やはり競輪は面白い。

「さっ、シャワーでも浴びますか・・・」

 スマホをベッドに置いて、アリサは浴室へと向かった。



        『競輪の神様と非実在の競輪予想師』 完


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