第223話 葵さんとのクリスマスデート③
「ゆうくん、今日はすっごく楽しかったね。」
乾いた服を着ながら手をつないだ俺たちは、水族館を後にする。目の前には海に向かって沈んでいく夕日が、そしてこれから俺たちが向かっていく海と反対側の空には、綺麗な月が薄~く見えていた。
「そうだね。今日はいつもと違って、服が濡れるなんてこともなかったから、最後まで楽しむことができたよ。」
俺はそう、少しだけ皮肉を込めて言った。……今までのアレがあったしね。
「……ゆうくん、今まではごめんね。私、自分のことばっかりで。」
俺だけでなく、あおいにも、俺に伝えたいことがあったのだろう。
そう思った俺は、黙って、葵の目をまっすぐに見つめる。
「私ね、ゆうくんが、渚とか、優香とか、日鞠ちゃんと遊ぶようになってから気づいたの。『ああ、今まで私、ゆうくんにかなり支えてもらってたんだな。ゆうくんのやさしさに、今まで甘え続けていたんだな』って。……そういう想いもあったから、私、この前あんなことになっちゃったんだ。本当にあの時は……というか昨日は、あんなに迷惑をかけてしまってごめんなさい。」
「いや、全然大丈夫だよ。……あおいを心配させちゃったのは俺だし。」
これに関しては、マジで俺が悪い。別に、あおいに頼られるのが嫌だったわけでもないし、むしろ、
「俺、あおいに頼られるの、嫌いじゃないんだよ。むしろ大好きなんだ。」
そう、俺はあおいに頼られるのが大好きだ。
……だって、
「好きな人に頼ってもらえるのって、すっごくうれしいじゃん。信頼されてるんだな~って思えるし。だから別に、あおいは何も悪くない。」
そう、そうなんだ。悪いのは全部俺、あおいのことを心配させてしまった俺が、全面的に悪いのだ。
「でも、渚を自分の家に戻させたのって、ゆうくんでしょ?私が嫌な気持ちになると思って。」
……。あれ?そう言えば昨日帰ったら、渚ちゃんがいなかったような……。
「い、いや、別に俺は何も知らないんだけれど。」
「……え⁉ゆうくんじゃないの⁉」
葵はめちゃくちゃ驚いていた。
「うん。多分勝手に、自分の家に帰ったんだと思う。理由はわからないけど。」
「……あの渚が、そんなことをするなんて。……ま、まあ明日、5人で延期になったパーティをする予定なんだから、その時に聞けばいいよね。」
うん、そうだ。いつもの5人でパーティをするときに聞けばいい。
……ていうかそろそろ、男の人数も増やしてもらえませんかね?男:女が1:4って、かなりきついんですけど。
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