第215話 みんな、ありがとう。

「おいし~」


日鞠ちゃんと、優香さんが作ったかぼちゃ料理を食べた俺は、思わずそう言ってしまった。

……え⁉あのあと何があったかって?……それについては思い出したくもないので、聞かないで頂けると幸いです。はい。

あまりに長い間、俺と葵がこの部屋から消えていたので、大半の料理は机の上から消えてしまっていた。でも、何も考えずに食べる優香さんや渚ちゃんのことを日鞠ちゃんが止めてくれていたおかげで、お腹を膨らますには十分な量の料理がまだ残っていた。

……優香さんがそっち側の人だったなんて。ていうか、よく2人は朝からそんなに食べられるね⁉︎

そう、グラタンなどが並んでいるため、昼食、もしくは夕食に見えかねないのだが今は午前9時。まだ朝だ。


「ゆうき先輩。今日のイベント、楽しかったですか?」


夢中で食べている女子3人を笑顔で見ていた日鞠ちゃんがそう俺に聞いてくる。


「うん。すっごく楽しかったよ。……さすがに最初はびっくりしたけどね。」


『楽しかったor楽しくない』その二択で聞かれたら、俺は楽しいと答える。たしかに、最初はびっくりした。驚いたし大変だった。でも、それでも俺はたのしかった。久しぶりに4人で遊べて楽しかった。ハロウィンなんて、心の底から忘れていたものだから、すっごくたのしめた。


「ふぅ。よかった〜。……知ってますか?先輩。私たち、このイベント、昨日企画したんですよ?」


昨日企画して、今日これだけの内容のものをやるって……3人とも、将来イベント企画をする会社に入れば、すごいことができるんじゃない⁉︎


「先輩に、ゆうき先輩に私たち、普段迷惑をかけちゃっているんで。」


4人のことを、日鞠ちゃんたちのことを迷惑だと思ったことなんて一度もない。でも、ここで話の腰を折る必要などない。だから俺は


「ありがとう、日鞠ちゃん。」


そう言って、この可愛い後輩の頭を優しく撫でるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る