第120話 ふぅ。そろそろ……

「そろそろ、年貢の納め時なのかもな。」


夕日に照らされた俺は、ブランコに乗りながらそんなことを呟く。この、『年貢の納め時』と言う言葉は、葵への恋心に対しての言葉でもあり、自分の人生に対しての言葉でもある。今までは、自分にも、他人にもこの気持ちを隠してきたけれど、そろそろそれも、限界だ。

え⁉なんで急にそんなこと言いだすのかって?

……知ってる?人間、自分の気持ちを都合の良いように書き換えるのはすっごい簡単なんだよ?……自分の気持ちを書き換えるのが楽ならば、腹の中まで理解し合えるわけではない他人に、自分の気持ちを隠し続けることはもっと簡単なわけで……。大輝以外の人は、この俺の気持ちを知らない。今までは、まだ崖っぷちのところで耐えていたけど……さすがに、テストで10教科中、5教科で赤点とったらねえ……さすがに

そろそろ、このくだらない人生に終焉という名のプレゼントを送ろうかな?どうせ生きてたって、なんの役にも立たないし。

とか考えちゃうでしょう。葵と、優香さんをだましてもいるわけなんだし……。

そう思った瞬間だった。


「ふぅ……。ここにいましたか。」


そう言って日鞠ちゃんが現れた。


「先輩、お兄ちゃんから、先輩についてのこととか、いろいろ聞きました。『もしかしたら、人生に区切りをつけようとしているかもしれない。』って。……その、もし私でよければ、話を聞かせてもらえませんか?話がまとまっていなくても、最後までちゃんと聞きますので。……まあ、そのあと私が励ますのか、それともきつい言葉を浴びせることになるのかは、話が終わってみないと、わかりませんけどね。」


そう言った日鞠ちゃんに、俺はこんなふうに思うようになった理由。そして、なぜ今まで、自分や(大輝以外の)他人にこの気持ちを隠していたのかを話し始めた。

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