第119話 あれ?俺、昨日優香さんのこと振ったんだよね⁉
葵と二人、いつものように学校に登校すると……
「おっはよ~、ゆ~きくん‼」
と、勢いよく優香さんが抱き着いてきた。……どういう状況⁉
俺が、昨日振ったばかりの相手に抱き着かれているという今の状況に困惑していると、
「ちょっと優香⁉いきなり何してるのよ‼」
と、葵が優香さんにそう言った。……うん、本当に葵の言う通りだよね。今回ばかりは……。
「え~、別によくな~い?大好きな人に抱き着くくらい。……だって、本当の彼女がいるわけでもないんだし‼」
優香さんが俺を解放して、葵と話し始めた瞬間、俺は急いで自分の席のところに走って行って、椅子に座った。……さすがにこうなったら、抱き着いてくるなんてこと、
できないでしょ?
優香さんに抱き着かれないように、葵を怒らせてしまわないように、俺はそう対策を取ったのだが、優香さんは、俺の創造の斜め上を行く行動をしてきた。
「あの、優香さん。なんで膝の上に座ってきているんですか?……ていうか俺、昨日優香さんのこと、振ったよね⁉あれからまだ、24時間もたってないのに、こんなこと、出来るものなの⁉」
うん、これはさすがに、切り替えが早すぎない⁉そう思った俺は、そう言った。
「……だって私、ここ数日のゆうきくんとの楽しかった思い出に縋り付いたりゆうきくんに対する愛を、憎しみに変えたりしたくないんだもん‼」
葵さんは、膝の上に乗ったまま、俺の方に顔を向けると、そう話し始めた。……顔が近すぎて、すっごく緊張する。
「私ね、ゆうきくんに恋をして、悩むこともあったけど、ううん、悩むことばかりだったけれどそれでも試行錯誤をしながら、ゆうきくんと近づいて行って……。そんなことを繰り返す時間がすっごく楽しかったの。まあ、辛くもあったけどね。でも、
頑張って自分の気持ちを伝えていけば、その思いがどんどんゆうきくんに伝わっている感じがした。
まあ、結局ふられちゃったけどねか。それでも、
そのおかげで、たくさんの思い出を作れた。楽しくて、この世にあるどんなものよりも価値のある思い出を作ることができた。私は、たとえ振られたとしても、これからも、ゆうきくんと、たのしいお思い出を、作っていきたいの。でも、もしここで、ゆうきくんに振られたことを受け入れて、何もアピールしないようになったら、ゆうきくんと関わらなくなったらそんなことはできない。私にできるのは、楽しかった思い出に縋ることしかできなくなるの。
もし、そんなことを続けていたら、きっとこのゆうきくんに対する愛の気持ちも、いつかゆうきくんを憎む気持ちに変わって行っちゃう。私はそれが嫌なの。これからも、ゆうきくんと楽しい思い出を作っていきたいし、一生懸命育てたゆうきくんへの愛を憎みには変えたくない。」
優香さんはそう言って、一度息を吸うと、
「ゆうきくん‼︎覚悟しててね?私、たとえゆうきくんが誰かと付き合ったとしても、結婚式をあげるその日まで、絶対にゆうきくんのことを諦めないから‼︎」
教室中に声を響かせて、優香さんはそう宣言するのだった。
……本当に、優香さんって強い人だな。
優香さんのこの宣言を聞いて、俺はそう思った。
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