第118話 優香さんの告白。
「ゆうきくん、大切な話があるんだけど……。」
花火を見ていると、突然優香さんがそんなことを言い始めた。
「どうしたの?どんなことでも俺は大丈夫だから……優香さんが話したいなら話してみて。」
深刻そうな表情を優香さんはしていたので、俺はそう言った。
……大事な話ってなんなんだろう。
そんなことを考えていると、優香さんは、まっすぐと俺の目を見つめて、
「ゆうきくん。私、神保優香は、ずっとゆうきくんのことが好きでした。」
色とりどりの花火をバックに優香さんはそう語り始めた。
「どんな人にも、優しくて、何事にも一生懸命取り組んでいる姿がかっこよくて……。」
……。
「そんなゆうきくんのことが、中学生のころから、ずっと好きでした‼だから、だから私と、付き合ってくれませんか?私と一緒に、人生を歩んで行ってくれませんか?」
……。
しばらくの間、俺は声を出すことができなかった。それでも、それでもここで、勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えてくれた優香さんに、返事をしないのは失礼だと思った俺は優香さんにこう言った。
「ごめん……。俺は優香さんの気持ちに、答えることはできない。」
優香さんが、俺のことを好きでいてくれたのは、すっごくうれしい。……でも、でも俺に、優香さんの気持ちにこたえることはできない。だって、
「だって俺は、葵のことが好きなんだから……。優香さん、本当にごめん。」
こんな言葉しか、優香さんに伝えることができないのなら、今ここで、返事などしなければよかった。また後で、しっかり頭を整理してから話せばよかった。
そう思ったものの、一度口から出てきた言葉はもう戻すことができない。
優香さんは、
「そっか……。ゆうきくん、急にこんなこと言っちゃってごめんね。」
そう言って走り去る優香さんの目には、涙が浮かんでいた。
優香さんがいなくなった公園には、花火の音も、もう響き渡っていなかった。
どうやら、夜空に咲いていた大輪の花は、もう枯れてしまったようだ。静寂に包まれた公園に一人、取り残った俺のことを、夜空に輝く月と、木の陰に潜んでいた一人の美少女が、見ていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます