15.ステータス交換

フラノ村に迎え入れられたおれはしばらくの間客人という扱いとなった。バルトの家で厄介になる。


「しまった、そうか家を建てるとなると森に入らないといけないな」

「え? なにか問題?」


そう言えば、今は難しい時期だとか。


「もしかして戦争か?」

「はは、おれたちがここに居るのは戦争が終わったからだよ」

「あ、そうなの?」


バルトは元傭兵。

この村に住むようになったのは戦争が終わったからか。


おれの知識チートには歴史とか時事ネタは無いので、恥を忍んで聞いておかないと。


「戦争が終わったのなら平和、なんだろ? 何が難しいんだ?」

「戦争終了後、カサドラル王国とシーア帝国の通商が活発になった。ほとんどが海運だ。この辺りは魔獣が多く、人が住めないから駅となる村や集落ができなかった。そこでこの村を中継として交易をできないか、今カサドラル王国の南部領主シジュン家とシーア帝国の大商人マダム・アルトリンデンが計画しているんだ」

「それって大事業なんじゃ‥‥‥」

「そうだな」


どうりで皆ピリピリしているわけだ。

大事業なら他所から来た者が利権をかすめ取ろうとする輩と思われても仕方ない。


「でも、それと森に入ることが何の関係が?」

「森には別の獣人が集落をつくって暮らしいて、彼らは只人を良く思っていない」

「あら~」


それは難しい時期だな。


「ま、ここの獣人たちが開明的なだけで、彼ら森の獣人たちが普通だ。獣人は戦いの道具や奴隷として取引されて、亜人と蔑まれてきたからな」

「ハァ‥‥‥そうなんだ」

「そうなんだって‥‥‥それも知らないんだな」


まぁ、よくある設定というか、少数で只人よりも身体能力が高ければ人は数でその力と権利を抑え込むだろう。


「じゃあ、森の木を使うのは‥‥‥」

「ああ、彼らを刺激するだろうな。『森を切り開いて街道の開発を始める気だ!!』と誤解される」

「じゃあ、その木材の確保は自分で何とかするよ」

「できるのか?」

「だぶんね」


まだモンスターベア――荒らし喰を倒した後、レベルと魔力量の変化を把握していない。

でも木材の運搬も結構な量を転移できるだろう。


おれはちらっとバルトを見た。


ステータスを確認したいんだが。ステータスは他人にも見える。


「ごめんちょっと着替えたいんだけど」

「気持ち悪いぞ」


バルトに部屋を出てもらい、おれはステータスを表示した。


■壬生京志郎 16歳

■フラノ村:村長ヴァクーネンの客人

■レベル:18

■スキル:『転移Lv.2』


そういえば大黒狼を倒してから忙しくて確認してなかった。

荒らし喰も倒したしすごい上がったな。

スキルはあんなに使ったのに上がってない。ちょっとショック。


あ、情報が追加されている。

良かった。

ステータスのここが出自や出身を反映するからな。空白はおかしかった。

これで多少はまともに見えるだろう。


魔力量はどれぐらいか。前は薪を使って計ったが‥‥‥ここじゃ無理だな。


それと、昨日やったアレだ。

離れた場所から物を引き寄せる転移。


もう一回やってみよう。


「ふぬぬぬぬ…‥‥」


できない。

なんでだ?

魔石湖にある霊薬を同じようにイメージして転移を発動したのに。


そもそもあの時は魔石湖に行こうとしていたんだ。

確かに霊薬が欲しいと思っていたけど。

いや、その前に、ウィズと握手したよな。


まさか、女に触れたことで未知の力が発揮されるというのか?


ウィズに触らないと。

いや、変態みたいだ!

いや、探求のため、探求のためだから!!


おれは手を二回たたいた。


「バルト、バルトや!!」

「おい、おれは使用人じゃないんだぞ」

「ウィズに会いたい」

「ああ‥‥‥いいぞ。何とかしてやる。その代わりステータスを交換しようぜ」


ステータスを交換?

ああ、互いのステータスを公開し合うってことだな。

おれのステータスを見せるのは気が退けるが、他人のステータスも気になる。


バルトはすでに『転移』を見ているし、見当もついているとか言っていた。


「わかった」

「よし。なら先におれのステータスを見せよう」


当たり前だがバルトのステータスは日本語じゃなかった。

翻訳するとこんな感じだ。


■バルトロ 35歳

■フラノ村:村長補佐

■レベル:48



本名はバルトロなのか。バルトは略称か。


「35歳か、結構いってるんだな」

「余計なお世話だ」

「30過ぎると色々衰えるってホントぉ?」

「やめろ」


レベルは48か。

う~ん、バルトは元々傭兵だって言っていたから平均より高めかもしれない。

これなら16歳でレベル18でもおかしくはないだろう。


「ステータスオープン」


おれもステータスを見せた。


「ふむ、よしわかった。じゃあ行こう」


早っ!


「えぇ? なんかないの?」

「はは、何か言って欲しいのか? ただの形式的な確認で食い入るように見ていたお前の方が変だぞ」

「そ、そっか。どこいくんだ?」

「村長の回復の祝い、ついでに‥‥‥まぁいい、行くぞ」


あれ、ひょっとして初めからウィズには会えたんじゃ‥‥‥

くそう、なんとかするとか言って騙したな、コイツ!!


「なんだ? 晩飯が要らないなら残ってもいいが。凝ったものも出るのにな、残念だ」

「行く!」


なんだかバルトにはいいように動かされている気がするが、気のせいだよね!

ちゃんとした食事はかけがえのないイベント。


ああ、楽しみぃ~!



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