83
え?って春の、すっげぇ寂しそうな顔に、ああごめん、弁当だけは食ってくわって、俺はダイニングテーブル。春の向かいの定位置に座った。
ちょっとツレんち行くって言った瞬間な。
え?って。なっちゃん行っちゃうの?って、顔。
運動会のことはもう、褒めちぎった。
すごい感動してうっかり母ちゃんと並んで泣いたことも言った。
頑張ったな。膝痛かったな。そんなことを延々母ちゃんと言いながら帰って来た。
頑張ったご褒美のお泊まりも、やったあって喜んで、俺が行かないってことに、え?って。プラスでもう今から行くって。
寂しそうな顔に、春ぅってなった。
弁当はゆず先生んちでって本当は思ってたけど。今すぐ行きたいって。
ごめんゆず先生。もうちょい待ってて。
そして春にも。
やっぱりごめんって、思った。
結局、母ちゃんと春と一緒に出て来た。
やっぱりちょっと寂しそうな春に、お土産よろしくって見送ってから、昨夜と同じ経路をある程度の速安全速度を守りつつも急いだ。
今日はコンビニじゃなくてスーパー経由。スポーツドリンクや、ゼリーはまだあったからアイス。バナナ。
しかしあれだ。
………コンビニは高い。
スーパーでの値段を見て、改めてそう思った。
昨夜は仕方なかったからいい。時々春とアイスとか駄菓子とか買うのもいい。
ただ、あとはダメだ。絶対やめよう。
なんか悲しい。虚しい。この値段の差。
同じものでこの差‼︎すげぇ勿体無いじゃん‼︎俺の1ヶ月の労働の対価がこの差に消えるって‼︎
「やっぱりスーパーのプリンは安くていいねぇ」
急げ急げって駐輪場でがしゃがしゃしてたら、同じようなことを言ってるのんびりした声が聞こえてちょっと笑った。
「お待たせー。今日は一緒に来てるの忘れなかったよ」
その人は、駐輪場横に待たせてたどでーんってしてる犬に言って、変な歌を歌いながら帰ってった。
思わずぽかーんって見ちまって、ああ見てる場合じゃねぇ‼︎って、自転車にまたがった。
自転車をアパートの階段横にとめて、階段を上がる。
今日は俺の着替えとか歯ブラシ、タオルとかも持ってきて、泊まる気満々。
満々ではあるけども‼︎
熱だから、何もしない。
何もしない。何もしない。何も‼︎しないからな‼︎
インターホンを押す前に、何回も自分に言い聞かせた。
………本当は色々したい。してみたい。と、思ってる。
俺だってそういうお年頃なんだよ。興味なんか津々でしかないんだよ。
ゆず先生が高校生の頃、好きな人がいたけど可能性ゼロだから、部活のキャプテンとって話。そりゃそうするわって思う。
俺だってゆず先生がダメで、グッドタイミングで誰かからコクられたらそっち行くかも、だよ。
興味なんか、まじ津々でしかないんだって。
でも、いいか、俺。相手は熱だ。熱だからな‼︎
………じゃあもし、明日になって下がってたら?
下がってて。もし。
………誘われ、たら。
俺見てカモネギって言ってるゆず先生が、本気で誘ってきたら。
そしたら。
………そしたら。
俺は、超どきどきしながら、インターホンを押した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます