第67話 被害者の会?
モモーナに群がるうちの一人、騎士団長の甥っ子の婚約者である辺境伯家令嬢とゴードンは、いとこでもあり仲良しだった。
ゴードン経由で彼女に自称側近候補の婚約者の令嬢を集めてもらい、放課後に食堂にある特別室で会う事になった。少しは俺も役に立たねば。
えーと、早速令嬢全員が自己紹介してくれたけれど、もう誰が誰だかわかりません。皆女の子。以上。
いざという時の点数稼ぎの為に、ハノアに頼んでスイーツを用意してもらっておいて良かった。
令嬢に会うには女性がいないといけないので、場を和ませる事も考えて、ケビンの他にニコールとナタリーにも同席してもらっている。
リーリアはこれからの話の中で暴力の話などが出たらまずいので、今回はお留守番。
「急に集まってもらってすまない。あなたたちの婚約者が、派手に遊んでいると聞いて、その確認をしたいと思ってね」
王子様風で話しかけてみた。第一印象は大事だよね!
「機会を設けて頂き、ありがとうございます」
快活そうな令嬢。多分一番身分の高い辺境伯家の令嬢だと思う。俺が王子だから、マナー的に返事をするのも身分が高い人からになる。
子どもの身分は基本同等扱いとは言うけれど、こういう時は家の家格順になる事が多い。
「いや、当然だよ。ただ、非常に申し訳ないことに、私は側近にここにいるケビンを選んだ。あなたたちの婚約者の令息とは、正直十歳の頃に数回会って以降、きちんと会ったことはないんだ」
「えっ、と、それはどういう?」
令嬢たちが目を合わせた後、多分辺境伯家の令嬢が代表して質問してくれた。この形で話を進めていく感じ?
「彼らが私の側近候補だと言っていると最近知って、城に問い合わせた。私は彼らが側近候補を保留になっていると知らなかった。対応が遅れて申し訳ない」
「一応、側近候補ではある、と?」
「保留中ではあるが、候補ではあると聞いた」
令嬢たち全員が困惑顔。だよね。候補の保留ってそもそもどういう事って話だし、お相手が実は将来有望どころか、俺に存在を知られていなかったなんて衝撃でしかないだろう。
「私の婚約者は跡継ぎで、領地も遠いと思うのですが……」
多分辺境伯家の令嬢。そっちですね。その通りです。
「側近は婚約に伴い辞退すると聞いていたのですが……」
婿入りのとこの令嬢かな? こちらは優しそうな雰囲気の令嬢。
「殿下がご存知無かったという事は、側近に選ぶ予定もないということでしょうか」
全く誰かわからん令嬢。真面目そう。
「私だけでは側近を決められないし、最終決定権は陛下にある。だからこそ、保留中なのを私が知らなかったというおかしな出来事になっているのだと思う」
「なる、ほど……?」
皆が困惑したままなので、とにかく婚約者から今現在どの様な扱いを受けているのか聞き取りをすることにした。
モモーナと一緒にいることに苦言を呈すると友人だと否定してくるが、行動は改めてくれない状況のよう。
残念ながら、行動としてもまだまだ微妙な感じ。それくらいだと話し合いでもして、仲直りしてねで終わらされそうな範囲な気がする。どうしようかな。
つい、発言の書き取りに集中してもらっていたケビンを見る。
ニコールとナタリーは話を聞きだすのは上手いが、こういう事にはあまり詳しくない。侍女の中ではリーリアとアンナの担当。
「否定はされていても、どれも婚約者としてはよくない行動ですね。家に報告はされていますか」
ケビンが話を引き取ってくれた。ほとんどがまだしていないそう。今の段階ではと彼女たちも思っているようだ。
出遅れたと思ったけれど、まだ早い段階だったみたい。ケビンもどういう時に何をして、されたのか、詳細に記録しておくよう言うに留めた。
まぁ、そうなるか。Web小説でどうなるかという知識があるせいで、先入観ありきで噂が出た時点でもう手遅れかもと焦っていた。
俺の側近に選ぶ気はないから、彼女たちの婚約に関しては手遅れとも言う。その点に関しては非常に申し訳ない。
気温が上がっていくと人は浮かれるのか、それ以降もモモーナと俺の側近候補が度々一緒にいる所が目撃され、なかなかの噂になっている。
ある程度したら、第二回会議? 被害者の会? を開くことになりそう。その前に夏休みになりそうではある。
社交シーズンなので大人たちも王都へ出てくるが、デビュー前の俺たちにはあまり関係がない。
ただ婚約者だと家族ぐるみで会ったり、デートをしたりはすると思う。どうなるやら。
一応俺の側近候補なので、夏休みに入る前に苦言を呈してみた。顔も覚えていないので、見かけたら熊さんにこそっと教えてもらう方式。
「あそこに騎士団長の甥っ子がいますよ」
「ありがとう。嫌だけれど行く」
今は一人だったので都合が良い。
「最近、婚約者以外の女性と噂になっているようだが」
「ライハルト殿下、お久し振りです。令嬢の友人が出来ただけですよ」
やっぱり久し振りな側近候補っておかしくないですか。顔も名前も覚えていないくらい遠い存在の側近候補ってなによ。
「婚約者とよりも会っていると聞くが?」
「そんな事はありませんよ」
他の令息も一人の時に捕まえて声をかけてみたけれど、返事は似たようなものばかり。やはりそのうち第二回被害者の会を開くことになりそう。
Web小説通りになったとしたら、冤罪を吹っ掛けてカリーナへの婚約破棄を叫ぶ場面に、多分一緒にいた人たちなんだよね……。
碌な事が起こらなさそう。
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