第67話 裸の付き合い。
外に出るとセルースが散歩と言う名の見回りをしていた。
ミチトに気付くと「お?ミチトじゃねぇか!チビ共を腹一杯にしてやったか?」と言いながら近づいてくる。
「ええ、それで温泉に入りたいって言うから作ります」
「は?」
セルースが目を丸くして鳩が豆鉄砲を食ったような顔をすると後ろで見ていたシヤ達がやはり困惑していると言ってクスクスと笑う。
ミチトも真っすぐに余計な障害もなく育っていればイタズラ好きの青年だったのだろうと思わせる感じでセルースのリアクションに満足そうな顔で「イブ達はブレイクポイントの温泉に行ってるんですけど男の子達も温泉入りたいって言うんですよ」と説明をする。
「それで作るのか?」
「はい。ローサさんの許可なら貰いましたよ」
「場所は?どこにすんだ?」
「ラージポットで言うところの共同墓地の北側です」
「今からやんのか?」
「はい」
それならとセルースは作る所を見たいと言って付いてくる。
大鍋亭から温泉予定地まで歩く間に人が集まり話がまた人を呼ぶ。
温泉予定地に集まった結果結構な人だかりの中でミチトは「…シヤ、イメージ受け取ってみて」と言う。
シヤは届いたイメージを見て「はい。見えました」と言う。
「真ん中の岩を作ってご覧」
「…やってみます」
ミチトが家三軒分の土地を風呂に変えて出来た窪みの中にシヤが教わったアースランスを応用した巨大な岩を真ん中に作る。
「どうですか?」
「悪くないね。じゃあ皆に伝心術で指示を出して人2人分くらいの高さで崩れないように壁を作ってご覧」
シヤはシイ達にアースランスを使わせて周りを囲っていく。
その間にミチトは水を呼び込む為の水路と排水用の水路を作り、そこに石で蓋を作る。
そして浴槽の中に鉱石の形を変えて敷き詰めていくと簡単に風呂ができてしまった。
通常何日もかかる作業を2時間でやってしまった事に皆が驚きの声をあげる。
「やりやがった…」
「凄いねぇ」
「助かるな」
ここでセルースが「んでもどうやってあっためんだ?」と質問をする。
「それは孤児院の仕事です。風呂の掃除から風呂に水を張って温めることまで術人間の子達がやりますよ」
ミチトは湖から水を引くと術人間の子供達に水に火の術を流して温めさせる。
「よく出来たね。俺は脱衣所代わりの洞窟作るから先に脱いで入りなね」
今日は作ったご褒美と言う事で住民は後で入ることになり、術人間の子供達がほぼ貸切のように入る。
ミチトが脱衣所代わりに街から温泉までの通り道に土と岩でトンネルを作ると中を男女で分ける。
風呂側に出ると子供達が楽しげに温泉に浸かって感激の声をあげている。
やはりシヤ達は栄養不足であばら骨が浮き出ていてミチトはイラつく。
そこにシヤ達が笑顔で「マスターも入ろうよ」と誘う。
ミチトが嬉しそうに目を細めて「今いくよ」と言ったところに「マスター!迎えに来ないで何やってんですか!?」とイブが目を三角にしてやって来て、出来上がった風呂場を見て「… 本当に何やってんですか?」と言った。
フラ達がミチトにお風呂を頼んだ事を説明すると「マスターはお風呂を作っていて迎えに来忘れたんですね?」とイブが呆れる。
ミチトは入る前に慌ててリナ達を迎えに行くと皆着替えが済んでいてのぼせた子達は岩場に寄りかかっていた。
話を聞くとアクィとサンフラワーは長風呂でまだ入り足りないと言うが残りのメンバーは迎えが来るまで頑張っていたがもう限界だったと言う。
シヤは手足を伸ばして入れる風呂に感激をしていると賑やかな声と共にリナ達がミチトとやってきて「うわ、これまたやったわね」と言う。
アクィは嬉しそうに浴槽を見て「真ん中の岩の反対側が女性用ね!サンフラワー!入りましょう!」と言うとサンフラワーも「はい」と言った。
「ほら、ミチトも入っておいでよ」
「リナさんは?」
「私はのぼせちゃったからもういいや」
「残念です」
このやり取りを見ていたライブが「じゃあ私頑張ってマスターと入る!」と言うと横のメロも「メロも!」と言う。
「ええぇぇぇぇ、頑張るの?恥ずかしくないの?」
「別に」
「パパ、入ろうよ」
そんな間にも脱衣所代わりの洞窟に入っていくアクィは「ミチト、今日は皆疲れたからお湯にヒールを濃い目でよろしくね」と言っている。
そんなこんなで風呂に入ると女性陣はタオルを着用で入る事にしてシヤ達と並んで入る。
シヤ達も慌ててタオルを腰に巻いて風呂に入ることになる。
シイ達は目のやり場に困って真っ赤になっていて、シヤも困るとそれを見たライブが意地悪く笑って「アクィ、チビ達に比べてもらう?」と聞きアクィは「ライブ…ぶつわよ」とライブを睨んだ。
ここで懲りずに「おぉ怖っ」と言ったライブは「でもアクィはサンフラワーに負けちゃってるじゃん」と言う。
何の話かわからないシヤは「マスター、ライブさんはなんの話…」と聞くがミチトは「聞かなくてよろしい話だよ。無視だよ無視」と言って遠い目をする。
それはシヤにはわからない話だが胸の大きさの話で慎ましく育ったとも言えず育つ事を放棄したアクィの胸。
シーシーやアメジストには勝てたがサンフラワーにはもう勝てなかった。余談だが、だからこそサンフラワーはエグゼの食指が動かなかった。
ブレイクポイントの温泉で皆と入った時にそっと見比べたアクィは一瞬鬼のような顔になる。
そして仲の良いライブはそれを見逃さずアクィに「アクィ〜、シーシーとアメジストばかり可愛がっちゃダメだよ?と言って「くっ…ライブ…」と言っていた。
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