第66話 仕返しと温泉と才能。

ミチトは勿体ないように「やっぱりもっとエグゼは苦しめるべきだったかな」と漏らすと笑ったライブが「まあね。でもこのくらいがちょうどいいのかもね」と言う。

シーシーが「マスター、そんなに仕返しを大事にするのになんでシーナを苦しめたオーナーは何もしないで許したの?」と聞いた。


意外そうな顔のミチトは「え?キッチリやったよ」と言った。

シーシーが「え?」と聞き返すとケーキを食べ終えて会話が聞こえて近くに来ていたシヤが「マスター?」と聞き返す。

ライブが「何したの?」と聞くと遠くで聞いていたイブも来て「イブも聞いてませんよ?」と言った。


「え?毎晩夢の中だけ罪悪感に苛まれて赤ん坊の泣き声の幻聴に悩まされるようにしたんだよ!そうじゃなきゃ許さないよ。実はまだやり足りないって思ってて夜中に色街まで行こうかと思ってるんだよね。日増しに幻聴メインの悪夢にしてやろうかと思ってさ」


そう言って笑うミチトにイブが呆れるように「…マスター…」と言うと聞いていたアクィが「やっぱりミチトは正義の悪魔ね」と褒めてくる。

悪魔と言われる度に嫌がるミチトは今回も「アクィ…悪魔はやだなぁ」と言った。


「バカね、神も悪魔も名付ける人次第なのよ!神様って呼ばれたい?」

「もっとやだよ」


ミチトがアクィと悪魔か神様かで揉める中イブが「マスター、仕返しは今度にしてイブ達女の子は温泉に行きたいです!」と言う。


温泉と聞いて思うところもあったミチトが「じゃあシヤ達が俺の片付けを手伝ってくれる?」と聞くとシヤ達が「はい!」と言うので女性陣が温泉に行くのは決定事項になる。

「2時間したら迎えに行けばいい?」と聞くミチトにライブが呆れながら「アクィに合わせないでいいよ」と言った。



ミチトは女性陣を温泉まで連れて行って戻ってくると洗い物を始める。


「んー、本当にもう食べられない?」

「お腹いっぱいだよマスター」


「じゃあ明日の朝ごはんにしよう」そう言って片付けるミチトの横にフラとライが来る。


「マスター温泉」

「行ってみたい」


「え?フラとライも行きたいの?」

「うん。リナさん達の後で入りたい」

「ダメかな?」


ミチトは一度全員を見回して「んー…こうなるとアレだなぁ。温泉作るかな?」と言った。

話が大きくなり始めた事にフラが「え?」と言ってライが「作る?」と聞く。


「うん。向こうの温泉小さいからさー、大きいの作ろうか?」と返したミチトはそのまま上を向いて「おーい、ロキさーん、聞こえますかー?トウテに温泉作っても良いですか?お湯は湖の水を引いて温めるから厳密には温泉じゃないんですけど、集音術使ってるから声も聞こえますよー。ローサさんも入りたいですか?はい大きくして真ん中に大きな岩を作って男女を分けますよ。風呂の底は明石でも敷き詰めますよ」と言う。


シヅが不思議そうにミチトを見て「なぁシヤ、マスター何話してんだ?」と話しかけるのだがシヤはミチトを見て会話の中に出てきた集音術に意識を向けていた。


「…集音術?音を集める…わかる気がする」と言ったシヤは「…………聞こえる」と言い出した。シヅは意味不明で「おい?シヤ?」と話しかけるがシヤは無反応でミチトの会話に耳を澄ませると人の声が聞こえてきた。



「ミチトさん、壁は後日作らせるけど今日はお墓と同じ感じにしてね。場所は?」

「ラージポットで言うところの共同墓地の辺りを考えてます」


「うふふ、そこから北にしましょう。湖には近いけど街に近いと覗かれちゃうわ」

「あ、そうですね。大きさは家三軒くらいで良いですよね?」


「構わないわ。いつ作るの?」

「今からです。2時間くらいで完成させますね。明石足りない分はファットマウンテンから貰うか黒明石使いましょうか?」


「うふふ。大盤振る舞いね」

「まあこれくらいなら」


「お湯はどうやって温めるの?」

「基本的には術人間の子達の仕事にします。火の術を水に流して温めますよ」


「戦いが嫌な子達の仕事になるわね。ありがとう。後で行かせてもらうわ」

「じゃあ当分は洞穴みたいなのを作るのでそこを脱衣所にしましょう」


ミチトはフラとライを見て「OK貰ったよ」と話しかけている。

シヤはそこに行って「ローサさんから貰ったんですね。火の術は俺達が流して良いですか?」と聞いた。


ミチトが目を丸くしてシヤを見ると「シヤ、君…?」と聞いた。シヤは「集音術って言ってたからマスターの真似をして見てローサさんって聞こえたからお屋敷を意識して音を集めてみたんだ」と説明をした。


「君…やはり模式を超えてる」

「模式?」


「魔水晶と無限記録盤で生み出された無限術人間の事さ、基本的に記録盤が先に術を理解するからシヤみたいなのは珍しいんだ。さっきも黙っていたけど俺が教える前に伝心術を使ったよね」

「そうなんですか…」


そう言われてもシヤは珍しいと言われてもよくわからない。

キョトンとした顔をしているとミチトに「そうなんだよ。さあ皿を拭いてテーブル戻したらお風呂を作りに行くよ」と言われた。

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