第202話 銃士 ※閑話
「おい銃士!テメーのせいでマッキーちゃんが怪我したんだろうが!あやまれよ!」
銃弾を受けて怯んだ魔獣にトドメを刺した連中が俺をなじってきた。
銃とは元来、デカイ発砲音が発生する。良くも悪くも。
相手を威嚇する事もあれば、音で身を晒す場合もある。味方が驚く事もあるかもしれない。
今、まさにそのような状況である。
「ゴメン。でも、撃つ前に警告したよね?それに、あのタイミングを逃したら、もっと酷い目にあってたと思うよ?」
突進してきたイノシシの魔獣に轢かれてただろうマッキーさんは、俺のマスケットで寸前の危機を脱したが、自分の持っていた大型ナイフで自分の脚を斬りつけてしまった。
「て、テメー!自分が悪いと思ってねーだろ!」
その通りだ。むしろ突進を防げなかった前衛のお前達のせいだと思ってる。
それに、「音に驚いた」までは納得できるが、それで自分を斬りつけるなんて戦闘のセンスがないにもほどがある。何でこんな所に来ようと思えたのか不思議でならない。死にたいのかな?
仲間同士で無駄な諍いを避けるために言わないが、不満を溜め込んだ顔を隠すのも限度があると思うんだ。
「ポーション持ってないの?早く手当した方がいいよ?持ってないなら僕のを貸してあげよう。帰ったら返してくれる?代金をくれてもいいけど」
ショックで頭が回ってないのか、脚から流れる血を呆然と眺めるだけの女子にポーションを渡してやる。
痛みを感じる前にとっとと治せばいいのに。これだから馬鹿で痩せてる女は嫌いなんだ。
「足手まといのお前をわざわざ連れてきてやったのに、なんちゅう態度だよ!」
確かに俺の戦闘力は高いとは言えない。
もっとも、「今現在は」だと付け足したいが、進んでパーティに俺を入れたがる人間はいなかった。
職業『銃士』の能力、銃召喚は火縄銃からマスケット銃にランクアップしたばかり。これでも結構大変だった。
連射が効かない。当たらない。うるさい。
前装式というらしい弾込め銃にようやく慣れてきたが、それでも一分間に1発を撃つのが1.5発になったくらいだろう。
「テメー!聞いてんのか!人が話してんのに──」
一人でレベルを上げてたい時は、もっぱら腰のサーベルで魔物を斬り殺してたくらいだ。
剣が得意で良かった。
戦列を組みたいが、銃士は僕だけ。
召喚出来る銃は現在二丁。メインのマスケットとサブの短筒で共にフリントロック式。
先程の射撃には散弾を使用した。射撃精度が低い銃の欠点を補う為だ。威力は劣るが、仲間がいるのなら然程気にしなくても良いと思ったのだ。
「あ、あの、ありがとう……」
「気にしないで」
痩せた女の子に興味はない。
『銃召喚』のスキルレベルを上げる為に射撃に集中したかった僕は、パーティを組む事にしたのだが、これは失敗したかなぁ。
こんな事なら、さっさとブラ珍さんと合流すれば良かった。
盟主が引き留めるから未だこの国にいるが、そろそろ潮時かもしれない。
「そんな使えねぇ奴に礼を言う必要なんかねーよ!そもそも、銃なんて大した威力ねーし!」
「そうそう、最初はちょと期待したけどさ。一発で魔獣を倒すのは無理だし、そもそも連発できないんじゃ、ちょっとねw」
まぁ、彼らの言いたい事は分かる。
前の世界ならいざ知らず、この世界には魔法があり、人外のような身体能力を持った人間もいるのだ。「銃など不用だ」と言いたいのだろう。
銃の威力など、高位の魔術からしてみれば地味だからな。
でも、使い方によっては……。使う相手が、然程頑丈じゃなければ……。
「とにかく、依頼は完了したし、帰ろう。今日で僕はこのパーティを抜けるよ」
「フン!せいせいするぜ!」「おや、自分から抜けてくれるならありがたい」
せいぜい人を馬鹿にしてればいい。調子こいて死なないよう頑張れ。
小田ちゃん誘ってブラ珍さんと合流しよう。
他の奴らも、ソロソロ合流できそうな所まで来てるっぽいし。
アイツなら俺を使いこなしてくれるはずだ。
クランの他の連中には情報を秘匿してるが、なんてったって『死神』だからな。
────やあ、ソロソロそっちと合流しようかと思ってんだけど。どう?
────とりあえず、サウザランドか協商連合国を目指せ。ピックアップしてやる。
なんとも話しが早くて助かる。ヤツは変態だが、こと戦いに関してだけは、天才だと思う。
それだけに特化した人間は強い。あらゆる状況の中で、生き抜く強さを持っている。
俺は、自分自身で中途半端に小器用なのは自覚しているが、その分、ヤツの足りない所をサポートができるはずだ。
──────────
転移した仲間達もゆっくり動き出しています。
ブラ珍とゆかいな仲間達も合流を目指します。
追伸
お願い、短編も読んでみて?
カクヨムコンに出してるけど、全く!驚くほど!読まれてないの!
https://kakuyomu.jp/works/16817330650052006840
超短いから。馬鹿馬鹿しいから。読んで!
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