第168話 日本刀
「それじゃあコタロウ、村に戻ってコイツを吊るし上げるか」
湖のサハギンを一掃した俺達は、運営からのイベントもクリアしサハギン大量討伐により結構な量のポイントも獲得できた。
後は村に戻って元凶とは言えないまでも、事態悪化の責任者として腐れ水神に「村に突き出す」と脅しをかけた。
「解決したんだからイイじゃない……。ちゃんと手伝ったでしょ!これからは、少しは真面目にやると約束するから」
「そんな言葉だけじゃあなぁ。結構な労力を割いたのに、お前を助けた報酬が1Pだぞ?お前、神様に1Pの価値しかないと思われてるんだぜ?チロ○チョコ以下じゃねーか」
「な、なんでェェェッ!」
「コタロウ、こういう女のことを『安い女』って言うんだぞ」
「アンタ!子供に何て事教えてんだ!?」
コイツの事などこれっぽっちも信用してないが、まぁこの先この湖がどうなろうと知った事ではないのも確かなんだが……
側でモジモジしてるコタロウに「ウンコでもしたいのか?」と聞くと、「それもちょっとあるけど、少しだけ水神様が可哀想かなぁ……って」と、優しさ溢れるコタロウのお言葉。
さすがの水神もコレには感激してるご様子。
獣人達は聖獣を崇めているらしく、一応この水神もギリ聖獣としてコタロウは認識してるらしい。
取り敢えず水神宅のトイレを使わせてやろうとするが、「それは……ちょっと……。僕、我慢するよ」とコタロウ水神宅トイレ完全拒否。
「トイレと水回りは綺麗だからぁぁぁ!」
水神のまるで信用できない言葉に、さしものコタロウも胡乱気な表情だ。
俺もちょっと用を足そうと先にトイレに入ると、生意気にもタンクレス、温水ウォシュレット付の最新型の『TOT○』と書かれた便器であった。
コイツのこういう所が、本当癇に障る。
「コタロウ、便所だけは大丈夫だ」とコタロウを呼び、「綺麗だっつんでんだろぉぉぉ!」と叫ぶ水神を無視してウォシュレットの使い方をレクチャーした。
「ヒャァァァアア!」とウォシュレットの快楽に酔いしれるコタロウ。
「何かビューって!凄かったです!流石は水神様!ちょっと尊敬しました!」
「初めて敬う所ソコォォオ!?私の力でもなんでもないけどぉお!?」
「流石コタロウ。そんなクズでも良い所を探してあげるなんて、お前は立派だよ」
「水神様のおかげでお尻が綺麗になった気がする。ありがとうございます」
「……もう、いいわ。アンタ達を真面目に相手してると疲れる……。それで、何?見逃してくれる見返りに、何か条件あるんでしょ?」
「コタロウ何が欲しい?」
「僕、聖剣!」
「じゃあ俺、リボル○イン!」
「そんなもんあるかァァァ!!」
「ポイント交換リストに載ってるぞ?一番安い聖剣で1000万Pだけど」
「高いのか安いのか判断に困るけど!そんなP持ってねーーから!」
「そこそこ
「アンタはいつか刺されろ!」
「コタロウ、こんな聖獣さっさと村人に突き出してやろうぜ?」
「おじさん!じゃあ、トイレ貰おうか!でも水神様ウンコする時困るね」
「存在自体がウンコみたいなヤツだから気にすんな。それに、中古の便器なんか……なぁ?」
「それ、本人に聞くぅ!?」
コタロウはツボに入ったようで、ゲラゲラ笑ってる。
やいのやいの言ってると、水神はさもしょうがないといった感じで一振りの日本刀をベッドの下から引っ張り出してきた。
「聖剣って程ではないけど、結構いい刀だからコレで勘弁して」と、差し出してきた。
日本刀、ラノベ鉄板の主人公武器である。
一度アイテムボックスに入れると、『蛇切り丸』と銘がある事を確認した。
龍・蛇等爬虫類に特効付き。龍も爬虫類と一緒くたにしてるの?
「なるほど!コレで一思いに殺してくれと?」
「違うけど?」
どうやらコイツも例の病を発症させて、性能も確認せずに『蛇』の文字に釣られて刀を購入してしまったらしい。
勿論、日本刀など使えもしないのに。までが、お約束である。
まぁ、持ってても損はないかな。
「良かったなコタロウ。聖剣ではないがソコソコ良い剣だぞ」
「ウン!でも、僕はソレ使えないからおじさん用だね!」
「俺も刀なんぞ握った事もないぞ?」
「「「…………」」」
この中の誰一人として満足に振れない武器を前に、沈黙に包まれた。
「お前は何故聖剣を欲しがった?」
水神はややコタロウを責める感じである。
「聖剣は持っただけで強くなれるんだよ?知らないの?水神様」
流石はコタロウさん。ファンタジーの世界出身の事だけはある。
「コタロウは物知りだなぁ!」
「アンタはもうちょっと子供に厳しくなりなさいよ!甘すぎんのよ!」
俺達二人とも扱えない武器が報酬であったことに、若干不本意ではあったが、今日のところはこれで勘弁してやることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます