第164話 運営イベント開催!①
「行け!コタロウ!電光石火だ!」
「ピィィカァァァ!」
ピーカーブスタイルからの高速デンプシーロールでサハギン5体をめった打ちにするコタロウ。
けっして、雷属性の齧歯類ではない。
ウサちゃんの特訓にボロボロにされているコタロウであったが、人間の並の12才に比べれば驚異的な身体能力を持っているのは確かだった。
魔法が得意ではない獣人は、種族にもよるらしいが身体能力は高いとされている。
しかし、獣人は魔力を放出するのが苦手なだけで魔力を持たないというわけではない。
と、ウサちゃんに教えてもらった。
事実ウサちゃんの高速機動は、魔力を体内で活性化させる事によって可能としているのだとか。
つまり、種族特性による身体強化だ。
まぁウサちゃんのはそれは、俺の身体強化Ⅱよりランクが上っぽい。
身体を頑強にしたり、治癒力を高めたりと他にもスキルの身体強化にはない効能があるらしい。
どうりで、あのクレイモアもどきを全身に食らって生きてたわけだ。
ならばと、更に特性に磨きをかける為、身体強化のスキルと、ガス欠ならぬ魔力欠乏緩和の為に魔力量UP(小)のスキル付与を行なったのだ。
コタロウの
持って生まれた身体能力と魔力での強化に加えて、スキルでの身体強化を追加されたコタロウの動きは、ウサちゃんまでにはほど遠いが格段に向上した。
残念ながら魔力量UPにバフがかかっても子供の魔力量では長時間のスキル稼働時間は長くなかった。
まぁ、今後の成長に期待したい。
「お前、あの子に何をした?」
稼働時間が短いとはいえ、サハギンを蹴散らすくらいなんて事ない。明らかに動きが良くなったコタロウに、ウサちゃんから睨まれた。
「拳闘と気勢を少し教えた」
「それだけであんな急に変わるわけないだろ!」
「そうだな、後は、コタロウの正義の心が神の目にとまり、その恩寵をあたえられたな」
スキルを付与したのは俺だけど。
「貴様が使徒であるとは到底思えん。本当に悪魔や邪神の使いではないだろな……」
俺のことを胡散臭そうな目で見るウサちゃんであるが、サハギン相手に電光石火の拳を叩き込むコタロウを見るウサちゃんの丸い尻尾がピコピコ動いてるのは、ちょっと喜んでいるように見えた。
プリンプリンのお尻の上にちょこんと付いてあるまん丸尻尾はウサちゃんの自前だ。
そのフワモコな可愛い尻尾に手を伸ばすと凶悪な裏拳が飛んできた。
オートガードがなかったら顎カチ割られてたわ。
「次やったら殺す……。しょ、コタロウ!戻って訓練だ!」
俺への当たりはキッツいが、狼ショタには結構甘いウサお姉さん。
「おじさん!見てた?上手くできたでしょ?」
怪魚を5匹も引きずりながら目をキラキラさせてやってきたコタロウの頭を撫でて褒めてやる。
「さすがは我が眷族!この調子で頑張れば、【ヒーロー見習い】から本物のヒーローになれる日は遠くないぞ」
「本当!?僕、頑張るね!」
元気にサハギンを引きずりながらウサちゃんと村へと戻っていくコタロウ姿に、頼もしさと将来の不安を感じる。
「アイツも脳筋待ったなしかぁ……」と。
一人浜辺に残った俺にはまだやる事があった。
そう、サハギン駆除である。
冒険者ギルドの依頼は、達成しようが無視しようが俺的にはどうでも良かったのだが、あの文官所長が「対外的に、帝国の派兵理由を潰しておく事が望ましいでしょう」と言い出し、「暇なら駆除してきて下さい」と指名依頼の紙を渡された。
高級将校を軒並み殺し、補給や侵攻経路の拠点に被害を与え、帝国の侵攻を遅らせたので「報酬分は働いたからそろそろ帰ってもいいか?」と聞いた俺に対する返答がソレだ。
俺のどこをみて暇だと思ったのか、散々罵倒してやったが涼しい顔で「昼間っから、酒飲みながら魚釣りなんかしてる人間を暇じゃないと言うなら、誰が暇なんでしょうか?」などとぬかしていた。
簡単にあの野郎の仕事を受けるのも癪だったが、依頼の高額追加報酬とのっぴきならない事情で手伝ってやる事にしたのだ。
———————————
ブラックホーク・珍太郎
レベル:37→40
職業:まほうつかい カスタム
力:117→129
魔:35→38
体:87→99
速:85→94
技:76→85
魔法・スキル
バレット改Ⅲ、生活魔法改Ⅱ、身体強化Ⅲup!、初級地魔術、格闘術Ⅴup、短剣術Ⅱ、短槍術Ⅰ、射撃Ⅳ、隠密Ⅲ、察知Ⅲ、魔力操作Ⅲ、狙撃Ⅲ、魔力感知Ⅲ
称号
異世界人、使徒、魔弾の射手(※魔弾の威力小UP・消費魔力低下・精密誘導射撃可能)、粛正者(※神敵特効)、マーダー(※対人戦闘における攻撃力微増)、ゲリラコマンドnew!(※敵対組織に対し少数で攻撃を仕掛けると取得経験値微増)
—————————
そう、帝国兵と(主に)サハギン討伐でレベルキャップに達した俺は、ガッツリ溜め込んだP《ポイント》で職業進化しようとしたのだが……
『必要条件が満たされてません』のメッセージが返ってきた。
何それ?レベルは最大まで上げた。ポイントも十分だ。
その条件って何だよ!え?
システムで困った時はコマンド『Q&A』である。
Q[職業進化の条件って何ですか?]
A[運営イベントや緊急クエストなどの達成で解放されます。その他の条件が整っていれば近い内に発生するでしょう!]
そうかそうか!近い内に発生するのか!
……って、発生するでしょう!じゃねーよ!
絶対面倒に巻き込まれるヤツじゃん!
俺は楽して強くなりたいんだ!
頑張って苦労して、死闘の先に手に入れる力!
俺はもうそんな歳じゃないんだよ、運営さん。
そんな試練なんかは、若い主人公だけにしていただきたい。
しかし、もっと強くなりたい!強くならなくては!という気持ちの葛藤により、『とりあえず、どんなイベントが発生するのかくらい見ておこう』とあいなった。
ボートで湖を軽く一周しながら魔弾をばら撒くだけのお仕事をここ2日ばかりこなしている状態である。
サハギン殲滅したら条件クリアとかしてくんないかなぁ、とか思いながら駆除したサハギン400匹超え。
アホほどポイント貯まりましたよ。
村の食糧用に30匹ほどのサハギンを収納して戻って来た俺の胸にコタロウが文字通り飛び込んで来た。
「おじさん大変だよ!聖獣様が!聖獣様が!目を覚ましたかもだって!」
コレが運営が言ってたイベントかぁ……
コタロウの説明では詳細が分からないので、知ってそうな人物に聞こうと、コタロウを片手で振り回しながら村へと戻った。
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