第158話 ポイズン ※注意 話し一切進みません
「でーでででー♪でーででででー♪でーでででー♪でーででででー♪」
まずい!この男、できる!
このDNAに、いや、魂に刻まれたその歌のイントロは、否が応でも服従させるかのごとき力を持っていた。
『サカ』とか言う男は、まさかのエンジン付きのゴムボートに反応してしまった俺を嘲笑うように目の前を過ぎると、少し離れて停船させた。
間違いない、転移者だ。
いつでも魔術を使えるよう準備する。
男は捕らえて、エンジンを鹵獲したい。
少尉が怒りに駆られて、ボートを焼き払わないか注視する。
「やはり貴様か!サカ=ナクン=サン!よもや協商の犬だったとは!この、卑怯者め!」
少尉が吠えるのを見てとても嬉しそうに笑うと、「ジャジャーン!」と船に転がしていた何かを掴み上げると俺達に見せつけた。
つーか、サカナクンサンって何?ふざけた偽名使いやがって!
「コレ、なーんだ?」
「オイゲン中佐!貴様……、中佐をどうするつもりだ?」
すぐにでも魔法をぶっ放しそうだった勢いの少尉は、途端に萎えてるように見えた。
「兵を引けば解放してもいいよ?」
中佐は腕を縛られ、くつわを噛まされた状態であるが意識はあるようだ。
「そんな条件は飲めない!間もなく本隊がやってくる!相応の身代金は払うので、それまで待って欲しい!」
「中隊長!」
少尉はこれに否やを唱えるつもりなのだろう。
「今なら中佐殿を助ける事ができます!コチラにはオニツカ大尉がいるんですよ?ヤツを捕らえて中佐を救出するべきです!」
え?俺に丸投げ?
イヤイヤさすがに俺が天才でも、捕獲・鹵獲・救出は難しいだろう……
「貴様!コチラには
「んな!お、おい、やめろ!」
徹夜明けのハイテンションで少尉相手に自慢話を展開し、あまつさえ自分の事を「GTOと呼べ」等と恥ずかしげもなく持病の厨二病を発症させてしまった事をここへきて激しく後悔する。
男は俺を見るなりニヤつきを増し、なんとも懐かしいフレーズを口ずさんだ。
「でーでででー♪でーででででー♪でーでででー♪でーででででー♪」
コレは無理だ。抗えない。
「言いたいことも言えない、こんな世の中じゃ?」
男は笑みを増し俺に尋ねる。
「ポイズン!」
意志とは関係なく魂の叫ぶがままに声が出てしまっていた。
やられた。
ヤツに俺が転生者である事がバレた瞬間だった。
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ゴメン
だから何なの?
そんな話でした。
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