第119話 愚者
超美人未亡人の息子の救出に、異常なまでに食いついたミルフ。
関心は救出にではなく美人未亡人の方にだが。
「俺も連れてけ。まだ見ぬ美熟女の為に俺も一肌脱いでやる!」
「えぇ〜、お前じゃ足手まといにしかならんだろ……」
「おいおい、ブラ珍さんよ。俺の
「あぁーうん、確かそんな事言ってたような気がしないでもないような気がするなぁ」
「気がするんじゃなくて!ちゃんと言っただろ!お前はもっと他人に興味を持てよ!」
「それは違うぞ。他人にじゃなくて、お前に興味がないだけだ」
「つーか、もっとヒデェ!!」
モブ太もそうだが、相変わらずコイツもおちょくるとウザ面白いヤツだ。
「まぁ、そんなに自信があるんだったら、ちょっとどんなもんか見せてもらおうか」
「オッケー、いいぜ!吠え面かかせてやる!」
ギルドの訓練場を貸し切り、少し離れてミルフと向き合って立つ。
ゲームでは従士というより下僕最弱の立ち位置を不動のモノにしていたミルフと手合わせする事とあいなった。勿論、俺は素手だ。
アイリーンが俺達の間に立会人として立つ。
「両者、なるべく殺しは無しだ。いいな?」
なるべくってなんだよw
「おいおいブラ珍さんよぉ!いいのかい?『賢者』相手に素手なんてよぉ。『まほうつかい』だっけ?www
流石はミルフ。調子に乗りまくってる。
「そうだな、まぁ頑張って避けろよ。じゃないとああなるぞ」
ここは一つ、大人な態度で若者をやんわりと嗜めてやることにした。
スゥっと右手を壁の前に並んだカカシに向ける。
カカシといっても、剣等の打ち込み用でクソ分厚い鎧で覆われている。
『ズガン!!』
大人気なく20mm弾のバレットを発射してやると、鎧など穴が空くというよりその原型を留めておらず、カカシも土台を残して粉々に飛び散ってしまった。
貫通した魔弾は壁のレンガも砕いて地表が見えてる。
ここが半地下の施設でよかった。
あまりの貫通力に俺の肝が冷えたわ。
呆然とするミルフ。と、アイリーン。
「お前、私の話し聞いてなかったのか?仲間を殺す気か?それになんだ、その威力は……馬鹿なのか?」
そう言えば、アイリーンにはまだ大口径バレットを見せていなかったな
「何、心配いらんよ。なんてたって賢者様だからな!避けるのも防ぐのも楽勝だよな?」
俺の問いかけにようやく頭が再起動したのか、「ギギギッ」と顔をコチラに向けた。
「お、お、おま……流石は我が主!いやー、はっはっはー。うん!改めてね、忠誠を誓うよ。つーか、誓わせて下さい!お願いしますぅ!つーか、何でもするから許してぇ!」
コイツの相変わらずのヘタレっぷりに安心すら覚える。
コイツのイキリからの手のひら返しは、鮮やかの一言だ。
最早、職人芸と言っていい。
「おいおい賢者さんよう。そんなんじゃ連れて行くのはちょっと無理だなぁ〜」
「そう言わずに頼むよ〜!おねげーしますー!つーか、俺まだ何もしてないが!」
「そんな腰抜けのヒヨリ賢者でも、若者を育て導くのも先達の役目だぞ。確実に足手まといになるだろうが、同じ魔導の道を志す者、一つ面倒見てやったらどうだ?」
アイリーンはオブラートに包むと言う事を知らない。常に直球だ。それも中々の豪球である。
「つーか、言い方!そう言うアンタはさぞ凄い魔法使いなんだろうな?」
「おい、やめとけ……」
「見てくれはいいが、本当にあの化け物みたいなヤツと並び立つ資格があるのか?」
アイリーンににじり寄ろうとするミルフだが、そんな事で怯むような魔女ではない。
「これは躾から教えてやらねばならんな」
フッと笑うと詠唱もなしにミルフの体に霜がつき始める。
「若さゆえの自信、勢いは結構なことだが、せめて相手の力量をはかれるようにならんとな」
アイリーンが、そっと肩に触れた瞬間に冷気は霧散した。
冷気のせいか恐怖のせいかはわからんが、ミルフはガクガクと震えながら何度も頷いていた。
こうして、アイリーンの鶴の一声で全くもって賢くない賢者が一行に加わる事となった。
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