第95話 死の商人①

朝食がてらあまり縁のなかったこの街の冒険者ギルドに寄ることにした。

プリンパパにも生計を立てるのに「一応登録しとけ」とアドバイスし、ギルドの朝食を頼むと待ち時間を利用して依頼掲示板を眺めていた。


相変わらずGランクの俺が受けれそうな依頼はない。

受付にギルドカードを出して名乗り、ランクが上がってないか聞いてみた。

ヒッチーノの町ではそこそこ働いたのだ、一つくらいランク上がっても良いのでは?と思っての行動だった。

受付嬢は一瞬動揺したが、「まだ実績が足りないみたいです……はい」と無情に告げてきた。


「フーン、まっいいか。俺でも受けれそうな討伐依頼はないよな?」ダメ元できいてみる。


「ええ、残念ながらGランクの方に紹介できる討伐依頼はちょっと……」


ユウちゃんやプリンパパのレベル上げついでに依頼をこなして金でも稼ごうと思ったんだが。

一ヶ月以上冒険者やってるのに未だにGランクの俺ってどうなの?

普通に俺tsueeeeeee!して飛び級ランクアップ!ギルド期待の大型新人!とか言われるもんかと思ってたけど、まずそんな依頼が受けれない。

商隊にも荷物持ちとして参加しただけ。

盗賊殲滅はギルドを通してない。

子爵の私兵訓練もギルドを通してない。

俺の実績って角ウサギ狩りくらい?

絶賛「間抜けホイホイ期間中」の為、俺は"腰抜け"の噂すら流れてる無能冒険者だ。


しょうがない、また教団にでも頼むかな。

教団におんぶに抱っこ状態だが、今更だ。


そう思ってカウンターを後にしようとすると、

「あの、討伐依頼はありませんがアイテムボックス持ちの魔法使いを募集している方がいます。お取り次ぎいたしますか?」

"アイテムボックス持ち"ねぇ、そんな奴そうそう居ないはずなのに条件がアイテムボックス持ちかぁ。


「是非、取り次いでくれ」

何となく当たりの予感がする。


受付嬢は他の職員に二、三伝えてメモを渡すと「今、依頼人に使いを出しました。後ほど向こうの使いの者が来ると思います」と言ってきた。


待合所で朝飯食って待ってると伝えて、その場を後にした。


バゲットに鶏ハムのような肉と玉ねぎピーマン・レタスを挟んだ物を頬張っていると、プリンパパがギルドカードを嬉しそうに俺に見せながら席に着く。Gランクおじさんがまたここに一人増えた。

「これで私も冒険者ですよ!男の夢ですよねぇ」

まぁ、夢を壊したくないから言わないが、そんな甘い考えじゃランクアップなんてしないぜ。

俺みたいにな。

食事を終えるとプリンパパは娘のユウちゃんが待ってるだろうと思い一人で教会に帰した。


コーヒーとタバコを楽しんでいると三人の男がギルドに入ってきた。

商人風の男が受付嬢に目をやると、強ばった表情に変わった受付嬢がそっと俺を指差したのを見て見ないふりをする。


商人風の男がテーブルの向かいに腰を下ろし、一人がその後ろに、もう一人が俺の後ろに回る。


「あんたがアイテムボックス持ちの魔法使いだって?斥候職スカウトみたいな格好してるが」

いきなり無粋なヤツだ


「斥候は得意中の得意ではあるが、一応魔法使いなんだ。これでも」嘘はつかない。

フリーホールからの偵察や降下誘導もしていたし。

潜入、偵察はお手の物だ。


「ほう、それは何とも珍しい魔法使いだな。俺はギリー、ガゥネッド商会のブリスク支店長代理だ」

あぁ、やっぱりね!と思ったが顔には出さない。

マルコスさんの商売敵でなんちゃら男爵をけしかけたかそそのかしたヤツらだった。


「ほう!そんなの大店おおだなの依頼とはな。恥ずかしい話しだが、俺はGランクなんだ。それでも大丈夫か?」

どこまでコイツらが俺の事を知ってるのかは分からないが、ノコノコとやって来たという事は俺が腰抜けだと高を括ってるのだろう。

思ったより簡単に片付きそうだな


「何、ウチの護衛隊は優秀だ。アンタは荷物を運んでくれるだけでいい。馬車なら2日3日の距離なんだがどうだろう?荷物量を見てもらって依頼料を決めようかと思ってるんだが」


「俺なら暇だから今からでもいいぜ。馬は持ってるし、他の荷物がないなら期間は短縮できると思う。距離と重量で値段を決めるから、安くはならないがな」

笑いながらそう言うと、細目のギリーは一瞬、目をピクリとさせ「それじゃあ、今からウチに行って確認しようか」と席を立つ。


ギルドを出る際に取り次いだ受付嬢を見ると、怯えたような目で俺達を見ていた。


後ろの一人は俺が逃げ出すとでも思っているのか?

俺を嵌めた気でいる狐顔の商人とゴリラが前を歩き、俺の直ぐ後ろを鶏のような男が見張るように付いてきた。


ローズから聞いた話しでは、ガゥネッド商会はマルコス商会に負けず劣らずの大店であるが、そのやり口は手段を選ばないと悪評が付き纏う所謂「絵に描いたような悪徳商人」との事だった。

裏社会のボスをもって"悪徳"と言わしめるとは中々の悪よのう!

金の力は=武力であるのは、この世界でも変わらないらしい。

傭兵斡旋、人身売買、禁制品の密輸など手広くやっているらしいが、この街ではまだ大人しくやってるようだった。

なんちゃら男爵領はコイツらの言いなりのようだしな。

本拠地は、西のお隣り協商連合国だという。


西ねぇ、この間潰したゴロツキ共の親玉も協商連合国から来たと言ってたな。

西は富を運んで来ると同時に、よろしくない輩も運んで来るようだ。



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レビューキャンペーン中らしいですよ!

この機会にどうです?(笑)


よろしくお願いします。

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